【映画】「フィッシュストーリー」感想・レビュー・解説
やっぱり、ストーリーが抜群に面白いよなぁ。メチャクチャ良かった。
んだけど、この『フィッシュストーリー』についてはちょっと不思議なことがある。
で、その説明の前に、少し前に観た『海よりもまだ深く』(是枝裕和監督)って映画の話をしよう。少し前にリバイバル上映をしてて観に行って、面白かったなぁとか思いながら家に帰って感想を書いて(いくつかUPする先があるので、まずWordに書くようにしてる)、で、Filmarksに感想をUPしようと思ったのだけど、なんと既に『海よりもまだ深く』の感想を書いていた。
つまり、僕は『海よりもまだ深く』を初めて観たと、Filmarksに感想をUPする瞬間までそう思っていたのだけど、実は以前に観ていたのだ。ホントこれは、ここ最近でかなりビックリした話で、「やっぱり映像の記憶が全然出来ないんだなぁ」と思った。しかし、ワンシーンさえ記憶になかったのは逆に凄いよなとも思う。
で、本作『フィッシュストーリー』はその真逆なんだよなぁ。僕には本作を観たような記憶があるんだけど、Filmarksにも他のどこにも感想がない。
で、それだけなら「なんか勘違いしてるのかな」というだけなんだけど、この話もう少しある。
僕は、伊坂幸太郎が書いた本作の原作を映画を観る前に読んでいる。『フィッシュストーリー』というのは短編小説で、かなり短い。で、映像化するにあたって、原作にはない要素がかなり加わっていて、だから、「小説を映像化する場合、2時間に収めるには大抵物語を削らないといけなくなるし、だから原作を読んでる場合、『ちょっとなぁ』みたいな感想になりがちだが、短編小説を長編映画にする場合エピソードを削らなくていいし、それに本作の場合は、追加の要素がメチャクチャよく出来てるので、そういう意味でも完成度がメチャクチャ高い」みたいな感想を書いた……
……ような記憶があるんだよなぁ。でも、そんな文章がどこにも残ってない。だから不思議なんだよなぁ。
というわけで、本作『フィッシュストーリー』を初めて観たのか2度目なのかは今もって謎だが、とにかく面白かったので良かった。しかしホント、記憶というのは不思議なものである。ちなみに、『海よりもまだ深く』の実績(?)があるので、「『フィッシュストーリー』を観て、特段覚えているシーンがない」としても、それが「観ていない」ことの証明にはならない。難儀な記憶力である。
というわけで、まずは内容の紹介から始めよう。しかしまあ、説明しにくい物語だよなぁ。
舞台はいくつかの年代に分かれているのだが、物語の冒頭は2012年である。状況は逼迫している。なんと、あと5時間で地球に彗星が衝突し、地球が壊滅するとされているのだ。100m以上の津波が襲い、世界中どこに逃げても助かる余地はなさそうだ。
そんな時、車椅子に乗った男があるレコード店へと入っていく。もう人っ子一人いないような町のレコード店に何故か、店主と客がいた。で、店主が客に聴かせていたのが逆鱗の『フィッシュストーリー』である。
逆鱗は1975年、セックス・ピストルズがデビューする1年前に『フィッシュストーリー』という曲を発売した。泣かず飛ばずで解散したが、日本のパンクロックの先駆けとして今もコアなファンがいるようだ。
そしてこの『フィッシュストーリー』という曲のカセットテープを車内で聴いている男が3人いる。舞台は1982年、逆鱗の解散から7年後である。男の1人は「変な噂のある曲」を収集するのが趣味らしく、「コーラス部分に謎の声が」「逆再生するとこんな言葉が聞こえる」など色々説明している。そしてその中の1本が『フィッシュストーリー』だった。この曲は間奏部分が無音になっている。レコードにもそう注意書きがされているので、これ自体はミスではない。しかしその無音の間奏部分に、女の悲鳴が聞こえるのだという。いや、全員聞こえるわけではない。聞こえる人がいる、という噂があるのだ。
さて、話は変わって2009年、ある女子高生がクルーズ船に乗っていた。修学旅行中で、皆で神戸から東京まで向かっているところなのだ。しかし彼女は、「一度寝てしまうと爆音でも起きない」という特殊な性質があり、うっかりベンチで眠ってしまったことで東京で下りそびれてしまったのだ。船は苫小牧まで止まらない。彼女は号泣しつつ、修学旅行を諦めるほかなかった。
そしてそんなクルーズ船になんと、シージャック犯が乗り込んでおり……。
というような話です。
内容紹介だけ読むと、まあ意味不明な話だろう。本作には実は1999年が舞台のパートもあり、「ノストラダムスの大予言に便乗した新興宗教」みたいな話なのだが、そういう複数の時代の話を行き来しながらストーリーが進んでいく。
で、当然ではあるが、本作最大の焦点は「5時間後に地球に衝突する彗星」である。地球に激突する確率はなんと100%。そしてぶつかれば、津波やら衝撃波やら火山の噴火やらで、人間が生きのびられる可能性はほぼ存在しない。半年前にアメリカが、この彗星に核爆弾を設置したのだが、爆破までは出来ずミッションは失敗に終わっていた。
で、この彗星がどうにかなるのか? というのが重要な問題なのだが、それ以外のストーリーがどう考えても彗星の話に絡みそうにない。そもそも時代が違うし、「売れないバンドマン」と「合コンに向かう3人の男」と「下りそびれた女子高生が乗るクルーズ船がシージャックされる」なんて話だし、「関係なさすぎるだろ」としか思えないような内容だ。
のだけど、これがちゃんと繋がるんだよなぁ。ホントよく出来てる。
で、「関係なさそうな話が繋がる」ってだけじゃなくて、それぞれのパートの物語も面白い。ホントに全然違うタイプの物語で、1つの映画で色んな物語に触れられるお得さみたいなものもあるし、また、どのパートも実力のある役者がメインで登場するので安心して観ていられる。「彗星がぶつかる」とか「シージャックのその後の展開」とか、色々「ンなわけないだろ」って状況にもなるのだが、元々「伊坂幸太郎の物語ってそういう感じだよね」っていう印象があるから違和感はないし、別に原作を知らなかったとしても、全体の雰囲気や役者の演技的にしっくり来ちゃうんじゃないかと思う。その辺りも上手いよなぁ。
で、この記事の冒頭の方で書いたけど、「原作に新たに追加されたエピソード」もホントに上手い。原作のことはほぼ覚えていないのだが、たぶん「戦後すぐの混乱期のパート」の話はまるっと原作にはなかったはずだ。で、この部分が「原作になかった」とは思えないぐらいピタッとハマる感じがあって、凄く上手い。よく考えたよなぁ(とか書いてるけど、ホントは原作にあったりして笑。僕の記憶は怪しいので話半分ということで)。
で、結局、全体としては、「この『フィッシュストーリー』って曲は、いつか誰かを救うんだよ」っていう状況が実現しちゃってるわけで、そういう全体の構成が素敵だなと思う。
で、『フィッシュストーリー』って曲もメチャクチャいいと思うんだよなぁ。斉藤和義が作詞作曲プロデュースで、原作に元々あった「僕の孤独が魚だったら 獰猛さと激しさに 鯨でさえ逃げ出す」っていう歌詞をたぶんそのまま(ほぼそのまま)使ってると思うんだよなぁ。詞先の曲みたいなのは全然あるだろうし、別に普通のことかもしれないけど、メッチャカッコいい曲になったなぁ、と思う。
で、ここまで書いて、やっぱり僕は『フィッシュストーリー』観たことがある気がしてきた。たぶん、書店員時代に、出版社の人に声を掛けてもらって試写会かなんかに呼んでもらったんだと思う。なんてことをどうして思い出したかというと、その後で「映画のコメントを下さい」と言われて僕は、具体的には覚えていないが「僕の孤独が魚だったら 獰猛さと激しさに 鯨でさえ逃げ出す」を文字ったコメントを考えて出したような記憶がある。「この映画が魚だったら、その◯◯と☓☓で△△さえ~~」みたいな文章を考えた記憶があるなぁ。
と思い出して、そのコメントが検索で出てこないかと調べてみたんだけど、やっぱり出てこないなぁ。うーむ、この記憶も偽りの可能性あるのだろうか。むむむ。
というわけで、僕の記憶のあやふやさが改めて浮き彫りになった鑑賞でもあったのだが(笑)、とにかく面白かった。ストーリーが面白ければOKという僕のような人間にはドンピシャの作品である。
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