【映画】「私はあなたを知らない、」感想・レビュー・解説

全体的には良かったと思う。のだけど、ちょいちょいモヤモヤっとする部分があって、「凄く良かった!」という風には言い難いかなぁ。ちょっと期待値が上がってたのもあったかもだけど。

映画の見方に正解も不正解もないだろうが、しかし、本作はどう観るのが正解なのかがちょっと難しかった。

一番モヤモヤするのは、堀田真由演じる紗月のキャラクター。個人的にはちょっと、あんまり許容したくない人物なんだよなぁ。というのは、一般的な感覚からズレてるだろうか? それもイマイチよく分からないのだが、個人的には「うーむ」って感じだった。

だって僕には、「『そうしてたらそうなるじゃん』みたいなことが起こって、なんかそれにキレてる人」にしか見えなかったのだ。最終的に「合わないな」となるのはしゃーないけど、にしてもちょっと色々違くない? と感じられてしまった。

また本作では、「犯行動機を語らなかった」という事実に割と焦点が当たるように思うのだが、結局その理由がよく分からなかった。これは僕の読解力の問題なのかなぁ。そこに特段焦点が当たらないなら別に描かれなくてもいいが、割と重要な要素として扱われているように思うので、だから「えっ? 結局理由は?」ってなった。

で、それに少し絡む話だが、後半に出てくる弁護士がなんか意味深な振る舞いを随所でしてて、「えっ、この弁護士が何か隠してるのか?」みたいに思ったのだけど、全然そんなことなかった。なんかのミスリードだったのかなんなのか。ちょっとよく分からなかったなぁ。

みたいな感じでちょいちょい「ん?」となる部分があって、「全部良かった!」という風にはちょっとならなかったかな。結構絶妙なシチュエーションで、繊細な人間関係を描く物語だったから、描き方が違ったらもっと僕の好みに近づいた気もするけど、本作はちょっと残念ながらそうはならなかった。

のだけど、本作はとにかく、坂口健太郎演じる夕平の存在感が凄く良かったなと思う。彼がしてしまったある行為についてはもちろん擁護できないが、しかし、その点を除けば、彼の行動は責められるようなものには僕には感じられなかった。

もちろん、紗月の気持ちもわかる。紗月側に立てば、「いやいや、ちょっと」となるだろう。ただ、取りうる選択肢が豊富に存在するわけではない状況で、紗月は紗月なりの最善を、そして夕平は夕平なりの最善を尽くしていたわけで、それを一方的に「あなたは違う」と排除していく感じは、うーん、ちょっと違うんじゃないかなぁと思った。

なにせ、夕平を”王国”へと引き入れたのは、他でもない紗月なのだ。夕平は、自ら望んだわけでもなく”王国”へと足を踏み入れ、それまでとはまったく違う世界の中で必死に馴染もうとした。そして色々あって、それはとても上手く行ったのだ。ある一面では。しかし、結局紗月は、夕平を”王国”から追い出すことにした。それは、僕の捉え方で言うなら「”王国”に馴染みすぎたから」である。

それはちょっと理不尽すぎやしませんか? と感じてしまった。

恐らくこの辺りの感覚は人によって変わると思うのだが、どうなんだろう、制作側の意図としては、「僕のような受け取り方」はある程度想定の範囲内なんだろうか? さっきも書いた通り、本作の「正解の捉え方」がイマイチよく掴めない。少なくとも僕には、紗月よりは全然夕平の方が共感できるんだが、一般的にはどうだろうなぁ。

本作の設定上の面白さとしては、「過去の事件を追う朝子には、犯人に対して特段の感情がない」という点だ。というのも、当時のことを全然覚えていないのである。実際には深い関わりがあったのだが、幼かった朝子は高校生になった今、その記憶をまったく覚えていない。だから「犯人に対してどういう感情を抱いたらいいか分からない」という状態にいるのだ。

まあ確かにそうだろう。だから彼女は、「私は今どう感じるべきか」を探るために、事件について調べるのだ。こういう動機で過去の事件を調べるというのはあまりない設定な気がするし、本作ではそれが実現する状況設定が絶妙になされているので、その点は凄く良かったなと思う。

というわけで、悪くなかったと思っているのに、あんまり良いことが書けなかった。まあでもやっぱりなぁ、繰り返しになるが、やっぱり個人的には紗月のキャラクターがちょっと受け入れがたかったなという感じが強い。たぶん本当は、「夕平が家族を求めてしまう狂気」みたいなものに焦点を当てているんだと思うが、僕には「この状況なら、こういう感じになっちゃうのも多少はしょうがなくないか?」という感覚が強かったので、あんまり「狂気」みたいな捉え方にはならなかった。

あと、物語の中で「サボテン」の使い方が凄く上手かったなと思うが、「結局紗月はどうしてそんなことをしたのか?」を想像するためのヒントが少なすぎないか? と思う。紗月の行動として、それは一貫性があるんかなぁ。要素の使い方としてはとても上手かったけど、それが人物像を描き出す役割を担えていたかというとちょっと微妙な気がするし、この点も「もう少し整合性があると良かったな」と思う。

いやホント、なんか凄く「惜しい」って感じなんだよなぁ。僕の好みとは、色んな部分で絶妙にズレていく感じ。

最後に。朝子を演じた早瀬憩は、『違国日記』で初めて存在を知ってから色んなところでちょいちょい見かけるようになって、良い存在感だなと思う。


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