✳信号機ぶどう味✳
5時間目の始まりのチャイムが鳴った。
理科の授業は理科室ではなく、教室で行われた。
少し重たいまぶたをこすりながら黒板を見つめた。
今日は教室なんだ…。
不安が的中しないようにと、ざわざわとした気持ちを胸に抱えながら、授業を受けていた。
授業の途中で、先生が「これから、5〜6人のグループになるように」と言った。
みんな一斉に机を移動して、5〜6人のグループになった。
わたしだけ、どのグループにも入れず1人ポツンと机が離れていたので、みんなが私に注目した。
顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなり、小5理科と書かれた教科書に目をおとした。
「なんだよ、伊藤をグループにいれてやれよな。」と先生が言った。
少し席から離れていたが、こっちにおいでとカナが
誘ってくれた。
カナのほうへ机を移動している私をみて、何人かがクスクス笑っていた。
肩まで伸びたサラサラの髪に、大きな瞳。笑うとできるえくぼが可愛いカナは、優等生で、こんな時にいつも優しくしてくれる。
このクラスでは友達もいない。以前にいじめられた経験もあって、自分は嫌われているという気持ちが強くなり、机を移動することすらできなかった。
私の瞳に、にじみはじめた涙はこぼれずにとどまり視界はぼやけていた。
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学校の帰り道、私は1人帰っていた。
幼馴染のショウが後ろにいた。隣に住んでいるショウは、幼稚園の頃から一緒によく遊んでいた。
今でも家で一緒にゲームをする仲なのに、ショウは私と親しいことを外では隠したがっているようだった。
小3くらいから、学校の帰り道で一緒になっても離れて歩くようになった。
ちょうど、信号が赤になりショウと私は横に並んだ。その後ろからカナが友達と歩いてきた。
信号が青になった瞬間、「離れて歩いて」とショウが言った。
「わかった」と私は答えて、少し離れて歩いた。
歩きながら少し後ろを振り返ってみると
カナの笑顔とえくぼが、きらきらしていた。
私は、信号を渡る途中でポケットの中にあるぶどう味のキャンディを袋から出して口の中に放り投げた。
すこし薄くて苦いぶどう味。
この気持ちはなんだろうな。
「新しいゲームは、ショウには貸してやらないから。」
とつぶやいた。
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