訃報 ♯22
あまりにも突然すぎて、追いついていない。
LINEが突然入っていた。
仕事中に気づいて、メールを開いたら——
亡くなった、と。
え?
何言ってんの?
つい3日前に会ったばかりじゃん。
どういうこと?
胸がドキドキして、なんとなく……怖かった。
間違いであってほしい。
そう思った。
気づき①:それでも日常は、不思議なほど回っていく
状況がわからなくて、店に向かおうとした。
でもスタッフが帰ると聞いて、明日行くことにした。
ご飯を作る気になれなくて、スーパーでお弁当を買った。
「ただいま」
家に帰ると、子どもの顔を見た瞬間、言葉が出てきた。
「着物のバイトのおばあちゃん、亡くなったらしい」
子どもは私の顔を見るなり、こう言った。
「人なんて、そんなこともあるよ」
思春期の子どもが、ぶっきらぼうに慰めてくれた。
何も考えずに寝よう。
そう思った。
でも眠れなかった。
気持ちがふわふわしたまま、夜が続いた。
日常は、心の状態に関係なく、いつも通りに回っていく。
ご飯を用意して、
家に帰って、子どもと話して。
その中で、心だけが取り残されているような感覚だった。
気づき②:このバイトの意味は、なんだったんだろう
社長のそばで働きながら、気づいたらいろんなことに興味を持つようになっていた。
着付け、日本舞踊、着物の世界、——どれも、このバイトがなければ知らなかったことだ。
お金がたくさん稼げたわけじゃない。
でも、受け取っていたものがあった。
日本舞踊の美しさ、日本の文化の奥深さ、
そして——年配の方々との関わりの中で感じた、それぞれの人生の重さと豊かさ。
皆さんには、それぞれの歴史があった。
生き方があった。
長く生きてきた人にしか持てないノウハウと、言葉にならない深さがあった。
それが、宝物だった。
お金には換算できない、生きた知恵と温かさを、社長のそばで受け取っていた。
それがこのバイトの意味だったんだと、今になって気づく。
社長はもういない。
でも、受け取ったものは消えないと思ってる。
短いあいだではあったが、たくさんの行事の中で、とても多くのことを引き継いでもらった気がする。
週7日勤務の中で、少し重い身体を起こして勤務に行くと、嬉しそうに
「あなた……きてくれたの?
あなたにやってもらうこといっぱいあるのよ」と微笑む社長の姿が、忘れられない。
気づき③:命は、突然終わる
看護師として、何人もの死に立ち会ってきた。
だから、人の死に慣れているはずだった。
だから、平気だと思っていた。
けど、すごく寂しくなった。
何人もお見送りをして、死に慣れているつもりだった私。けど、まだ人間らしい感情を持っていたんだ、と気づいた。
それでも、身近な人の突然の死は——心がまだ追いつかない。
3日前に会っていた。
話していた。
笑っていた。
それが、もうない。
明日、この人がいなくなるかもしれない。
明日、自分が死ぬかもしれない。
仕事で何度も向き合ってきたはずの「死」が、急に、すぐそばにあるものとして迫ってきた。
命って、本当に突然終わるんだと、また思い知る。
今、思うこと
だから今日も、大切な人に「ありがとう」を言おう。
当たり前の毎日を、当たり前と思わずにいよう。
この出来事のあとから、自分の行動や言動を、ふと振り返るようになった。
本当に、これでいいの?
素直に言葉をここで伝えなくて、嫌じゃない?
もやもやしない?
自分の思い、考え、ちゃんと自分なりに伝えられた?
そう、自分に問いかけるようにしている。
明日が当たり前に来る保証なんて、どこにもない。
だからこそ、今日、伝えられることは、今日伝えたい。
今ここにいる命を、丁寧に生きたい。
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