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「ここのたい焼き、なんやろ?いつも買ってしまう」

(休みの日の、ちょっとした楽しみの話です。)


休みの日に行く市場がある。
野菜をてんこもり買って、最後に必ず寄る場所がある。

たい焼き屋だ。

それが、ひそかな楽しみになっている。


ここのたい焼きは、

うまい。


鯛のかたちがきれいに整っていて、
あんこが、皮のぎりぎりまで詰まっている。

そして、もうひとつ。
僕は、理由があって、ここでたい焼きを買う。


たい焼きを焼くお姉さん。

その人は、いつも淡々と焼いている。
僕が買いに行くと、目線は伏せがちで、

小さな声で
「いらっしゃい」
とだけ。


僕も「あずき、一個ください。」
これ以上の会話はない。


そして
横の保温場所には手を伸ばさない。
鉄板の上にある、焼きたての中から
何個か手で確認してから
ひとつ取り出して、
そのまま、ていねいに包んでくれる。

僕はひとこと、
「ありがとう」と言って受け取る。

少し離れて、食べる。


外はカリっと、中はあんこたっぷりのあつあつ。
噛むと、ぶにゅっとあんこが飛びだす。

やけどしないように。

ここ以上の、たい焼きはない。


でも、たまに違う人が焼いている日がある。

そのときは決まって、
横の保温場所から、ひとつ取り出して、
無造作に袋へ入れる。

そのたい焼きは、
どこか形が崩れている。
皮がはみ出していたり、
あんこも、少し物足りない。
パリパリ感は、ほぼない。

同じたい焼きのはずなのに。


だから僕は、
次に行くときも、

あのお姉さんが焼いていることを、
少しだけ、そう願っている。



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