日々俳句鑑賞124 「穭田や雲の茜が水にあり」 森澄雄
少し前まで黄金色に輝き、風にそよいでいた田んぼも、刈取りのあとには雨に濡れ、湖のように水を湛えている。
稲刈りが終わったあと、刈株に伸びてくる細い茎を**穭(ひつぢ)**という。その穭が出た田が穭田で、短い穂を垂れることもある。
その穭田に茜色の夕雲が映り込み、空と地が一つの画のように広がる。平野全体が湖のように広がり、広角で捉えたような空間と色彩の世界――まるでマーク・ロスコの抽象絵画のようだ。
ただ「あり」とあるだけの下五が、この景の存在感を際立たせ、作者の視線は景色に沈潜する。
穭田と茜雲の映り込み、そして水面の静けさ――刈取りの終わった田に、季節の余韻と自然の営みが静かに息づく一句である。
『合本俳句歳時記第五版』(角川書店)より
