【映画感想】「ミレニアム2 火と戯れる女」| マルチサイト推理アドベンチャー映画
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2009年公開。
「ミレニアム」シリーズ三部作は、なんとすべて一年間のうちに公開されました。
前作では、40年前の少女失踪事件を追う純粋な犯人捜しのミステリーでしたが、今回は少し趣が違います。
殺人事件の容疑者にされてしまったリスベットと、彼女の無実を信じるミカエル。
二人がそれぞれ別の方向から事件を追い、やがてひとつの真相へとたどり着いていくクライム・サスペンスです。
あらすじ
ヴァンゲル一族の事件が解決してから一年。
母親も亡くなり、カリブ海の別荘で悠々自適に暮らしていたリスベットでしたが、ある日、ハッキングによって後見人のビュルマンが何者かと接触していることを知ります。
急遽スウェーデンへ戻るリスベット。
その少し前、ビュルマンはリスベットに関する資料を欲しがる人物と接触していました。
交換条件として要求されたのは、リスベットが持っているある録画データ。
帰国したリスベットは、さっそくビュルマンのもとへ向かいます。
寝ている彼に銃を突きつけ、きちんと後見人としての仕事をするよう言いつけて、その場を去るリスベット。
自分の身に危険が迫っていると感じていた彼女は、以前住んでいたアパートを恋人のミリアムに貸していました。
自分宛ての手紙などを受け取っておいてほしいからです。
一方、ミカエルが編集長を務める雑誌「ミレニアム」には、新しい記者が加わっていました。
少女売春や人身売買組織を追っている青年、ダグです。
ダグは犯罪学を学んでいる恋人のミアと協力し、事件を追う記事をまとめていました。
ミアの論文も完成したばかりでしたが、まだ詰めなければならない部分があり、ダグはミカエルから助言をもらいながら取材を進めています。
ある夜、妹一家との夕食会に出席していたミカエルのもとに、ダグから電話がかかってきます。
見てもらいたい資料がある。
そう言われたミカエルは、帰りにダグのアパートへ寄って資料を受け取ることにしました。
ところが到着すると、アパートの住人たちが右往左往して、ものものしい雰囲気になっています。
何があったのか尋ねると、建物の中で銃声のような音がしたという。
ミカエルは急いでダグの部屋へ向かいます。
そして目にしたのは――
銃殺されたダグとミアの姿でした。
警察の鑑識によって、使用された銃はビュルマンのものだと判明。
そして、そのビュルマン自身も殺されていました。
しかも凶器の銃からはリスベットの指紋が検出されます。
こうしてリスベットは、三人を殺害した容疑者として追われることになってしまいます。
感想
一年ぶりに、以前働いていた調査会社の社長に会いに来たリスベット。
何も言わずに行方をくらませていた彼女に、社長はつれない態度を取ります。
この一年間、社長もリスベットを心配していました。
ミカエルからも、「リスベットから連絡があったら知らせてほしい」と頼まれていたのです。
さらに、脳卒中で倒れた以前の後見人についても、入院してから一度もリスベットが見舞いに来てくれないことを寂しく思っている、と聞かされます。
リスベットは、その後見人がすでに亡くなったものだと勘違いしていました。
そこで社長から、
「恩のある人のことを調べようともしないのか」
と呆れられます。
そして、自分勝手なことばかりして、本気で心配してくれている人たちをないがしろにしているリスベットを叱るのです。
これ、ちょっと考えさせられるんですよね。
人間、不思議なもので、ときどき、
「自分を大切にしてくれる人より、自分を粗末に扱う人のほうが価値が高い」
と勘違いしてしまうことがあります。
本気で自分のことを心配してくれるのは、家族や親友などの身近な人。
だからこそ、距離が近すぎて、そのありがたみが分からなくなることもある。
何か言われれば反発できる。
叱られれば腹も立つ。
つまり、甘えられる相手でもあるんですよね。
でも、本当に大切にしなければならないのは、自分が困ったときに助けてくれる人。
苦言を呈されたり、叱られたりして面白くない思いをすることがあっても、そこには「心配している」という気持ちがあるのかもしれません。
もちろん、誰からでも叱られればいいという話ではありません。
大事なのは、自分を支配したり傷つけたりする人と、こちらのことを思って苦言を呈してくれる人をきちんと見分けること。
そして、自分を大切にしてくれる人には、こちらもちゃんと礼を尽くしていきたいものです。
リスベットの無実を信じているのはミカエルだけではありません。
彼女のボクシング仲間であるパオロもその一人。
彼は「ミレニアム」に電話をかけ、リスベットは犯人ではないと訴えます。
ミカエルはパオロに会い、リスベットの居場所を知っていると思われるミリアムを探してほしいと頼みます。
ミリアムもキックボクシングをやっていたため、パオロとは面識がありました。
パオロがリスベットの元アパートを張っていると、ミリアムが現れます。
ところが、しばらく車の中で待っている間に、ミリアムは**「金髪の巨人」**に襲われ、車で連れ去られてしまいます。
パオロは慌ててその後を追います。
ミリアムは人里離れた廃屋へ連れ込まれ、リスベットの居場所を吐くよう何度も殴られます。
しかし、実際にはリスベットがどこにいるのか知らないミリアム。
当然、答えようがありません。
それでも巨人は拷問を続け、ついにはチェーンソーまで持ち出します。
その様子を見ていたパオロは、ついに我慢できなくなります。
小屋へ飛び込み、巨人に殴りかかる!
いや、パオロさん。
相手、めちゃくちゃデカいですよ?
しかもチェーンソー持ってますよ?
ボクシングはウエイト制ですから、こんな規格外の巨人と戦った経験なんて、まずないでしょう。
それでも、目の前で危険にさらされている人を放っておけず、自分の身を省みずに立ち向かいます。
自分に勝算があるとか、勝てるかどうかとか、そんなことを考えている余裕なんてなかったんでしょうね。
ただ必死。
こういう人、カッコいいんですよね~。
正義感の強い人って、腕に覚えがあるかどうかに関係なく、目の前で困っている人がいたら「なんとかしなきゃ」と動いてしまう。
これぞ真のヒーロー……(∩*☆∀☆)∩フルフル
……とはいえ。
現実では、滅多なことをしてはいけません。
危ない危ない。
目の前で誰かが危険な状態になっているとき、助けたい気持ちは大切ですが、無謀に飛び込んで自分まで危険になったら本末転倒です。
このケースなら、私だったらミリアムを連れ去った車のナンバーを覚えて、まず警察に通報すると思います。
まあ、映画としてはパオロの行動がめちゃくちゃカッコいいんですけどね。
ちなみに、このパオロ。
実は元ボクサーのパオロ・ロベルト本人が演じています。
芸能人や有名人が本人役でフィクションに登場することはありますが、カメオ出演程度ではなく、ここまでガッツリ出演して演技までしているのは珍しいですね。
そして前作では事件を一緒に解決したミカエルとリスベットですが、今回はなんと、ラスト近くまでほとんど顔を合わせません。
ミカエルはミカエルの側から。
リスベットはリスベットの側から。
それぞれ別々の事件を追っているように見えて、少しずつ同じ真相へと近づいていきます。
この構成、なんだかマルチサイト型の推理アドベンチャーゲームみたいで面白い。
ミカエル側とリスベット側を切り替えながら、それぞれの情報を集め、最後に二つのルートが一本につながる。
そんなゲームがあったら、かなりハマりそうです。
▼実際にめちゃくちゃハマッたゲーム
個人的には前作のほうがミステリーとしては面白かったのですが、今回はリスベットという女性の人物像がさらに深く掘り下げられているのが印象的でした。
彼女がなぜあれほど人を信用せず、他人との距離を取り、暴力に対して暴力で立ち向かうのか。
前作以上に、彼女が抱えてきたものの重さが伝わってきます。
そして、リスベットだけではありません。
ミリアムをはじめ、作中ではさまざまな女性が男性から暴力や支配を受けています。
そのため今回は、前作以上に「虐待を受ける女性の悲惨さ」が前面に出た作品になっています。
かなり重く、目を背けたくなる場面もありますが、それだけに「なぜリスベットはこんな人間になったのか」という部分にも説得力が出ています。
リスベットの過去と現在、そして彼女を取り巻く人々。
事件の謎を追いながら、彼女自身についても少しずつ分かっていく。
前作とはまた違った面白さのある続編でした。
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