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映画の中の迷車たち ―ボロ車・大衆車、名脇役列伝―

スクリーンの奥で、誰も気にも止めない車がエンジンをかけている。

007のアストン・マーティンでも、デロリアンでも、インターセプターの咆哮でもない。

錆びて、くたびれて、なんなら笑われながら走っている車たち。

でも僕はずっと、そっちが気になっていた。
今日はそういう内容の「車オタク」回です。


■ 水槽みたいな車で、世界は始まった

01 | ウェインズ・ワールド(1992)/ 1976 AMC・ペーサー

「金魚鉢(the fish bowl)」という呼び名でも
知られる“ペーサー”

ガラス面積がやたらデカい。
横から見るとほぼ水槽。
それが1976年型AMCペーサーで、ウェインとガースと仲間たちが乗り込み、
”Bohemian Rhapsody”に合わせてヘドバンしながら夜の郊外を走るシーンは、映画史に残るカーシーンだと思っている——
格好良くも何ともないのに。
車が主役の映画じゃない。でも、ペーサーじゃなかったら成立しなかった。


■ 夜の砂漠に溶けるべき車だった

02 | フロム・ダスク・ティル・ドーン(1996)/ 1968 マーキュリー・クーガー XR-7

コンシールド・ヘッドライトが格好いい!
“タキシードを纏ったマスタング”と評される事も

タランティーノ脚本の逃亡劇。
選んだ車が、1968年のマーキュリー・クーガー XR-7。
渋い。渋すぎる。
犯罪者のくせにセンスが良すぎて笑う。
低く構えたボディ、ロングノーズ——
夜のメキシコ国境に走らせるためだけに存在するような車だ。
トライバルタトゥーの“ジョージ・クルーニー”がハンドル握ってるだけで、反則な訳ですよ。


■ 救急車から霊柩車になった車

03 | ゴーストバスターズ(1984)/ 1959 キャデラック(ECTO-1)

ECTO-1のベースはミラー・メテオ社が
1959 キャデラックに架装した救急車

廃車寸前の1959年型キャデラック。
ミラー・メテオ社が救急車に改造した車体を、レイ・スタンツがローンを組んで買う。
屋根にはごちゃごちゃしたガジェット。
サイレンを鳴らしてニューヨークを走る。
救急車ベースで幽霊をとっ捕まえ、霊柩車と揶揄される——
このセンスに全力で賛成したい。
ECTO-1は「道具」じゃなくて、チームの人格そのものだった。


■ ジム・キャリーより先に化けていた

04 | マスク(1994)/ 1951 スチュードベーカー・チャンピオン

”ブリットノーズ”が個性的。スチュードベーカーは戦後アメリカを代表する自動車メーカー

「チャンピオン」という名前が、まず面白い。
1951年型スチュードベーカー・チャンピオン。流線型の、少しとぼけたフォルム。
それに乗るのがジム・キャリー演じる冴えない男、スタンリー・イプキスだ。
グリーンのマスクをかぶる前から、車の時点ですでに滑稽さが始まっている。
狙ってるのか、たまたまなのか。どっちにしても正解だった。


■ 地味すぎて、逆に怪しい

05 | メン・イン・ブラック(1997)/ 1986 フォード・LTD クラウン・ビクトリア

アメリカ車が最も「アメ車らしさ」を色濃く
残していた時代のフルサイズ・セダン

黒塗りのクラウン・ビクトリア。
「タクシー、もしくは警察車両」の代名詞みたいなやつで、宇宙人捜査をやっている。
ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズが乗り込み、ニューラライザーを振り回しながらニューヨークを走る。
目立たないことが最大の武器——
という設定なのに、どう見ても怪しい。
でもそれが正しい。
あの車以外じゃ、あのコンビは成立しなかった。


■ あのミニより、三輪車のほうが怖かった

06 | ミスター・ビーン(1990〜)/ 1977 ブリティッシュ・レイランド Mini 1000 MkIII

BL製1000 MkIIIは「実用的なヴィンテージ・ミニ」
としてバランスの取れたモデル

(こちらはTVドラマシリーズより)
ビーンのミニは短命だ。
初代オレンジ色の'69年製モーリス Mini MK IIは、“やられ役”の「リライアント・ロビン」とのバトルが見どころだったが、

リライアント・ロビン(三輪車)

物語の最後で事故全損。
二代目のライム色は戦車に踏み潰されてペシャンコ。(ライム色って英国人が一番嫌いな色らしい笑)
英国郊外の灰色の空の下で、ミニは妙に元気だ。
愛され続けたのは、色々と諦めなかったからだと思う。ミニも、ビーンも。


■ バスじゃなくて、ブロンコの話をしよう

07 | スピード(1994)/ 1970 フォード・ブロンコ

アメリカでも日本でも未だ人気絶大な
アーリーブロンコ

あの映画、バスの話だと思われがちだ。
でも序盤、キアヌ・リーブスが運転しているのは1970年型の“アーリー・ブロンコ”
無骨で、四角くて、ハンドルの遊びがやたらありそうな車。
サンドラ・ブロックが乗り込む前の、あの荒削りなシーンが好きだ。
バスより先に走っていた車の話を、もっとしようではないか。


■ 壊れ方が上手い車だけが、コメディに出られる

08 | 裸の銃を持つ男(1988)/ 1988 シボレー・コルシカ/1982 フォード・LTD クラウン・ビクトリア

当時のコンパクトセダン市場で人気を博し、実用的で手頃な価格のファミリーカー“コルシカ”

レスリー・ニールセン演じるフランク・ドレビン刑事は、運転がとにかく危ない。
1988年型シボレー・コルシカ、
1982年型フォード・クラウン・ビクトリア——
どちらも「アメリカの普通の車」の典型だ。
そういう車だからこそ、ぶつけた時のギャグが効く。
特別な車は壊せない。壊してもいい車が、コメディの名脇役になる。
あぶねぇんだよ!ドレビン。
でもありがとう。


■ この一台だけ、笑えない

09 | テルマ&ルイーズ(1991)/ 1966 フォード・サンダーバード・コンバーチブル

“クラシック過ぎず、モダン過ぎない”
絶妙なデザインは、マニアックな人気を誇る

1966年型フォード・サンダーバード・コンバーチブル。美しい車ですよね。
ルーフを開けて、風を受けながら走る。
グランドキャニオンへ向かうシーンの、あの光の色。
スーザン・サランドンとジーナ・デイヴィスの横顔。自由というものが、車の形をしていた。
だが、ラストがちょっとキツイ。
この記事は終始ふざけた感じでいくつもりだったのに、ここだけ少しだけ止まってしまう。……
そういう車が、一台くらいあってもいいと思う。


■ 日本車が、大好きな「おふざけ映画」に混ざり込んでいた

10 | ポリス・アカデミー(1984)/ 1978 ホンダ・シビック

オイルショックの影響もあって、米国での人気に
火がついた初代シビック

よりによって、シビックだ。
1978年型ホンダ・シビック。アメリカの警察コメディに、なぜか日本の大衆車が登場する。
80年代、日本車がアメリカ市場に静かに、でも確実に浸透していた時代の空気が、このワンシーンに詰まっている。
頭のイカれた暴走族頭の“ゼッド”ってキャラが、好きだったなぁ。


映画って、主役だけ観てたらもったいない。

ストーリーの隙間、何気ないシーンの背景——そこに停まっている車を追いかけるだけで、もう一本分くらい楽しめる。

「あの車、なんだろう」と思ったが最後、調べて、動画を漁って、気づいたら深夜になっている。
これが車好き(偏った)の映画の観かただ。

ぜひ一度、お試しあれ。
次回も、スクリーンの隅を一緒に探しましょう。


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