【映画】「見えない娘 THE INVISIBLES」感想・レビュー・解説

なかなか面白い映画だった。凄く良かったわけではないが、「三女だけ生まれた時から透明人間」というぶっ飛んだワンアイデアのみで突っ走ってる割にはなかなかよく出来てたなぁ、と思う。

しかし、本作の監督はなかなか変わってる。最初に『14歳の栞』というドキュメンタリー映画を撮り(これは衝撃的な作品だった)、その後『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』というコメディ的な映画を撮り(これも面白かったなぁ)、続いて再び『大きな家』というドキュメンタリー映画を撮り(これも良い作品だった)、で本作『見えない娘』である。ドキュメンタリーとフィクション両方撮ってる監督は他にもいると思うけど、こんな風に行ったり来たりしている人はなかなかいないんじゃないかなと思う。

というわけで、まずはざっくりと内容を。

星野家は、東京都に属する神津島にひっそりと暮らしている。山の奥にある一軒家に隠れるように生活しているのだ。そこは近隣の住民から「幽霊屋敷」と呼ばれている。

まあ実際には、いるのは幽霊ではなく透明人間なのだが。

長女の風子は映画監督を目指し、次女の音々は女優を目指している。そんな2人は父親の目を盗んで、自宅の敷地内で映画を撮っている。参考にしているのは、有名な女優である祖母・砂川エリ子が主演したホラー映画だ。そしてホラー演出の要として、三女の透明人間・ひかりがいる。誰にも見えないから、彼女が上手いこと動けば超常現象っぽい映像などちょちょいのちょいで撮れてしまうのだ。

そんなある日、エリ子のマネージャーから「風邪をこじらせて入院しました」と連絡がきた。そしてそれを娘たちに聞かれてしまう。祖母を敬愛している娘たちは、祖母を見舞いに行きたいと考えるが、極度の心配性である父・学は絶対にそんなこと出来ないと考えている。ひかりの存在が知れたら、どうなってしまうか分からないからだ。

というのも、ひかりが生まれた時、医者から「彼女の存在が知られれば、スパイや兵器にさせられるかもしれません」と脅されていたのである。家族が平和に一緒に生活するためには、この島で大人しくしているのが一番なのだ。

しかも、亡き妻とも相談して、祖母のエリ子にはまだひかりを会わせていない。「病気のため、家から出られない」ということにして、頑なに会わせていないのだ。もちろん、ひかりが透明人間だなんて話もまったく伝えていない。だから余計に、見舞いに行くなんて言語道断なのだ。

しかし色々あって、星野家は東京まで車で向かうことになってしまった。学は娘たちに「お・か・し」を守らせようとする。「脅かさない・関わらない・静かに暮らす(喋らない)」である。しかし、娘3人が大人しくしていられるはずもなく……。

というような話です。

この映画、まずはとにかく、透明人間のひかりが素晴らしい。姿は一切映らず(時々、アニメーションで表示されるが)、声のみなのだ、声だけなのにメチャクチャ良い存在感を放ってるんだよなぁ。無邪気でイタズラ好きで、大体楽しそうにしてる。みたいなことが、声の調子で凄くよく伝わってきて、大人が子どもの声を出してるのかなとも思ったけど、鈴木凜子という10歳の子役の子のようだ。いや、メチャクチャ上手いだろ。本作はとにかく、ひかりの無邪気さとか明るさみたいなもので成立しているみたいなところがあるので、鈴木凜子の演技は本当に重要だったなと思うし、お見事でしたという感じである。

また、本作では「三女は何故透明人間なのか?」みたいなことはほぼ描かれず(父・学が、ひかりを目に見えるようにしようと色々勉強してる、みたいな話がちょっと出てくるぐらい)、「三女は透明人間ですけど何か」みたいなテンションで最初から最後まで突き進んでいく感じも良かったなと思う。ひかりは9歳らしいが、「9年分の家族の結束が詰まってるんだろうなぁ」と感じさせるような関係性で、なかなか素敵だなと思う。

で、「島の山奥にひっそり暮らして、なるべく人と関わらずに生きてきた」という設定によって、本作のドタバタが生まれるわけで、そういう「超荒唐無稽な設定を1つ置く代わりに、他でどうにか帳尻を合わせますよ」みたいな感じも良かった。

例えば、星野家からすれば「ひかりが透明人間であること」や「そんなひかりと普通に会話すること」は日常で、9年間それを当たり前にやってきた。そしてだからこそ、東京という人が密集している場所でも、割といつもの習慣で喋っちゃうのだ。ダメだと分かってても、三姉妹にとってはそれが当たり前すぎるから、なかなか抑えが利かないのだ。

みたいな感じが結構ナチュラルで、「三女だけ透明人間」というぶっ飛んだ設定ながら、そこまでSFとかファンタジーって感じになってなくて、割と「家族のロードムービー」として観れるのは良かったんじゃないかなと思う。

で、物語はドタバタって感じで進んでいくんだが、個人的に一番好きなのが、「ひかりが透明人間のままがいいと言っていたその理由」である。彼女はずっと明るいのだが、それは「透明人間である自分」に結構満足しているからのようだ。学は「ひかりをどうにか見えるようにしなきゃいけない」と考えているのだが、ひかりには全然そんな気はなさそうである。

で、その理由が、「みんなに気づかれずに風のように人々の間を通り抜けても、みんな自分のままでいる。それが好きなんだ」だった。いや、なるほどなぁ、という感じである。それを良いと感じる感覚は、僕にも理解できる。本作は全体的にはどエンタメなので、まさかこんな心情に訴えかけてくるようなシーンがあるとは思わず、ビックリしてしまった。

そして、似たような感覚になったのが、濱田祐太郎が出てくるシーンだ。詳しくは触れないが、これも上手いよなぁ。状況の面白さに加えて、ひかりの性格も描写できる、実によく出来たシーンだったなと思う。

というわけで、とにかく全体的に楽しく観られる映画で良かったなと思う。

あと個人的に、風子を演じた近藤華は最近よく見かける女優で、結構気になってる。『僕達はまだその星の校則を知らない』『小さい頃は、神様がいて』という2つのドラマは観てたけど、どっちにも割とメイン的な存在として出てきていて、結構印象に残っている。『小さい頃は、神様がいて』と本作『見えない娘』ではどちらも映画監督志望の役だったが、公式HPのプロフィールに、【菅田将暉のMV「ギターウサギ」では出演と、クリエイティブディレクターとしてアニメーション制作を担当した】と書かれていて、実際にそういうクリエイティブ的な方面でも才能がある人のようだ。みんな才能があって羨ましい!


いいなと思ったら応援しよう!

長江貴士 サポートいただけると励みになります!

この記事が参加している募集