事業計画書の作り方。8つの必須項目と、伝わる書き方のコツ
事業のアイデアが固まったら、次はそれを**「事業計画書」**という形にまとめる番です。
事業計画書と聞くと「難しそう」「自分に書けるだろうか」と身構えてしまうかもしれません。でも、書くべき項目とポイントを押さえれば、決して手の届かないものではありません。
そして何より、事業計画書が書けないということは、プランが立てられていないということ。裏を返せば、計画書を書き上げる過程そのものが、事業を成功に近づける準備になるのです。
今回は、事業計画書の必須項目、内容・作成のポイント、そして仕上げのチェックリストまで、実践的にご紹介します。
事業計画書とは何か

独立して行う仕事を、どうやって継続させ、発展させるか。それを実現するには、独立後の日々の努力はもちろん、独立前の準備が欠かせません。
準備しておくべきものは、次の6つに整理できます。
$$
\small
\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{ll}
\hline
\textsf{準備するもの} & \textsf{言い換えると} \cr
\hline
\verb!信念! & \text{精神的財産(なぜやるのか)} \cr
\hline
\verb!仕組み! & \text{知的財産(どう動かすか)} \cr
\hline
\verb!資金! & \text{物的財産(いくら必要か)} \cr
\hline
\verb!商品・サービス! & \text{何を提供するか} \cr
\hline
\verb!市場! & \text{誰に届けるか} \cr
\hline
\verb!支援! & \text{誰の協力を得るか} \cr
\hline
\end{array}
$$
これらをどう考え、どう準備し、どう動かしていくのかを綿密に計画したものそれが事業計画書です。
計画を立てるために考える7つの問い
事業計画書を書き始める前に、まずは次の7つの問いに自分なりの答えを出してみましょう。
① なぜこの事業をするのか?

後に苦難にあたったときの精神的な支えになります。また、成功する事業は社会から歓迎されるものが多いため、自分の事業の存在意義を確認する意味でも、忘れてはいけない問いです。
② 商品・サービスの具体的な内容は?
顧客にどのような商品・サービスを提供するのか。そして、それは本当に顧客に受け入れられるものかを考えます。
③ 想定する市場は?顧客は?
ターゲットは、できるだけ絞り込むことが大切。ターゲットが鮮明になるほど、アプローチの方法を具体的に検討できます。
④ どんな特徴で?どんなノウハウを使うのか?
市場や顧客に提供する際、どうやって競合優位性や独自性を発揮するかを検討します。「販売力」「商品のアイデア」「物流の効率性」といった特徴を発揮するには、それを生むノウハウも必要です。
⑤ どのようなタイミングで行うか?
特徴となるノウハウを導入するには、「人」「資金」をどのタイミングで投入するかが重要。「どの時期に・どんな人と・どれくらいの資金が必要か」という時間の概念を明確にすることで、事業プランが立ち上がります。
⑥ だれがやるのか?
事業を実行するフローの中で、どんな人材が必要かを考えます。自分やパートナーの能力を判断し、ほかにどんな能力を持つ人が何人必要かを検討しましょう。
⑦ 資金は?売上高の目標は?
開業前・開業後にどれだけの資金が、どんなタイミングで必要になるのか。事業フローや売上見込みと合わせて検討し、具体的な資金計画・資金調達方法につなげます。
「商品先行」か「市場先行」か
これらを考える際には、原則的な順番があります。
多くの場合は「②商品・サービスの内容」から入り、次に「③想定する市場・顧客」へと進みます。しかし逆に、先に狙う市場やターゲットを定め、そこに提供できる商品・サービスを考案する方法もあります。
$$
\small
\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{lll}
\hline
\textsf{タイプ} & \textsf{進め方} & \textsf{特徴} \cr
\hline
\verb!動機先行型! & \text{商品・サービス → 市場・顧客} & \text{「やりたいこと」から出発する} \cr
\hline
\verb!根拠先行型! & \text{市場・顧客 → 商品・サービス} & \text{「求められているもの」から出発する} \cr
\hline
\end{array}
$$
マーケティング的には後者(根拠先行型)が有利とされます。ただ、②と③の2つを頻繁に往復させてプランを深めていけば、どちらからスタートしても構いません。
いずれにしても、「①なぜこの事業をするのか?」には絶えず立ち返ること。「なぜ自分はそれをやるのか」「なぜ人々(市場)はそれを必要とするのか」この回答が曖昧なプランは、残念ながら「空理空論」でしかないのです。
事業計画書から外せない8つの項目

ここからは、実際に事業計画書に盛り込むべき8つの項目です。業種・業態・規模の大小にかかわらず、必ず設定しておくべきものです。
$$
\small
\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{lll}
\hline
\textsf{番号} & \textsf{項目} & \textsf{書く内容} \cr
\hline
\verb!1! & \text{事業プラン名} & \text{簡潔かつ魅力的で、これだけで何を計画しているか一目で伝わるタイトル} \cr
\hline
\verb!2! & \text{事業内容} & \text{どんな市場・ターゲットに、どんな商品・サービスを提供するのかを端的に説明} \cr
\hline
\verb!3! & \text{市場環境} & \text{市場規模・成長性・競合の評価などを、統計データを活用して分析(表やグラフで)} \cr
\hline
\verb!4! & \text{競合優位性} & \text{同業種だけでなく、同じターゲットを狙う異業種の競合も意識し、優位性・差別化を訴求} \cr
\hline
\verb!5! & \text{市場アクセス} & \text{どう市場に認識させ、どう販売網を築くか。事業の実現プロセスを伝える} \cr
\hline
\verb!6! & \text{経営プラン} & \text{仕入れ・開発・生産計画、人員・組織計画など、継続運営のためのシステムを紹介} \cr
\hline
\verb!7! & \text{リスクと解決策} & \text{想定されるリスク・問題点を抽出し、危険度を分析。対処法・解決策を先回りして提示} \cr
\hline
\verb!8! & \text{資金計画} & \text{詳細な収支予測に加え、資金繰り計画も立案。資金調達案・返済/配当計画も提示} \cr
\hline
\end{array}
$$
各項目には、それに則した表現方法で「結論」を書き込む必要があります。ここが事業計画書の難しいところで、自分の専門分野の知識に加えて、マーケティング・経営・会計の知識が求められます。
ただし、基礎的な知識は書籍や短期セミナーで十分学べますし、大事なのは「その知識がなぜ必要なのか」を理解していること。それさえわかっていれば、細部は各項目の専門家に相談しながら進めることでクリアできます。
💡 補足:融資を受けるなら「公的テンプレート」が便利 これから創業融資を検討している方は、日本政策金融公庫が公式サイトで無料配布している「創業計画書」のテンプレート(PDF・Excel)が参考になります。「創業の動機」「経営者の略歴」「取扱商品・サービス」「取引先・取引関係」「必要な資金と調達方法」「事業の見通し」などの項目で構成され、同じ「各種書式ダウンロード」ページ内では業種別の記入例(洋風居酒屋・美容業・中古自動車販売業など)もあわせて公開されています。ゼロから枠組みを考えるより、まずこうした様式に沿って書いてみると、必要な項目を漏らさず整理できます。
内容のポイントは「魅力・根拠・緻密」
事業計画書の内容を平易に言い換えると、こうなります。
「何を、なぜ、誰に、どんな市場で、どんな特徴を持って、どのように知らせ、どのように提供するか。そして、それは、いつ、誰と、どんな方法で、どんな数字にもとづき、どんな数字を目指して行うのか」
実際にはボリュームが増え、冊子として仕上がるケースも多くなります。その場合、全項目を平坦に記述するのではなく、「山場」を設けることが大切です。
特に注力したいのは、次の3つの部分です。
魅力:内容の魅力を伝える部分
根拠:その魅力を裏付ける部分
緻密さ:計画の緻密さを示す部分
作成のポイントは「明瞭・簡潔・平易」

事業計画書を書くうえで最も注意したいのが、わかりやすく書くことです。内容がわからないプランに、賛意を示す人はいません。
避けたいのは次のような書き方です。
難解な専門用語の羅列
外国語表記の連発
長すぎる前置き
多すぎる参考資料
とにかく「明瞭かつ簡潔」が鉄則。プランが壮大なら、一言でわかるタイトルやサマリー(要約)を用意しましょう。
そのほか、押さえておきたいコツは次のとおりです。
データの使い方:説得のカギとなる山場では裏付けデータを。数値は表やグラフで、煩雑にならないように
作成目的を示す:前書きなどに「資金を提供してほしい」「パートナーになってほしい」など、何のための計画書かを明示する
文体は「ですます調」:他人に物事を依頼するための書類だと考えれば、丁寧な文体が適切です
仕上げのチェックリスト10項目

模倣対策や採用の現実性も厳しくチェック。
書き上げたら、以下の10項目でセルフチェックしてみましょう。
1.実現不可能な計画・売上高をぶち上げていないか?
冒頭に「1年後に株式上場」などと書かれた計画書を見かけることがあります。夢が大きいのは良いことですが、「この人は現実が見えているのか」と思われる表現は避けたいもの。予測数字は勢いだけで書かず、必ず裏付けを取りましょう。
2.すぐにマネされない対策を考えているか?
独創的なつもりでも、同時期に似たプランを考える人は多いもの。稼働までにもたつかないことが大切です。また、世に出れば模倣されるのは時間の問題。特許を含む権利対策も意識しましょう。
3.対象客層を極端に絞り込みすぎていないか?
ターゲットが広すぎると訴求力がありませんが、狭すぎるとマーケット規模が小さくなり、収益力が弱まったり非効率になったりする危険があります。資金提供側から見たメリットが減るリスクもあります。
4.稼働させるスタッフを実際に確保できるか?
計画上は理想的な人員配置でも、その人材を実際に採用・確保できるのか。人手不足が続く昨今、採用の現実性は特に厳しく問われるポイントです。
5.流通・販売方法を無視していないか?
問屋に卸すのか、小売に卸すのか、通信販売で直接売るのか、あるいは複合的にやるのか。どんなルートなら確保できるのかを、コストもにらみながら検討しておきましょう。
6.特許・商標・著作権などを侵害していないか?
盗用していなくても、そのアイデアがすでに特許や実用新案として認められていたり、出願中だったりする可能性があります。ネーミングやデザインが商標・意匠を侵害していないかも要注意。知的財産権・著作権には十分気をつけましょう。
7.内容が専門的になりすぎていないか?
計画書を読む人は、ビジネスのプロであっても、その事業分野に詳しいとは限りません。「理解しない相手を責めるより、どう理解させるかを考える」のが大切です。
8.量が膨大になりすぎていないか?
「厚いほど良い」は錯覚です。長すぎる計画書ほど理解させるのは難しいもの。10〜15分程度で概要とポイントがつかめる量が標準です。どうしても多くなるなら、別紙・別冊にして分けて見てもらいましょう。
9.書くべき内容の比重を間違っていないか?
一番伝えたい項目・相手が一番知りたい項目は何かで、記述の比重は変わります。市場の将来性が魅力なら、その説明を厚く。ただし、読み手が理解しやすい順に書きましょう。
10.プレゼンテーションとの役割分担を意識しているか?
計画書だけを見てもらう場合と、プレゼンしながら見てもらう場合とでは、最適な内容・分量が変わります。映像や模型などのツールが使えるかどうかも含め、どういう環境で見てもらうのかを意識して仕上げましょう。
まとめ:計画書づくりは「事業の予行演習」

今回のポイントを振り返ります。
事業計画書とは、信念・仕組み・資金・商品・市場・支援をどう動かすかを綿密に計画したもの
書く前に7つの問いに答え、「①なぜやるのか」には絶えず立ち返る
必須は8つの項目。融資目的なら日本政策金融公庫のテンプレートが便利
内容は「魅力・根拠・緻密」、作成は「明瞭・簡潔・平易」が合言葉
仕上げに10項目のチェックリストでセルフチェック
事業計画書を書き上げる過程は、いわば事業の予行演習。ここでしっかり考え抜いておくことが、開業後の判断を支えてくれます。
いよいよ次回は最終回。事業計画の中でも特に重要な「資金計画を立てる」をテーマにお届けします。どうぞお楽しみに!
参考・出典
日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」(創業計画書のテンプレート・業種別記入例を同ページ内で提供) https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
中小企業庁(公式サイト) https://www.chusho.meti.go.jp/
本記事の情報は執筆時点(2026年7月)のものです。 内容は変更される場合があります。 詳細は各専門機関・不動産会社にご確認ください。
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