156/365 The Kinks - David Watts 解説と記憶
ロンドンは理想を笑っていた
London
制服姿の少年たちがロンドンの歩道を足早に通り過ぎる景色は当時の英国が抱えていた階級意識まで映り込んでいた|羨望と皮肉を笑顔で包み込む感覚は英国ポップならではの知性を感じさせる|そのアイロニーは後のブリットポップ勢が愛した視点へ自然につながっていく|夕暮れの校庭には誰にも言えなかった憧れだけが静かに残っている
The Kinks - David Watts
どのクラスにも|いやどの会社にも|誰もが憧れる「完璧な青年」はいる|勉強もできて|スポーツも万能|人気者で先生にも好かれる|そんな理想像を真正面から讃えるのではなく|少し羨ましそうに|少し意地悪く眺めてしまうあたりが実に英国らしい
歌詞だけ読めば憧れの人物を称えているようにも思える|けれど聴き進めるほど嫉妬や皮肉が顔を覗かせる|本当に羨ましいのか|それとも笑っているのか|その曖昧さがたまらない|Ray Daviesは何気ない日常の感情を文学へ変えてしまう天才だった
90年代のBritpopがThe Kinksから受け継いだのはメロディだけではない|BlurやPulpが描いた少しひねくれた英国人の視点|普通なら主役にならない人々や感情を愛おしく描く感覚は|すでにこの頃完成されていたように思う
学校を卒業し社会へ出ても|そんな青年を何人も見かけた気がする|何をやっても様になり|自然と周囲から好かれる人|でも不思議なことに|年月が経って思い出すのは|そんな完璧な青年ではなく|その隣で少し拗ねた顔をしていた誰かだったりする
だからこの曲は「完璧な人」の歌ではない|「完璧な人を少し羨ましく思ってしまう人」の歌なのだと思う|その人間臭さこそが|半世紀以上経った今もThe Kinksが色褪せない理由なのかもしれない
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