見出し画像

マニュアル外注vs内製|500社で見た「どちらが正解か」への答え

「うちはマニュアルくらい、自分たちで作れるから」

マニュアル作成代行という仕事柄、私はこの言葉を初回の打ち合わせで何百回と聞いてきました。以前の記事で、この言葉は間違っていない、と書きました。業務を一番よく知っているのは現場の皆さんですから、内製によるマニュアル作成は当然できるはずです。その考えは、いまも変わっていません。

ただ、あの記事には続きがあります。作れるはずのマニュアルが、なぜか途中で止まる。では、自社はマニュアル作成を内製で進めてよいのか、それとも外注に切り替えるべきなのか。この記事では、その判断材料を提示します。

想定しているのは、マニュアルの整備を任されたものの、社内でやるか外に出すか決めきれないまま、気づけば数ヶ月たっている方です。読み終えたときに、自社の答えが出ている。そんな記事を目指して書きます。

マニュアル作成が止まるのは、能力ではなく構造の問題

前回、マニュアルの内製が止まる典型的なパターンを3つ書きました。担当者が兼務で、マニュアル作成の時間を確保できない。どこまで書くかの基準が決まらないまま、原稿の粒度がばらばらになる。完成イメージが共有されていないので、レビューのたびに方向が変わる。どれも、担当者の能力ではなく体制の問題です。

だからこそ、内製か外注かで迷ったときに見るべきなのは、「うちの社員に書けるか」ではありません。見るべきは、自社がいま、どういう状態にあるかです。この39年、500社以上のマニュアルに関わってきた中で、「この状態になっていたら、外注に切り替えたほうがいい」と言えるタイミングが5つあります。

こうなっていたら外注。5つのタイミング

1. 担当者が決まらないまま、3ヶ月以上たっている

誰がやるかが3ヶ月決まらないのは、人手の問題ではなく優先度の問題です。また、担当者を決めても3ヶ月動いていないとすれば、それは決まっていないのと同じです。優先度は待っていても上がりません。動きが無いということは、何も決まっていないということです。

2. 対象業務の担当者に、退職や異動の予定がある

これだけはすぐに着手する必要があります。その人が去ったあとに残るのは、書きかけの手順書ではなく、誰にも聞けなくなった業務です。失ってから復元する労力は、いま聞き出して書き残す労力の比ではありません。

実は、この5つの中で当社へのお問い合わせが最も多いのが、このケースです。退職を間近に控えた段階で業務の「失伝」の危うさに気付いてご連絡をいただくのですが、残り1ヶ月では間に合わない、という状況がとても多くあります。

3. 同じ質問が、現場で繰り返し出ている

「あれ、どうやるんでしたっけ」が毎日飛び交っているなら、マニュアルがないコストはすでに発生しています。答える側が失う時間は、マニュアル作りを先送りした月数のぶんだけ積み上がっていきます。迷っている期間も、この見えにくいコストは積みあがります。

4. 一度着手したが、止まったまま再開できていない

止まった原因は、ほぼ間違いなく構造にあります。兼務のまま、基準がないまま、同じ体制で再開しても、同じ理由でまた止まります。再開に必要なのは担当者の気合ではなく、体制の変更です。体制を変えられないのであれば、外部に委託することを検討すべきです。

5. 監査・規制対応・拠点展開など、期限が外部要因で決まっている

自分で決めた期限は自分の判断で延ばせますが、外部要因で決まった期限は延ばせません。兼務前提の内製スケジュールは、遅れても誰も困らないことが暗黙の前提となり、遅れがちになってしまいます。結果として、いつまでもマニュアルが出来上がらないという状況になりがちです。

自社はどちらか。4つの質問で確かめる

タイミングに当てはまるかどうか、まだ迷う方のために、判断の順序も用意しました。上から順に答えてみてください。

Q1. マニュアル作成は、動かせない期限として決まっていますか(監査、規制対応、拠点展開、対象業務の担当者の退職日など)

YESなら、外注です。内製できるかどうかを検討する時間そのものが、もうありません。

Q2. 兼務ではない担当者を置けますか

NOなら、外注です。兼務での着手は、先ほどの「止まったまま再開できない」状態への入り口になります。

Q3. 対象業務を知る人は、1年後も社内にいる見込みですか

NOなら、外注です。体制づくりの議論より先に、その人の頭の中を記録に残すことを優先してください。

Q4. 過去にマニュアルを作り、更新まで回せた実績がありますか

NOなら、部分外注という選択肢があります。目次構成と初版づくりは外部に任せて型を固め、更新は自社で回すやり方です。型さえあれば、内製は現実的な選択肢になります。

ここまですべてYESなら、内製で進められます。

ここで、実際にあった例をひとつ書きます。当社にご相談いただいた不動産賃貸業の会社では、外注か内製かを検討した結果、すべてのマニュアルを内製で作るという結論になりました。その3年後、あらためてお問い合わせをいただきました。当時の検討がどうなったかを伺うと、結局何も動かなかった、現場任せになって3年を無駄にした、というお話でした。

内製という結論が間違っていたのではありません。結論を出すことと、作る体制を用意することは、別の仕事です。Q1からQ4は、その体制を用意できるかを確かめる質問だと思ってください。正直に書くと、Q4まですべてYESと答えられる会社は多くありません。内製でうまく回っている会社には共通点があります。作成の時間が業務として正式に確保されていて、書き方のルールが社内にあり、更新する係が決まっている。つまり、内製できるかどうかは意志の問題ではなく、この条件を用意できるかどうかの問題です。

外注しても、依頼側の仕事はゼロにならない

ここまで外注寄りのことを書いてきましたので、マニュアル作成代行会社のポジショントークにならないよう、注意点も正直に書いておきます。

外注しても、依頼側の仕事はゼロになりません。業務の中身を伝えるヒアリングと、出来上がった原稿が正しいかどうかの確認は、社内の方にしかできないからです。

実際に、「丸投げでお願いします」と言われて困った事例があります。マニュアルの一般論にあたる部分は、私たちだけでも書けます。ただ、その会社ならではの個別の業務は、ヒアリングをしないと書けません。ところが、肝心のヒアリングの時間がなかなか取れず、ズルズルと先延ばしになっていく。ようやくヒアリングを行って最初の原稿を作成しても、今度はそのチェックが戻ってこない。外注したはずなのに、時間ばかりが過ぎていく、ということがありました。

外注が引き受けられるのは、作る手間です。何を残すかの判断と、内容の最終確認は、最終的に自社で行うべき内容となります。逆に言えば、それだけを残してあとを任せられるのが外注だ、とも言えます。費用は基本的にマニュアルの分量で決まりますので、判断と確認に割ける時間と見比べて検討してみてください。

先に決めるべきは、「誰が更新し続けるのか」

内製か外注かは、目的ではなく手段の話です。そして、どちらを選んでも変わらない問いがひとつ残ります。「誰が更新し続けるのか」です。

マニュアルは、完成した日がいちばん新しい文書です。業務が変わり、人が入れ替わるたびに古くなっていきます。更新する人が決まっていないマニュアルは、内製で作っても外注で作っても、いずれ使われなくなります。

だから、順番はこうです。まず、「誰が更新し続けるのか」を決める。そのうえで、初版を作り切る条件が社内に揃っているなら内製、揃っていないなら外注。この順番で考えれば、内製か外注かは、悩む問題ではなく決まる問題になります。

答えは、あなたの会社のいまの状態に、もう出ているはずです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

▼ この記事に関連する、実務向けの解説記事
マニュアル作成代行とは?外注するメリット・デメリットを解説

▼ マニュアル作成のご相談
株式会社フィンテックスは、業務マニュアルから取扱説明書・操作マニュアルまで、500社以上の制作を支援してきたマニュアル作成の専門会社です。
マニュアル作成ならフィンテックス



いいなと思ったら応援しよう!