ななし的名盤解説#8 GO!GO!7188『鬣』


はじめに

 こんにちは。ななしです。前回はジュディマリを紹介しましたが、今回は、GO!GO!7188を紹介したいと思います。昨年25周年で、TikTokが開設されたり、MVのリメイクがなされたりと、ちょくちょくニュースを聴くバンドです。これは再結成の兆しか・・・?。まあ、気長に次のニュースを待ちましょう。生半可に期待して、勝手に損するのは私にとっても、運営側もよろしくないのでね。
 ですが、こうしたムーブがあるのにも関わらず、掘り起こしが全然進んでいないと感じるのは私だけ?昔聴いていた人が、懐かしいとXでつぶやくくらいな気がします。音楽好きからのアプローチが、私の見えている範囲では観測できておりません。そうであるならば、私が記事を一本書こうじゃないかと思いまして、ここに至るわけです。
 前置きが長くなりましたが、それでは解説していきたいと思います。どうぞ!

『鬣』基本情報

 ・リリース:2003/2/26
 ・レーベル:東芝EMI
 ・GO!GO!71883枚目のフルアルバム
 ・12曲入り
  初回盤には浮舟のスペシャルバージョンが
  入っている
 ・「浮舟」はシングルリリースされている。
  また、「種」はシングルリカットされている。
 ・オリコン初週55位

アルバム全体解説

 このアルバムでGO!GO!7188は3枚アルバムをリリースしたことになるわけですが、群を抜いてこのアルバムが私は名盤だと考えております。正直、前の2枚(『蛇足歩行』と『魚磔』)は集中力を欠く瞬間がところどころにあります。そもそも癖が強いバンドなので、ハマらない曲はとことんハマらない。

 では、なぜこのアルバムが名盤なのか。それはこのアルバムが持つ緊張感にあります。それまでのロック+和のサウンドに、センチメンタルな歌詞が見事に調和しています。このサウンドと歌詞の2要素がアルバム一本通して見られ、集中力を途切れさせない効果があると考えています。

 GO!GO!7188はメジャーデビュー以降、順調に人気を重ねて行きました。特に、「こいのうた」や「C7」、そして本アルバムに収録されている「浮舟」はヒット曲となり、10〜20代の心を掴んできたわけです。しかしながら、このアルバムは非常にセンチメンタルで不安定です。歌詞や曲を見ても別れや後悔、先の見えない未来など暗い事象の事ばっかり歌っています。1枚目も2枚目もここまで暗くはありませんでした。

 全体的に嫉妬や妬み、不安感、焦燥感を感じる内容になっています。ギターは鋭いし、ベースはゴリゴリなっていて不安を増幅させできます。また、ドラムは何かが迫ってくるような迫力のあるドラムになっており、緊迫感があります。そして、全体を通じて和を感じるテイストになっています。

 和のテイストについては、これまでのキャリアからもわかる通りGO!GO!の一つの核になっています。しかしながらこの時期、和とロックの融合がさらに進みました。
 2002年に「虎の穴」というカバーアルバムをリリースしています。このカバーアルバムに衆力されている曲は70年代の歌謡曲やフォークなどで、それにロックやパンクなどの成分を加えて編集し直した物が収録されています。
 こうした経験を踏まえ、2枚目までのアルバムよりも深く歌謡曲とロックの融合がなされるようになりました。

 また、このアルバムを聴く限り、作家の精神状況と、社会情勢がうまく合致したように思います。2003年の初頭ですからね。時事ドットコムを見てみますと、2002年はデフレ不況や政治腐敗、イラク情勢の悪化(2003年にはイラク戦争へ)と明るいニュースが少ないようです。もちろん北朝鮮問題等で実績はあったようですが。少なくとも、鬱屈とした情勢ではあったようです。
 これまでのヒットソングである「こいのうた」や「C7」はまだ前を向けそうな感じ。しかしながら「浮雲」は冷たく諦めて何も見えていないような感じを覚えます。
 こうした暗い世の中を生きる若者の感情をうまく二人が表現したことで、当時の若者の心をわしづかみにしたのだと思われます。ここに、GO!GO!7188は、若者の感性を鋭く表現するパンクロックバンドとして名を馳せました。

 今、正直GO!GO!7188は、それほど聴かれているバンドではありません。2012年に解散してしまい、公式からの動きはあるものの、若者からGO!GO!7188を聴いているという声は全くと言っていいほど聞きません。しかしながら、今の暗い世相や、若者の鬱屈とした先の見えない閉塞感はこのアルバムに詰まっていると考えます。そのため、若者の気持ちをすでに代弁してくれているという点から、今リバイバルが起きてもおかしくはないかと思われます。

個別楽曲解説

・浮舟


 8枚目シングル。スマッシュヒットしたようで、GO!GO!7188の代表曲の一つ。琴みたいなギターの音や、捻りあげるような歌声で和の要素を表現しつつ、聴き手に不安感を催させられ、この不安は、ベースやドラムなどの低音の楽器によりさらに増幅させられます。歌詞は恋人との突然の別れを歌っており、季節が過ぎ去ろうとも、ずっと元恋人のことを思っており、現実に生活が追いつかない様子を表現しています。
 私的に、「般若」のお面のような顔つきで歌っているような気がします。般若は女性の怒りや嫉妬、悲しみで狂った表情をしていますが、別れの「なぜ?」が強く響いてくる感覚があります。イントロの20秒も、普通の人を寄せ付けない音像で、不穏感ましまし。

 この曲を聴いて貰えばわかりますが、間違いなく和製のロックである。パンクに分類されるバンドであるが、パンクの要素も感じつつ、オルタナティブの要素も感じるバンドで、まさに唯一無二だと思う。無駄な瞬間ひとつとして存在せず、フルスロットルで盛り上がることができる。ここまで不安定な曲なのに、よくずっと盛り上がることができるなと思います。 

・ないものねだり


 歌詞がとにかく若者の不満という感じがします。

どんなに金があっても 欲しいものはつきない
どんなに恵まれてても 不満はつきない
もう何も欲しいとは思わない様に
目も口も耳もふさぎたい

ないものねだり/GO!GO!7188

 回りくどくなく、ストレートに思っていることを歌詞にしています。こうした分かりやすいわがままは今の高校生や、大学生に良くあてはまる部分があるのではないでしょうか。SNSの発達によってみんな一律のきれいさや楽しさを追い求めるような、生徒・学生のわがままと、本当はわがままだとわかっている嫌悪感に苛まれている感覚が良くあらわれていると思います。20年前に書かれた歌詞だとは思えない程、現代社会をよく表していると思います。

 曲調は非常にダウナーな感じです。上物のギターがやたら重いサウンドで、ベースもドラムもゴリゴリなっているので、若干退屈さを感じるかもしれません。しかし、退屈なのはこの歌詞に登場する人の感情が漏れてしまっているから退屈なのです。今の生活に不満がない人はあまりピンと来ないかもしれませんが、今の社会につかれている人、特に生徒・学生なら鬱屈としたこの曲に共感を持つことでしょう。

・月と甲羅


 このアルバムの中で特に聴きやすい曲だと思います。雨が降る夜、ベッドの中で包まって聴くのに似合いそうな楽曲です。
 非常に悲痛な声が聞こえてきます。諦めの中で、それでも前に進んでいくという力強さも感じます。

 邪魔なもの:涙、嘘、都会、吐息。
 少しだけ好きになれたもの:ベース、夜、サッカー中継、昨日の電話
多分、失恋をしたんでしょうね。典型的に沈んでしまっています。夜は寂しいですからね。次の朝を待つ時間も嫌ですし。こうした切実な生活上の悩みはどちらかというと大人の恋愛ではなく、学生の恋愛という感じがします。大人であれば、子どもの恋愛の手続きを踏まないこともあるのでね。
 失恋をした主人公が、月の出ている夜に、ベッドに包まりながら、考え事をしている様子が甲羅に見えたんでしょう。そういう夜はだれにでもあります。

 

・ポラロイド

 まさに歌謡曲+ロックの和製サウンドです。3ピースなのに音が全くスカスカではないです。既存の歌謡曲をロック仕立てにしたかのようである。イエモンよりも歌謡成分が強い気すらしてくる。軽快なアメリカ仕込みのギターサウンドが気持ちよいです。

 一枚目のアルバムに「西部」という曲があります。この曲はアメリカ、ウエスタン文化っぽさがありますが、この「ポラロイド」は日本のウエスタン文化に仕立ててあります。アメリカの西部地域は徐々に開拓されていったので都市の文化よりも、その土地ならではの文化がウエスタンという認識を私は持っています。まあ、ロードサイドの文化ということです。

 この曲は、歌詞に「指宿」、「霧島」と鹿児島の地名が出てきますが、それはユウとアッコが鹿児島出身だからでしょう。これは、文章以上の意味はありませんが、非常に田舎っぽいサウンドと歌詞になっているため、日本のロードサイドを感じる曲です。アメリカのロック+日本の風景・和を足した日本人にしかできない歌謡ロックとして非常に優れていると考えます。

おわりに

 今回は、GO!GO!7188『鬣』を紹介いたしました。TikTokの開設や、アナログ盤のリリースによって、にわかに注目度が上がっているGO!GO!7188ですが、より大きいリバイバルが起きてもおかしくないバンドだと考えています。そのため、今日はGO!GO!7188を取り上げました。ロックと和の融合、不安定な心模様をうまく表現した彼女らの音楽に比肩する存在はいないと考えています。ぜひ興味を持った、あるいは久しぶりに聴いてみたいなど、この記事をきっかけに、GO!GO!7188のぬかるみにハマってくれれば幸いです。それでは次回の記事でお会いしましょう。






いいなと思ったら応援しよう!