【原点】「黒光る 鋼の鎧 兜虫」|中学生の私が詠んだ一句
このアカウントでは、私の趣味である川柳について発信してきます。
今回は、私が川柳に興味を持ったきっかけについて、実際に作った俳句が生まれる過程を振り返りながらお話したいと思います。
-----
今から25年くらい前に、夏休みの宿題で悩んでいる少年がいました。
学校から出された宿題のうち、ドリル系の宿題は比較的すぐに終わったものの、それとは別に創作系の宿題がありました。
それは、学校が作った募集リストの中から2つ以上選んで応募するというもの。
一つは夏休みの絵を描こう。問題はもう一つを何にするかでした。
感想文や作文みたいな長い文章を書くのは面倒くさいし嫌だな。
お、これは面白そう!
と、見つけたのは俳句の募集要項でした。丁度授業で習って、興味を持っていた分野で、作文みたいに長い文章を考えなくて良い!
というやや短絡的な理由で俳句を考えてみることになったのでした。
さて、今回は俳句なので
季語という季節を表す単語を句のどこかに入れなければいけません。
当時の私の場合、最初にテーマを決めてそこから連想する言葉を考えながら言葉を選ぶという作り方をしていたと思います。
この時、思い描くものはもう決まっていて、この夏家で飼っていたカブトムシについて詠もうとしていました。
この時点で、季語はカブトムシになるはずなので、その点の心配はなさそうです。
まずは玄関にある虫かごの方へ行き、対象であるカブトムシをよく観察しました。黒っぽく重厚感のあるオスのカブトムシは、昆虫ゼリーをひとしきり食べて満足したのか、カゴの中をノシノシと歩いたかと思うと、土の中に吸い込まれていきました。
次にさっき見たカブトムシの様子が
どんな言葉を使えばが伝わるか、フレーズを考えてみました。
黒っぽくて重厚感のある、これをなるべく短い単語で言いたい。
私はよく「言葉の圧縮」と勝手に呼んでいたりしますが、文字数は減らしつつもイメージの解像度はできるだけ上げたい。そこから捻り出した単語が
上の句の「黒光る」 でした。
黒光りするだと長いので、これを少し活用して黒光るとしました。
中の句はノシノシ甲冑を着たカブトムシが歩いている様子を想像して、
「鋼の鎧」 としました。
当初は「鋼の鎧の」 と迷っていたのですが、後に述べる理由から のを除く形としました。
下の句は「カブトムシ」で決まりです。
当時国語の授業で習った体言止めにもなってて強調されて、良いんじゃないかな。
これで、
「黒光る 鋼の鎧の カブトムシ」
となりました。
これでも良いんだけど、もう少しカブトムシの重厚感を出したいな。
カブトムシって漢字で書くとどうなんだっけ?
と調べました。
カブトムシは漢字で書くと、「甲虫」と書くのが一般的のようです。
しかし、もう少し重厚感が欲しい。
鎧、甲冑、鎧兜、…兜!!
そうだ、甲虫 → 兜虫 にしてしまおう。
「黒光る 鋼の鎧の 兜虫」
うん、結構イメージに近くなった!
もう少しだけ重々しくしたいんだけど、何かできないかな?
文字全体を眺めて閃いた。
そうだ、文字数を削ってなるべく漢字ばかりにしよう。
つまり、中の句の
鋼の鎧の → 鋼の鎧
とする。
これで、
「黒光る 鋼の鎧 兜虫」
が完成した。
なるべく仮名を減らしごつい漢字ばかりにして、重厚感を出し、最後に体言止めでカブトムシの存在を強調する。
俳句の方が楽だと思ってたけど、ちゃんと考えると俳句も大変だなとそのとき思ったのでした。
25年経った今でも、私は川柳を作る時に、限られた言葉(制約)の中でどう表現するかを考えています。もしかすると、この時に感じた楽しさが私が川柳を好きになった原点だったのかもしれません。
黒光る 鋼の鎧 兜虫
茶太郎
この一句は思いがけず評価していただき、私にとって忘れられない夏休みの宿題になりました。
あの時に感じた「言葉を選ぶ楽しさ」が、今でも五七五を楽しむ原点になっています。
17音の小さな発見を楽しんでいただけましたら、スキをいただけるとうれしいです。
おまけ(2026.8.12追記)
帰省の際に引っ張り出してきました。


