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心理的安全性は「優しい職場」をつくることではない|『マネジメントに役立つ心理的安全性がよくわかる本』で考える、厳しい議論ができるチームのつくり方【Case OS BOOKS #61】

Case OS BOOKS #61
「心理的安全性」という言葉は、かなり広く知られるようになりました。
管理職研修でも、1on1でも、組織開発でも、エンゲージメントの議論でも登場します。
おそらく、マネジメント層でこの言葉を一度も聞いたことがない人の方が少ないでしょう。

しかし、言葉が普及した一方で、
実際のマネジメントでは、かなり誤解されている概念でもある。
そんな印象があります。
心理的安全性を高めるために、
部下を否定しない。
できるだけ褒める。
厳しいことを言わない。
会議ではみんなの意見を尊重する。
そう考えている管理職もいます。
もちろん、人を萎縮させるマネジメントは問題です。
でも、本当にそれだけなのでしょうか。

例えば、
誰も否定されない。
会議でも揉めない。
みんな仲がいい。
でも、
問題が起きても指摘しない。
成果が出ていなくても踏み込まない。
上司の判断がおかしいと思っても黙っている。
難しい仕事は避ける。
そんなチームが、本当に「心理的安全性の高いチーム」なのかというと、かなり疑問です。

今回読んだ広江朋紀さんの『マネジメントに役立つ 心理的安全性がよくわかる本』は、まさにこの誤解から入っていきます。

本書では心理的安全性を単なる「居心地のよさ」として扱わず、リーダー個人、リーダーとメンバーの2者間、そしてチーム全体という複数のレベルから、具体的にどうつくるのかまで掘り下げています。

さらに、パーパス、自己認識、認知バイアス、レジリエンス、1on1、傾聴、フィードバック、チームビルディング、ファシリテーション、ストーリーテリングまで扱う。

目次だけを見ると分かりますが、これは心理的安全性の解説書というより、
「現代の管理職は、何をマネジメントしなければならないのか」をかなり広く整理した本
です。
だから今回は、
「心理的安全性とは何か」
を要約するだけではなく、
管理職にとって心理的安全性とは、何を可能にするための仕組みなのか。
そこをCase OSとして考えてみたいと思います。


今回紹介する本

広江朋紀
『マネジメントに役立つ 心理的安全性がよくわかる本』

本書は、心理的安全性を理解するだけでなく、実際のマネジメントへ落とし込むところまでを扱っています。
第1章では、心理的安全性そのものの考え方と誤解を整理。
第2章では、まずリーダー自身の心理的安全性へ焦点を当てます。
第3章では、リーダーとメンバーという2者間の関係。
第4章では、職場・チーム全体。
そして第5章では、心理的安全性を高めた先に生じる新しい課題まで扱う構成です。
本書には実践用のワークも非常に多く、
パーパス。
セルフアウェアネス。
認知バイアス。
レジリエンス。
ラポール。
傾聴。
フィードバック。
1on1。
チームのWHY。
チームVALUE。
ファシリテーション。
ストーリーテリング。
と、管理職が日々直面するテーマがかなり網羅されています。



心理的安全性は、「何を言っても許される状態」ではない

最初に、本書を読んで改めて整理しておきたいところです。
心理的安全性とは、
みんな仲良くすることでも、
否定的なことを言わないことでも、
部下を甘やかすことでもありません。
本書でも、「衝突を避ければよい」という理解は心理的安全性の誤解として扱われています。
むしろ重要なのは、
必要なことを、必要なときに言えるか。です。

失敗しました。
分かりません。
助けてください。
その方法には反対です。
このプロジェクトは危ないと思います。
顧客からこんなクレームが来ています。
今の目標は現実的ではありません。
こうした「言いにくい情報」が出てくることの方が重要です。
ここを勘違いすると、
「心理的安全性を高めましょう」
と言いながら、
結果として誰も厳しいことを言わないチームをつくってしまいます。


本当に欲しいのは「安全」ではなく、「学習できる状態」

本書で特にマネジメント層に見てほしいのが、心理的安全性と責任の高さを組み合わせた4象限です。
心理的安全性が低く、責任も低い状態は「無関心」。
安全性だけ高く、責任が低ければ「快適」。
責任は高いが安全性が低ければ「不安」。
そして、
心理的安全性も、責任も高い状態が「学習」
です。
ここは非常に重要です。
つまり目指すのは、
「安心できる職場」
だけではありません。
安心して、
厳しい目標にも挑める。
分からないことを聞ける。
失敗を共有できる。
反対意見を言える。
フィードバックを受けられる。
そして修正できる。
その状態です。
心理的安全性は目的ではなく、
学習と成果を生み出すための基盤
として見る方が、マネジメントでは分かりやすいと思います。


心理的安全性を「優しさ」の問題にすると、管理職は迷う

現場の管理職が心理的安全性という言葉に戸惑う理由も、ここにあると思います。
部下へ厳しいことを言ったら、安全性が下がるのではないか。
低い評価をつけてはいけないのか。
問題行動を注意してはいけないのか。
高い目標を課すとプレッシャーになるのではないか。
でも、それでは管理職として仕事になりません。
本当に必要なのは、
厳しいことを言わないことではなく、厳しいことを言っても関係が壊れない状態をつくること。
だと思います。
成果が不足しているなら言う。
期待している基準も伝える。
改善を求める。
ただし、
人格を否定しない。
曖昧に攻撃しない。
理由を説明する。
本人の話も聞く。
改善する機会を渡す。
ここまで含めてマネジメントです。


Case OSで見ると、心理的安全性は「情報インフラ」である

今回、私は心理的安全性を少し違う角度から捉えました。
心理的安全性とは、組織の中を重要な情報が流れるためのインフラなのではないか。
という見方です。
会社にはさまざまな情報があります。
顧客の違和感。
現場のミス。
商品の欠陥。
部下の不調。
プロジェクトの遅延。
戦略への疑問。
上司の判断ミス。
こうした情報は、早く共有されるほど修正できます。

しかし、
「言ったら怒られる」
「評価が下がる」
「面倒な人だと思われる」
「どうせ聞いてもらえない」
と思った瞬間、その情報は止まります。
そして経営や管理職には、
加工された「良い情報」だけが上がってくる。
これが一番危ない。
心理的安全性の低い組織の本当の問題は、
社員がつらいことだけではありません。
経営が現実を把握できなくなること
だと思います。


「報告が遅い部下」の問題とは限らない

例えば、部下から悪い報告が遅れてきたとします。
管理職は、
「なぜもっと早く言わなかったの?」
と聞きます。
一見、もっともです。
でも少し掘る必要があります。
過去に悪い報告をしたとき、上司はどう反応したか。
「なんでこんなことになったんだ」
と責めたのか。
問題を相談したら、
「自分で考えて」
と突き放したのか。
反対意見を言った部下を、
「ネガティブだ」
と評価していなかったか。
もしそうなら、
部下が報告しないことには合理性があります。
つまり、
「報告しろ」と言いながら、「報告すると損をする環境」を管理職自身がつくっている。
これでは情報は上がってきません。


管理職が設計すべきは、「発言のコスト」である

私は心理的安全性を管理職向けに一言で表すなら、
「言いにくいことを言うコストを下げること」
だと思います。
反対意見を言ったら嫌われる。
質問したら無能だと思われる。
助けを求めたら評価が下がる。
失敗を報告したら怒鳴られる。
こういう職場では、発言コストが高い。
人間は合理的です。
黙ります。

逆に、
質問しても大丈夫。
反対意見を言っても議論になる。
失敗を報告したら一緒に原因を考える。
困ったら相談できる。
という経験が積み重なると、発言コストが下がります。
心理的安全性は、
雰囲気の問題というより、
組織内コミュニケーションの取引コスト
と考えると、管理職には理解しやすいかもしれません。


まず「部下」ではなく、リーダー自身から始める

本書の構成で面白いのが、第2章です。
心理的安全性というと、
「どうすれば部下が安心して働けるか」
から入りそうです。
しかし本書は、
リーダー自身の心理的安全性
を先に扱います。
これはかなり本質的だと思います。
不安で余裕のない上司。
失敗を恐れている上司。
上から詰められている上司。
自分の評価ばかり気にしている上司。
その人が、
部下には、
「自由に意見を言ってね」
と言っても難しい。
本人が安心できていなければ、
部下の反対意見を「攻撃」と感じる。
質問を「自分への批判」と感じる。
失敗報告を「自分の評価を下げるもの」と感じる。
結果として、無意識に部下を黙らせます。


管理職には「自分をマネジメントする力」が先に必要になる

本書では、リーダー個人の心理的安全性を高める要素として、
パーパス。
セルフアウェアネス。
認知バイアス。
レジリエンス。
を扱っています。
一見、心理的安全性とは別のテーマに見えます。
でもつながっています。
自分は何のためにこの仕事をしているのか。
今、自分は何を感じているのか。
どんな思い込みを持っているのか。
困難な状況からどう立て直すのか。
これが分からない管理職が、
他人の感情や思考を扱うのは難しい。
他人をマネジメントする前に、自分自身をマネジメントできるか。
心理的安全性を考えると、結局ここへ戻ってきます。


1on1をやれば、心理的安全性が上がるわけではない

心理的安全性とセットで導入されがちなのが1on1です。
しかし、
毎週30分予定を入れた。
だから1on1をやっている。
これだけでは意味がありません。
本書でも1on1を単なる面談ではなく、
経験を振り返り、
内省し、
次の行動へつなげる機会として扱っています。
GROWモデル。
経験学習サイクル。
リフレクティブ・サイクル。
といった考え方まで紹介されています。
重要なのは回数ではありません。
その30分で、部下が普段言えないことを言えているか。
です。


上司が話す1on1では、安全性は高まらない

1on1のよくある失敗があります。
上司が8割話す。
部下が2割聞く。
アドバイスする。
指示する。
評価する。
そして最後に、
「何か困っていることある?」
と聞く。
これでは、普通の業務ミーティングとあまり変わりません。
本書では、
傾聴。
問いかけ。
対話。
をかなり細かく扱っています。
特に重要なのは、
相手の答えを聞いて、
すぐ自分の答えを被せないこと。
「だったらこうすれば?」
ではなく、
「なぜそう思ったの?」
ともう一段聞く。
この違いです。


対話とは、「正しい答えを教えること」ではない

管理職になると、経験が増えます。
だから部下の話を聞いている途中で、
「それはこうすればいい」
と答えが見えてしまいます。
そして教えたくなる。
でも、答えを毎回上司が渡していると、
部下は上司の正解を探すようになります。
結果、
心理的安全性は一見高い。
何でも相談してくれる。
でも、
自分では考えない。
これは育成という意味では危険です。
心理的安全性とは、
上司に頼れば何とかしてもらえる状態ではありません。
自分の考えを出せる。
反論もできる。
失敗もできる。
そして自分で修正できる。
そこまで含めた状態だと思います。


フィードバックは「評価」ではなく、「次の行動」をつくる

管理職が苦手としやすいものの一つがフィードバックです。
厳しいことを言うと関係が悪くなる。
だから曖昧になる。
「もう少し頑張ろう」
「次はよろしく」
と終わる。
しかし、それでは本人は何を変えればいいのか分かりません。

本書では、具体的な事実、本人のメッセージ、改善へのリクエスト、その先の成果までを整理する「FIRE」の考え方や、ポジティブ・フィードバックなどが紹介されています。

ここでも本質は、
怒らないこと
ではありません。
人格と行動を分けること。
です。
「あなたはダメだ」
ではなく、
「この行動によって、この問題が起きている」
と伝える。
心理的安全性を守りながら成果責任を求めるには、この区別が不可欠です。


褒めれば心理的安全性が上がる、でもない

逆方向の誤解もあります。
とにかく褒める。
承認する。
ポジティブなことを言う。
本書でも承認の重要性は扱われています。
しかし、
何でも褒めると、
褒めること自体の価値が下がります。
本人も、
「本当にそう思ってる?」
となる。
大切なのは、
具体的に、
何が良かったのか。
どんな行動が成果につながったのか。
どんな変化を見ているのか。
を伝えること。
承認とは、
機嫌を取ることではありません。
「あなたの行動を見ています」という情報を返すこと
だと思います。


心理的安全性には「3つのレベル」がある

本書で実務上かなり使いやすいのが、心理的安全性を三つの影響範囲に分けている点です。
リーダー個人。
リーダーとメンバーの2者間。
職場・チーム全体。
です。
心理的安全性が低いとき、
すべてを「チームの雰囲気」の問題にしてしまうと、打ち手がぼやけます。
本人が余裕を失っているなら、個人レベル。
上司と特定の部下だけ関係が悪いなら、2者間。
会議全体で誰も意見を言わないなら、チームレベル。
問題のレベルが違えば、
打ち手も違います。


「心理的安全性サーベイを取る」だけでは改善しない

心理的安全性を高めようとすると、
アンケートを取る。
スコアを見る。
「うちの部署は3.8でした」
となります。
測定は必要です。
本書にも心理的安全性を確認する質問やセルフチェックがあります。
しかし、Case OSとして重要だと思うのは、
数字を出すことより、「どの層で何が起きているか」を特定すること
です。
管理職本人の余裕がないのか。
上司部下間の信頼がないのか。
チームのルールが悪いのか。
会議の進め方なのか。
評価制度なのか。
この切り分けがなければ、
「心理的安全性を高めましょう」
という抽象的な改善活動になります。


チームの心理的安全性は、「共通目的」から始まる

本書の第4章では、職場・チームレベルへ進みます。
興味深いのは、
心理的安全性を高める方法として、
ただコミュニケーション量を増やすのではなく、
チームのWHYを分かち合う
ところから始めていることです。
誰のために仕事をしているのか。
何を提供するチームなのか。
何を大切にしたいのか。
これが共有されていないと、
意見の違いが、
「あの人とは合わない」
という人間関係の問題になりやすい。
でも共通目的があれば、
「顧客にとってどちらがよいか」
という建設的な対立へ変えられます。


心理的安全性の高いチームほど、対立がなくなるわけではない

むしろ逆です。
本当に心理的安全性が高ければ、
意見は出ます。
反対も出ます。
違和感も言います。
だから、一見すると議論は増えるかもしれません。
でもそれは悪い状態ではない。
問題なのは、
対立が人間関係の対立へ変わること
です。
A案とB案について激しく議論した。
でも終わったら普通に仕事ができる。
これが強いチームです。
意見の違いと、
人間そのものへの否定を分けられる。
心理的安全性があるからこそ、
厳しい議論ができます。


会議で発言がないのは、「意見がない」からとは限らない

管理職として会議をしていると、
「何か意見ある?」
と聞いても誰も話さない。
そして、
「特にないなら、この案で行こう」
となることがあります。
でも、
本当に意見がないのでしょうか。
上司の案だから反対しにくい。
話しても変わらないと思っている。
発言すると仕事が増える。
間違っていたら恥ずかしい。
こうした理由かもしれません。
本書ではファシリテーション、Yes-And、収束段階で反対意見を出すなど、会議で声を引き出す方法も扱っています。
ここは管理職にとってかなり実践的です。
「意見を言っていいよ」
ではなく、
意見が出る会議構造をつくる。
そこまでがマネジメントです。


「発言しない部下」を変える前に、会議の設計を変える

発言しない。
主体性がない。
若手は受け身だ。
そう評価する前に、
会議そのものを見る必要があります。
上司が最初に自分の答えを言っていないか。
反対意見へすぐ反論していないか。
話の長い人だけが得をしていないか。
一度出たアイデアをすぐ評価していないか。
沈黙を待てているか。
これは社員個人の問題ではなく、
場の設計の問題
かもしれません。
ここまで見ると、心理的安全性は「人柄」ではなくマネジメント技術になります。


管理職が最も気をつけるべきは、「自分が正しいとき」かもしれない

私は今回、本書を読みながらここがかなり重要だと思いました。
上司が明らかに間違っている場合、
本人も少しは慎重になります。
問題なのは、
自分が正しいと思っているとき
です。
経験もある。
数字もある。
成功体験もある。
だから、
「このやり方が正しい」
と確信する。
すると部下の違う意見が、
非合理。
経験不足。
理解不足。
に見えてしまいます。
そして本人には、
部下を黙らせている自覚がありません。
だから管理職には、
「自分の答えが正しいか」
だけではなく、
「自分が正しいことによって、他の情報が消えていないか」
を見る必要があります。


優秀な管理職ほど、心理的安全性を下げることがある

これは皮肉ですが、実際に起こります。
判断が速い。
答えを持っている。
頭の回転が速い。
問題解決能力が高い。
そんな上司ほど、
部下が口を挟む余地がなくなる。
会議で、
質問。
回答。
指示。
で全部終わる。
本人は効率的に仕事をしているつもりです。
でもチームでは、
「上司へ聞けば答えが出る」
「考えてもどうせ変わらない」
という学習が進みます。
心理的安全性の本質は、
単に話しやすいことではありません。
自分の意見が、チームの現実へ影響を与えられるという感覚
も重要なのだと思います。


心理的安全性は、管理職の「人柄」に依存させてはいけない

優しい上司なら安全。
怖い上司なら危険。
これだけでは組織として弱い。
上司が変わった瞬間に、職場が全部変わってしまいます。

だから本書ではチームビルディング、VALUE、セキュアカルチャー、ファシリテーション、ストーリーテリングなど、チームとしての仕組みにまで話を進めています。

心理的安全性を、
「あの課長は人柄がいい」
という話で終わらせず、
組織文化・運営ルールへ変える。
ここまでやって初めて持続します。


Case OSで考える「心理的安全性のマネジメントOS」

今回の本を通じて、私は心理的安全性を次のような構造で見たいと思いました。

レイヤー|管理職が見るもの|起きやすい問題

  • 自分|余裕・パーパス・感情・バイアス・回復力|反対意見を脅威として受け取る

  • 2者間|信頼・傾聴・問い・フィードバック・1on1|本音が出ない、相談が遅れる

  • チーム|WHY・VALUE・会議・発言ルール・文化|沈黙、同調、情報の偏り

  • 成果|挑戦・学習・改善・結果|「安全」が目的化する

重要なのは、一番下です。
心理的安全性そのものを高めることが最終目的ではありません。
その結果として、
悪い情報が早く上がる。
新しいアイデアが出る。
失敗から学ぶ。
部下が挑戦する。
チームで問題解決できる。
という成果につながる。
そこまで見なければ、マネジメント施策としては不十分です。


これからの管理職は、「人を動かす人」から「声が出る環境をつくる人」へ

昔の管理職像は、
経験が豊富で、
答えを知っていて、
部下へ指示を出し、
進捗を管理する人
でした。
もちろん今も必要な場面はあります。
でも、仕事が複雑になるほど、
管理職一人が全部の答えを持つことは難しくなります。
顧客に近い人。
技術を知っている人。
若い世代。
異なる専門性を持った人。
それぞれの知識を引き出さなければならない。
すると管理職の仕事は、
自分が答えることから、
「必要な情報と意見が出てくる状態をつくること」
へ少しずつ変わります。
その意味で心理的安全性は、
人事施策ではありません。
マネジメントそのものの能力
なのだと思います。


結論|心理的安全性の高い職場とは、「優しい職場」ではなく「現実を言える職場」である

『マネジメントに役立つ 心理的安全性がよくわかる本』というタイトルどおり、本書は管理職が読むことでかなり実務へつなげやすい一冊だと思いました。

心理的安全性という言葉自体は知っている。
Googleのプロジェクト・アリストテレスも知っている。
1on1もやっている。
それでも、
「具体的に自分は何を変えればいいのか」
まで落ちていない管理職には、特に使いやすい。
なぜなら本書は、
概念。
自己認識。
上司部下関係。
チーム。
会議。
フィードバック。
1on1。
組織文化。
までつなげているからです。
そしてCase OSとして今回一番残ったのは、
心理的安全性を、
「社員が安心するための施策」ではなく、「組織が現実を知るための仕組み」として見ること。
です。
悪い情報が上がる。
反対意見が出る。
失敗を話せる。
分からないと言える。
助けを求められる。
これらは一見、
管理職にとって面倒なことです。
問題が増えたようにも見えます。
でも、本当は逆です。
問題が増えたのではなく、
これまで見えていなかった問題が見えるようになっただけ
かもしれません。
心理的安全性の低い職場では、
問題がないのではありません。
問題が言葉になっていない。
そこが怖い。

強いチームとは、問題のないチームではなく、問題を早く言葉にできるチームなのだと思います。

そして管理職の役割は、
何でも優しく受け止めることではない。
言うべきことは言う。
高い基準も求める。
成果にも責任を持つ。
その一方で、
部下にも、
「それは違うと思います」
と言える余地を残す。
この両方を成立させる。
心理的安全性と責任。
安心と挑戦。
傾聴とフィードバック。
対話と成果。
この両立こそが、現代の管理職に求められるマネジメントなのではないでしょうか。
Case OSとして今回持ち帰りたい問いは、
「部下は自分に本音を言っているか」
だけではありません。

「自分のチームでは、都合の悪い事実ほど早く上がってくる仕組みになっているか。」

です。
ここにYESと言えるチームは、かなり強い。
心理的安全性とは、優しさではなく、
現実から逃げないための組織能力
なのだと思います。
Case OS BOOKS #61


今回紹介した本

広江朋紀
『マネジメントに役立つ 心理的安全性がよくわかる本』


免責事項

本記事は、書籍の内容および筆者のマネジメント・組織開発に関する問題意識をもとに、心理的安全性について一般的に考察することを目的としています。

本文中の「情報インフラ」「発言のコスト」「心理的安全性のマネジメントOS」「組織が現実を知るための仕組み」といった表現は、書籍そのものの用語ではなく、本書の内容をもとにCase OSとして展開した独自の考察を含みます。

また、心理的安全性は、ハラスメント、安全衛生、メンタルヘルス等の法的・医学的問題をそれだけで解決する概念ではありません。個別の問題が生じている場合には、社内の専門部署や適切な専門家への相談も必要です。Amazonのアソシエイトとして、うな重@コンサル×AIは適格販売により収入を得ています。

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