管理職のための雑談マニュアル
まえがき
こんにちは、che bunbun(チェ・ブンブン)です。
2025年8月から管理職となり、プロジェクトマネージャとして約20人近い部下のマネジメントを行うこととなりました。プロジェクトマネージャ経験としては1社目に勤めていた際、官公庁向け媒体変換業務の管理を行っていました。月末に各都道府県に機密情報が入ったCDとパスワードを送付するシステムを扱っており、繁忙期には2週間で10万枚近くを納品していました。その時は、システム構築から部材管理、WBS/ガントチャートを用いた監査準備および対応にシフト作成と多岐に渡る業務を行いました。
久しぶりのプロジェクトマネージャ業務であり、緊張はしたものの数ヶ月やって手応えを感じるようになりました。元々、わたしはコミュ障陰キャなので、人と話すのは好きではなく、家に引き篭もって動画を作ったり文章を書いていたりする方が好きな性格なのですが、意外と管理職の方が向いているんだなと最近感じています。周りのマネージャは「管理職はダルい」と愚痴を溢しており、何人かは管理職から作業者に戻りたいと交渉しているのですが、わたしの場合、管理職が楽しすぎて全く苦ではないことからもしかすると天職なのかもしれません。
部下や上司、ステークホルダーとの関係も良好で、最近は何も言わなくても情報が自分のところに集まり、単純作業系は逐一指示を出さずともやっていただけ、欲しいタイミングで報告・連絡・相談をいただける環境が整いました。他の会社の管理職と比べると緩い部分もあり、たまたま人間関係がマッチしたから上手くいっているのかもしれません。
とはいっても、ここ1年でプロジェクトマネージャとしてのトーク術を体系化できたと思うので共有していきます。最初に結論からいえば、「成果を出していることは前提として、適切に仕事以外の雑談を挟むことで重要な情報を引き出し、その手札で仕事をすることが管理職の仕事」であることと考えました。ビジネス書ではよく心理的安全性をどのように確保するかが議題になりますが、自分の理論として深化させた結果がこれであり、現状上手くいっています。今回は有料ビジネス記事として、私がプロジェクトマネージャとして実践していることをトーク面を中心に語っていきます。
↑好評だったので、動画版も作りました。通勤時の聞き流しにどうぞ。
【本記事の対象者】
本記事は次のような方の参考になるかと思います。
・プロジェクトマネージャとして部下や上司、ステークホルダーとのコミュニケーションに悩んでいる方
・雑談の仕方を学びたい方
・土地勘のないジャンルでのトークにおいてどのように反応したらよいか分からない方
0.che bunbunの担当プロジェクト
まず、che bunbunが現在どのようなプロジェクトに携わっているのかを守秘義務に抵触しない範囲で書いていきます。わたしは、2025年8月から運用監視部のプロジェクトマネージャに就任しました。この部署はサポートデスク部とモニタリング部に分かれております。モニタリング部は24時間365日稼働となっており、シフト2交代制で運用されています。プロジェクトマネージャは責任者が1名/副責任者1名/管理者4人体制となっており、副責任者と管理者は夜勤帯におけるメンバーの仕事を監視していく。メンバーは約20名となっています。
基本的に仕事内容はシンプルであり、余裕があるため、メンバーは暇を持て余していたりします。資格試験等の勉強は、やるべきことをやっていれば許容となっています。ただし、1週間に1回ペースで起きるイレギュラーや障害発生時には、迅速かつ適切に行動する必要があります。適切な対応を行わなかった場合、インシデント報告書を提出したり謝罪する必要が出てきて、部としての評価も下がるかつ、下手すればニュース沙汰になってしまうので緊張感があります。
雰囲気としては最近Netflixで配信されている『ハウス・オブ・ダイナマイト』のようなピリついた対応が時折求められます。
わたしのメイン業務は、マニュアルやシフトなどといった文書作成がメインとなっております。また、いずれ副責任者になる可能性があるため、様々な障害やイレギュラーに対するアクションを頭に入れたり、ステークホルダーとの調整などといった板挟み業務のキャッチアップがあります。特に来年、部署が引っ越しとなり、システムの一部が変わったりするので、責任者が作成したマネージャ業務一覧を基に自走できるレベル、あるいは人に教えられるレベルにまで成長する必要があります。
1.管理職として動く前に整えておくべきこと
第1章では、「管理職として動く前に整えておくべきこと」について語っていきます。プロジェクトマネージャとして雑談力は重要であると思っているのですが、そもそもプロジェクトマネージャとしてある程度仕事ができ、チームからの信頼を集めていなければ「ただの話好きなおじさん」としてウザがられるだけです。別に完璧である必要はありません。「釣りバカ日誌」の浜崎伝助のように、肝心な時に仕事に貢献できる状態であれば大体のことは上手くいきます。なんだったら、ある程度抜けはあるけれども、責任を取ってくれたり、仕事を良い方向へ転がしてくれる認識をメンバーに与えられ、「che bunbunさんのことだからな」みたいな感じで許される環境を作れさえすれば、敬語が崩壊していたり、多少のミスがあったとしてもチームによるフォローでプロジェクトは成功となるのです。まず、この環境作りを行いましょう。
1.1.最初の2ヶ月で仕事をマスターせよ
さて、新しい部署にアサインされてまず行うことは2ヶ月で仕事をマスターすることです。すべての仕事において最も鬼門である一方、ここを乗り越えられるかどうかが大事となります。仕事は人間関係が9割です。どんなに多忙でも人間関係が良ければ続けられるし、最悪であれば長くは続かないことでしょう。最初の2ヶ月で仕事を覚え、3ヶ月目に自走できることを証明できれば、放置されるようになります。一番最悪なのは、ミスが多いが故に先輩や上司からマイクロマネジメントされることです。マイクロマネジメントはやられる方もやる方もストレスが溜まり、人間関係を悪化させる要因となります。わたしもマイクロマネジメントされた経験があり、その時はタイピングの仕方やメールの細かすぎるてにをはまで管理されてストレスフルでした。本質的指摘ではないため苦痛だったのです。
さて、数か月で仕事をマスターする方法として、「構造」で理解する必要があります。仕事にはマニュアルがあったりするのですが、業務を行う関係で微妙にやり方が変わり、それが口承で伝えられていくことはまあまああります。いちいち、「~の場合はこう動く」といった形で覚えていくと脳内メモリを逼迫し、覚えるべきことが抜け落ちます。また、業務知識が応用できず、イレギュラーが発生したタイミングで慌ててミスを発生させてしまいます。実際にミスが多いメンバーを観察していると、メモは取っているのだが、構造がわかっていないが故にミスを連発していることが大半だったりします。
わたしは、大学数学「群論」「圏論」の本をビジネス書として捉え、この概念を応用しながら仕事のキャッチアップを行っています。群論や圏論は、システムの構造に着目した理論であり、一見すると似たようなものでも構造としては異なっていたり、異なる概念に思えるものも本質としては同じことが掴める学問です。
まず、業務にどのような種類があるのかを体系化する。そして各業務がどのように繋がっているかを理解する。そしてタスクのトリガーと着地を掴む。たとえマニュアルがなくてもプロセスが導出できるよう実践とシミュレーションを繰り返していく。それによりイレギュラーが発生したとしてもやるべきアクションの仮説を立てられ、適切に報告・連絡・相談した上での対応が行えるのです。
前にいた部署で、数学科出身のエンジニアが「仕事は覚えるものではないんですよ、本質が掴めるかだけが重要なんですよ」と語っていたが、それを実践することによって膨大に思えた仕事に対して最低限の記憶で対応できるようになるのです。
1.2.組織としてのやり方をひたすらトレースせよ
中途社員が陥りがちなミスとして、前職のやりかたを導入しようとしてメンバーから嫌われたり、部分最適化に留まってしまうことがある。確かに、仕事によっては自分の経験からして非効率的だったりダサいやり方に思えることがある。しかし、そのような作業にも背景がありやむ得ずそのやり方が取られていたりする。
以前、他部署から送られてくる会計データを専用のExcelマクロにて変換して納品するデータ集計課の運用保守を担当していました。毎月1週間ぐらいかけて様々なマクロを介して資料を作成する業務があったのですが、エンジニアと作業者との間で対立が発生しました。作業者はマクロの中身がわからない不安から手作業でデータ加工することに拘っていた。エンジニアサイドは、このようなチマチマとした作業が面倒であり、ダサいと思っていたので自動化しようとしていたのです。確かに自動化ツールは完成したのだが、手作業でのフローを細かく把握していなかったため、ある月にデータ不整合が発生し作業者からの信頼を失ってしまいました。作業者としては「エンジニアから見下されている」と思われてしまい、その後の年次作業におけるマクロ更改作業に大きな支障を来たすこととなった。
つまり、新しい組織に来たからには業務改善よりもなによりも信頼を獲得することが重要であり、「面倒くさい」といった感覚を殺しひたすら組織としてのやり方をトレースし実績を積むことが重要なのである。組織によっては「素人だから浮かんでくる疑問点を教えてください」と言われるのだが、これも割と罠であり、上手く立ち回らないと物言う素人として煙たがられるので、Excelでメモしておき、3ヶ月目以降に少しずつ改善させていった方がベターである。
1.3.チャットやメールに即反応せよ
「面倒くさい」といった感覚を殺す話でいったら、チャットやメールに対してすぐさま反応した方が良いです。基本的に、マネージャは常にタスクをゼロ近くにしておき、心に余裕を持ったり、やるべきタスクに専念できる状態にしておく必要があります。タスクを迅速に捌けるマネージャは評価されやすいです。また、間違った方向性の是正や冷静な議論を行うチャンスが生まれたりします。
チャットに関しては、休日中でも「承知しました」スタンプを積極的に押すようにしましょう。ヒトによっては休日に仕事をするなんてと思うかもしれませんが、実はチャットやメールを読んでおくことは次に出社した時の初動が早くなるので、結果的にタイムパフォーマンスが良いです。真剣に読む必要はなく、だいたいどんなことを言っているか把握してチャットはスタンプを押し、メールは認識だけしておく程度でよいです。それは、動画編集している合間とか、家で映画を観ている途中にサクッとやる感覚で良いので実はそこまで時間は取られません。
ある程度、休日のチャットスタンプ推しを徹底しているとボスも「こいつはちゃんと仕事している」と錯覚するので、裁量が与えられ放置されやすくなります。
1.4.トークのプロトコルを合わせよ
よく、上司や部下に説明をしていて「キミの話はわかりにくい」と言われたり、通じていないなと思ったことはないでしょうか?論理的に話しているつもりが相手にとっては理解できないケースは仕事において多々あります。厄介なことに同じ日本語を使っているからなぜ話が通じないのか悩みやすい。しかし、ソシュールにおけるシニフィエ/シニフィアンの関係に近いと考えるとわかる。
言語には多くの単語があり、それが体系を成す。そのため、日本語と英語のように体系が異なる場合、ひとつの単語である領域を示してはいるものの完全に一致することはなかったりする。
そのため、相手毎にどのようなロジックで話しているのか、使用している単語の定義はなんなのかを分析し、プロトコルを合わせて話す必要がある。わたしは以前、チャットで報告/連絡/相談を行った際に箇条書きをメインとしていた。しかし、上司からは「なにが言いたいのかわからない」とよく言われていた。丁寧に項目分けして書いているのになぜだろう、それは読む努力をしていないからではと思ったのだが、その人は箇条書きよりも文章の方が頭に入ってきやすい方であった。また、文章より会話の方が理解しやすい方であった。このように、同じ日本語でもどのような言語を体系で話しているのかを意識しなければコミュニケーションコストの高い面倒な人として煙たがられます。
コミュニケーションを言語学の面からメタ的に勉強したいのであれば町田健「ソシュールと言語学」を読むことをオススメします。
1.5.シミュレーションと質問のサイクルを回そう
よく、新しい組織に入った際にオンボーディングプログラムの中で「わからないことがあったら質問してね」と言われる。しかし、「質問する」ことはとても難しい。わからないことがわからず言語化できないから。勇気を振り絞って質問をしても「そんなこともわからないの?」と言われたり「ちゃんと考えた?」と怒られたりする。ではどのように質問したらよいのでしょうか?
一番うまくいく方法として、一度マニュアルに沿ってシミュレーションしておきます。そして、シミュレーションする中で自分の言葉に落とし込めなかった部分を確認します。また、シミュレーションした結果が合っているか先輩や上司に時間をいただきレビューしていただきます。
この際に重要なのは、枕詞を使うことです。
「このやり方で合っているか確認したいです。」
「以前いた会社で失敗したことがあるので、念のため認識合わせさせてください。」
「自分を信用していないのでレビューをお願いしたいです。」
といった言葉を使いつつ、自分で一度検討したことを提示しながら確認を行ってください。ここで大事なのは、実務でその事象が起きる前にこのフィードバック工程を踏んでおくことです。
先日、夜勤帯でオペレータから「取得できているはずの映像が取れていません」と報告がありました。調査したところ、映像管理を行っているPCのアプリが強制終了していたことがわかりました。マニュアルでは「管理者判断のもとPCを再起動する」と書いてあり、やり方もイメージがついていました。しかし、初めてやる作業だったので念のため認識に齟齬がないか責任者に電話しました。責任者からは「不安なことがあったら深夜でも電話をかけてください」と言われていたからです。しかし、この状況で責任者に電話をするのは誤っていました。
「それって、マニュアルに従ってやるだけだよね。そんなので電話しないでほしい。ここで電話するのは、事前に不安を解消していなかったことだよね。マネージャとしてよくないですね。」
と厳しいお言葉をいただきました。
そのため、それ以降は空き時間があれば、イレギュラーや障害発生時、自分が休んでいた時にあった対応を確認し、自分だったらどうするかをシミュレーションし必要に応じて責任者やメンバーに質問するようにしました。
その結果、別の日に発生したインシデントの対応で高く評価されました。前日の夜勤帯の方がイレギュラー対応を行いメールを送付していたのですが、とある対応に対して「今回は対応なし」と書いてクローズしていました。マニュアルには、ケースごとに対応有無が明記されていたのですが、その日の管理者が仮眠明けで寝ぼけていたこともあり、表を誤読し「対応しなくてよい」と作業者に指示していました。
これに気づいたのは翌夜勤帯の深夜1時。責任者に電話をするかどうか悩んだのですが、行動指針として「インシデントに関しては即時行動」とあったこと、やるべきことは明確に定まっていたので自分が責任を取る形で、作業者に指示を出して、謝罪メールと共に対応を完了させた。
朝方に責任者へ報告したところ、メールの書き方や細かい行動に関してフィードバックをいただいたものの「いい判断だ」とお褒めの言葉をいただいた。ステークホルダーの方からも「インシデントではあるし報告書は書くけれど、管理者としての仕事をちゃんとやってくれたので評価します」と言われた。やりがいを感じた瞬間であった。
1.6.作業や実績の見える化を徹底しよう
プロジェクトマネージャは何でも屋、雑用係である。細かいタスクが次々と降りかかっていき、それに忙殺される。気が付けば半期の評価時期となり、自分の実績を定量的に提示しなきゃいけない。仕事はしているはずなのに、定量的に証明できるものがないと困ることがある。特に、裁量が任されている状況だと、責任者や人事は実際の作業を把握しておらず評価しにくい部分がある。このような場合に明確に実績を提示できる環境を作っておくことが重要です。
わたしの場合、誰でも閲覧可能な個人フォルダに以下のようなシートを作っている。
【作っているシート】
・実績シート
・WBS
・イレギュラー対応リスト
・業務理解リスト
【実績シート項目例】
▷日付:対応した日を記入
▷概要:どんな対応を行ったかを記入
▷対象:対象となったファイルやシート名を記入
▷効果:マクロ改修の場合、どれぐらい作業スピードが向上したのか、テスト結果を記入。また、マニュアル改修の場合は、どのようなリスクが改善されたのかを記入。備考に書くでも良い。
▷備考:補足があれば記入

※データ集計課にいた時の頃に
作っていたものを抽象化した。
今期の目標としてマニュアルや議事録などといった文章作成の件数を入れているので、対応した文章作成の実績をデータベースとして実績シートにて管理している。また、いつでも業務進捗が提示できるように、WBSを作っておりタスクの認識合わせを行う際にいつでも魅せられる状況にしている。また、イレギュラー対応のリストでミスや行動の振り返りを行っている。責任者の目標として管理者の業務遂行レベルを副責任者レベルにすることが挙げられているので、マネージャ業務一覧を加工し、自分の現状のステータスを提示できるようにした。それを基にレクチャーや今後のタスク相談を行うことで責任者からの信頼獲得に努めています。
1.7.ナンバー2との関係に注意せよ
わたしは経験上「ナンバー2」から嫌われる。発生確率は100%であり、部下や社長クラスからは好かれがちなのだが、管理職系のナンバー2からはとにかく嫌われる。恐らく個性が強すぎて、空間が乗っ取られるといった不安から来るのでろう。そのため、ナンバー2は板挟みの中で仕事をする。嫉妬深い人も多かったりするので要注意だ。そんな話を昔、某アイドルがしていたが真理だと最近は強く思っている。
なので8月にアサインされてからは、徹底的にナンバー2が誰かの把握とナンバー2が好む行為の分析、実践を行った。わたしの場合、責任者と副責任者がナンバー2にあたる。実際、10月頃まではこの二人に警戒されていた。責任者からは「キミは理論で相手を押し込めようとしている」「空気が読めない」と言われ、副責任者からは「敬語が酷いです」と苦言を呈されました。
こうしたフィードバックは貴重な情報です。他の組織にいた時は、そういったフィードバックがなく、いつの間にかマイクロマネジメントで潰しにかかっていたから。言っていただけるだけ、まだ関係性を続けようとする意思があります。そこで、相手が好む間やコミュニケーションを徹底的にトレースしました。
2025年に話題となった小説、村田沙耶香「世界99」では、相手の世界をトレースして行動することによって人生を楽にしようとする人間が描かれていたが、まさにその通りであり、 相手の思考をなぞるような感じで演技をすると受け入れてもらいやすくなります。
ナンバー2から許される存在になると仕事はグッと快適になります。そして、ある程度のミスや行動の乱れがあっても笑いとして昇華されます。今では、うっかり責任者に対して「わたし、心にギャルを飼っているんでね」とアニメキャラ的チャラい言葉で反応してしまっても何も言われることはありません。真面目な副責任者もわたしの行動に笑うようになりました。
「積極的に仕事巻き取ってもらっているし、ちょっと変な人だけどまあいっか。」
みたいに思われているので勝ったようなものです。
2.雑談は情報収集が9割
第2章では、実際にいよいよ本題のプロジェクトマネージャとしての雑談術について語っていきます。雑談ができるレベルまで仕事の環境が整ったらいよいよ雑談をしていくわけだが、雑談は情報収集が9割となっております。相手が好む雑談のネタを仕入れ、瞬発力を高めていく必要があります。相手から「こいつ、話がわかるな」と思われた段階で仕事の話にシフトさせていくことで、表面上見えてこない悩み事や組織での政治関係を教えてもらえるようになります。多くの組織では月一程度1 on 1を行い、そうした情報をキャッチアップするのだが、雑談力を高めることでわざわざ1 on 1の時間を確保せず、任意のタイミングで1 on 1を行うことができます。私の部署ではなぜかずっと責任者は1 on 1をしてこなかったようで、責任者が感じているメンバーや業務の認識と実体が乖離しており、メンバーから不満の声が高まっていたりする。そうした状態でも、この手法を用いて1 on 1を意図的に行っていくことで、メンバーからの不満のサンドバックとして、責任者との議論の手札として組織に貢献することができます。
2.1.メンバーのトークデッキを把握しよう
まず、一番重要なのはメンバーのトークデッキを把握することにある。テレビ文化の消滅、細分化された趣味によって、現代社会は共通の話題を持ちづらくなっています。ゲームやアニメ、アイドルといった10年ぐらい前は社会的地位が低かった趣味も会社で公言できるようになったとはいえ、それぞれのジャンルが細分化されており、内容によっては公言するのが後ろめたかったり、下手に会話で触れられることに嫌悪される方がいたりする。このような難しい局面において、メンバーのトークデッキを正確に把握する必要があります。別にオタクレベルで詳しくある必要はありません。領域を構造化し、メンバーのゾーンを特定し話す要素を揃えておくだけで良いのです。なぜならば、話せる人とわかれば、相手は自ら積極的に話してくれるからです。
ここで、細分化の例を2例以下に示す。
■領域の構造化例①ゲーム
・ソシャゲ
→ブルーアーカイブ
→ウマ娘
→学園アイドルマスター
→パズドラ
・FPS
→コール オブ デューティ
→APEX
→VALORANT
・コンシューマーゲーム
→SILENT HILL f
→カービィのエアライダー
→めっちゃカメレオン
・RTA in Japan
・リーグ・オブ・レジェンド
■領域の構造化例②VTuber
・にじさんじ
→鈴原るる
→ジョー・力一
→ルンルン
→剣持刀也
・ホロライブ
→天音かなた
→白上フブキ
→儒烏風亭らでん
→FUWAMOCO
・ぶいすぽっ!
→千燈ゆうひ
・個人勢
→ぽこピー
→しぐれうい
→静馬レイ
メンバーとの関係性構築初期の段階ではアキネイターのような感覚で関心領域の絞り込みを行いましょう。ただし、この構造化段階で会社に公言しにくい領域を掴んでおくことが重要です。たとえば、ゲームだと「リーグ・オブ・レジェンド」のように一般的に治安の悪いゲームジャンルについては言葉を濁されることが多いです。昔いた会社で趣味の話をした際に、
che bunbun「休日は、何をされているんですか?」
メンバー1「ゲームかなぁ」
che bunbun「どんなゲームやる感じですか?やはり最近だとAPEXとかですかね?」
メンバー1「うーん、リーグ・オブ・レジェンドかな?」
che bunbun「それ、初めて聞くやつです。どんな感じですか?」
この後、相手の顔に陰りがあり会話は続かなかった。触れてほしくない領域に思えた。後に、ぶいすぽっ!所属の千燈ゆうひの配信や神楽めあの配信で「リーグ・オブ・レジェンド」に触れた時、察した。その領域って会社で話しにくいなと。
類似の話でいうとVTuberやアイドルの話は、対象を入念に精査しておく必要があります。10年ぐらい前は宗教、政治、野球の話はしない方がよいといわれていたが、現代日本において宗教はVTuberやアイドルが担っていることが多い。私は熱狂的に推し活をしたことがないのであまりファンダムのことはわからないのですが、朝井リョウ「イン・ザ・メガチャーチ」を読むと、本当に宗教のようになっています。たとえば、最近だとホロライブ所属のVTuber赤井はあとのとある事件をきっかけにホロライブが大荒れとなっている。卒業も増えており、先日、天音かなたが卒業した。今いる組織の部下にホロライブのファン、白上フブキを推されている方がいるのだが、こうした界隈が荒れている状態で触れるのは危険だったりする。ただし、その状態を知っておくことで、その方がミスを連発していたり暗い気分になっていた時にその要因が趣味の部分であるだろうと推察できる。このように構造化した上でアキネイターのようにして、雑談を振り、相手の関心領域を絞り込むことがまず最初のアクションである。
2.2.トークが円滑になる魔法の言葉を使っていこう
先述の通り、どんな話もオタクレベルに詳しくある必要性はない。むしろ、下手に詳しいとマウントになってしまい関係性が悪化する可能性がある。一方で、「VTuberってアニメキャラがYouTuberみたいなことをやるんでしょう?」と雑なラベリング、冷笑っぽく触れるのは心にベルリンの壁が建設されてしまう要因となってしまう。ここでは、トークが円滑になる魔法の言葉を並べていく。ある程度、言葉のレパートリーを増やしておき、間髪入れずにそれを挿入できるようにすると土地勘のない話題、プレイしたことがないゲームの話でも良質なトークとなることでしょう。前提として、どのような領域に対してもポジティブであること、相手が夢中になっていることに対してリスペクトを持つことが大事です。
わたしは、ソシャゲで月に10万も費やしている人に対して価値観が違うし、そういった話を聞いてもプレイすることはないなと思う。だが、会話の時は嫌な顔ひとつせず、マクロ化したフレーズで会話をしています。その時に、こんな感じで話してます。
「わたし、ゲームはもうやらなくなってしまったんですよね。体力がもたなくて。VTuberの配信で知っているだけのエアプなんですよ。ゲーム業界にもうしわけないから年に2本ぐらいはSTEAMで買ってやっているぐらいです。月、どれくらい課金しているんですか?凄いですね、集中力エグいっすね。」
わたしはゲームに関しては配信やRTA in Japanの動画で履修しているので、ストーリーやキャラクター、現在行われているイベントに関してはある程度話せる。だが体力のなさからできなくて、エアプ勢である罪を背負っていることを提示しながら相手の活動を褒めるといったことをしている。
「なにやっているんですか?」
「それはどんなものですか?」
「凄いですよね!」
といった言葉を緩衝材とし、あなたの領域に関心があることを提示。そして、素人として教えてもらう姿勢をみせることで自ずと話してくれます。時には、それについて知っていたとしても、あえて知らないふりをしてその領域について訊いてみるのも手です。それにより、相手がコンテンツに対してどれぐらいの熱量を持っているかが測れます。
2.3.表層/深層を意識した単語のレパートリーを用意しよう
わたしが雑談の時に最も意識しているのは、その領域の表層と深層です。私自身、長いこと映画オタクをしており、様々な映画ファンと話したことがあるのだが、数分話していると「イキッているだけで大したことない」とか「こいつ、めちゃくちゃ詳しいぞ」と相手のレベルがわかってくる。そして、コアな映画ファンだとわかれば深く話したくなるものです。その境界線をメタ的に分析すると、「謙虚だが詳しそう」に魅せることが重要だとわかる。
ではどのようにそれを演出すればよいのでしょう?
ここで重要なのが表層的キーワードと深層的キーワードを持っておくことです。表層的キーワードは、その界隈にとって知っておくべきことです。キャラクター名や独自の専門用語など、その領域で話すために最低限必要な単語です。深層的キーワードは、その領域の中でもマニアックだったり、ちゃんとやっていないと知らない単語を示します。表層的キーワードを出して、相手の出方をうかがいつつ、スッと深層的キーワードを提示すると「こいつ結構知っているじゃん」となって急に饒舌になっていきます。でも、初心者が深層的キーワードを持つのって難しいのではと多くの方は思うでしょう。実は、そこまで難しくありません。2つのテクニックを実践することで深層的キーワードは簡単に掴めます。
まずひとつめは、好きなキャラクター、注目するキャラクターを作っておくことです。ゲームやVTuberなど、今のコンテンツは多くのキャラクターで構成されていることが多いです。そのため、その領域の中で最低でも一人注目キャラを持っておきましょう。たとえば、私の場合、ウマ娘ならマチカネタンホイザ、ブルーアーカイブなら才羽モモイ、学園アイドルマスターなら藤田ことねといった感じでキャラを覚えておき、「確か、~ってキャラいますよね」みたいな形で挿入すると良いでしょう。
ふたつめに、時事ネタと古いネタを持っておくと良いでしょう。時事ネタは、その領域に興味があることを示せます。古いネタは、古参感を醸し出すことができます。たとえば、先日雑談で「幕末志士を観ているんですよ」と話していただいた方がいました。幕末志士は西郷さんがいた時期と卒業した時期で活動形態が大きく変わっています。なので、「西郷さん時代の黒歴史トーク面白かったな、ExLoveのトレーディングカードゲームみたいな布陣とか爆笑しました」みたいな感じで古いネタを拾いつつ、「最近、中岡のVTuber食レポ面白いよね、確か《ゆキノコ》って名前だよね」と時事ネタを話すと話が繋がることでしょう。
2.4.YouTubeを用いてトレンドを把握しよう
現代社会は可処分時間を奪い合う戦国時代である。メンバーすべての趣味領域を実際に触れるのは物理的に不可能です。わたしも趣味活動をする上で、ゲームは基本的にやらないと規定している。では、どのようにして最新情報をキャッチアップすればよいでしょうか。
わたしはYouTubeをフル活用しています。今の時代、ゲームは数多の配信者が実況をしています。なんだったらRTA動画があるので、それで内容を把握しています。VTuberは気になる配信者や時事的な内容を切り抜き動画でキャッチアップし、興味があれば本編を観ることによって深層レベルの情報を効率よく収集しています。
ここで重要なのは、何かしらの形でアウトプットをしておくことが重要です。雑談は瞬発力が重要で、話題に対して間髪入れずに固有名詞を挿入していく必要があります。「えっと~」と考えている暇はないのです。そのため、すぐに単語を引き出せるようにSNSやブログ、紙などに書いて口になじむレベルまで単語を擦り込んでおいてください。実はこれにはもうひとつ効果があります。多くの人はそこまで熱狂的にコンテンツを受容しているわけではありません。たとえば「映画が好きです」と語る人に「最近、何観ましたか?」と訊いても覚えてないと言う方が多いです。ましてやYouTubeを観るのが好きですと語る方に視聴内容を訊いても、チャンネル名までしか言えなかったりします。「えっつバキ童チャンネルご覧になっているんですね。最近公開された石窟クイズ観ました?」と内容まで踏み込んだ話をすると、トークの補助輪的役割を果たせ「そうそうやってたね~この動画観ました?」とトークの流れができてきます。雑談のフォローとして踏み込んだ話をする。それを実現するために、確実なインプットを行いましょう。
ちなみに最近では、あまくだりチャンネルの遊戯王解説動画を積極的に観ることで現代遊戯王のトレンドをキャッチアップしています。高校時代、シンクロ全盛期までしか遊んでいないので、リンク召喚、ペンデュラムなどといった概念は知らないのですがなんとなく今の流れを知っておくことで突発的なトレーディングカードゲームの話題に対応しています。
また、最近では速報チャンネルを活用してアニメやゲームなどのトレンドをキャッチアップしています。このチャンネルはXで話題になっている話を数分で解説しているチャンネルで、通俗でありながらも効率よく最近の流行りを押さえることができます。
2.5.オススメされたものはすぐに触れよう
時として、漫画やアニメをオススメされることがある。オススメされたものはなるべく早く触れておきましょう。わたしの場合、ゲームはしないと話しているが、漫画やアニメは触れるようにしています。わたしの勤務先はシフト制なので、次にその人と出勤が重なる日を把握しておいて、それまでに履修するようにします。全部触れる必要はありません。漫画なら1巻、アニメなら3話程度観ておけば十分です。
最近だと、数名の方に「忘却バッテリー」をオススメされました。本作はアニメ化されているので、通勤電車でアニメ1話観て、「めっちゃ面白かったよ、オススメしてくれてありがとう」と伝えました。
この手法はあらゆる局面で役に立つ。たとえば、取引先の偉い人とサシでランチした際に哲学の話になりました。デリダを始めとする脱構築論や構造主義に関心を持たれていた方だったので、オススメされた「ロラン・バルト映画論集」はもちろん、デリダやソシュールの入門書を読んで、いつでも哲学トークできるようにしました。年配の方は、こうした哲学書を好む傾向があります。そしてそれが実際の仕事に活かされていたりします。他のメンバーや管理者からは「あの人は気難しく厄介だ」と苦言を呈しているのですが、このトークデッキを掴んでいるので、相手の語りのクセに順応することができました。
2.6.学歴トークに気をつけよう
わたしは勉強トークが好きです。プライベートでは周囲に弁護士、気象予報士、世界遺産アカデミー認定講師、美術評論家、映画評論家などと何かを極めた人がたくさんいるので、専門的な話を聞くのが好きです。また、大学時代の研究テーマや卒論テーマを聞くのも好きだったりします。一方で、どの大学を卒業したかは興味なく、人と話すときは大学名伏せた状態で内容だけを尋ねるようにしているのですが、これ自体がかなり危険だということがわかりました。
今まで、大卒インテリ集団に所属していて井の中の蛙だったのですが、社会に出ると意外と大卒は少なかったりします。今いる組織の部下の多くは高卒だったり、そもそも大学を中退していたりする人が多いです。上司は就職氷河期世代だったり、バブル崩壊後のヒリついた日本社会を生き抜いた方だったりします。故に、学に対して強いコンプレックスを持っている方が多かったりします。また、そのコンプレックスから社会人になって勉強しようにも成功体験が少ないから前に進めず挫折していたりします。わたしのように、白昼堂々資格勉強していることを公言し、落ちたとてケロっと報告するような真似は普通はできないのです。
こうした学歴や勉強にまつわる話は、嫉妬を生み出す火種となるので避けた方が良いでしょう。話すとしても、バキ童チャンネルのような俗っぽさを持っておくべきです。
2.7.Xは一般社会ではないことを意識する
Xではよく「ネットミームで話す人は嫌い」といった言説が飛び交う。この本質はX≠般社会なことによる。それは、たとえ弊社のようにネットミームによる会話が許容されているような空間であっても同様である。たとえば、『新劇場版☆ケロロ軍曹 復活して速攻地球滅亡の危機であります!』炎上事件がある。原因は総監督の福田雄一がアニメコンテンツ《ケロロ軍曹》を私物化したことによる。彼はしばしば原作を私物化し、寒いコメディを作ることで映画界隈からはパブリックエネミー扱いされることが多い。わたし自身、『斉木楠雄のΨ難』の映画化で大いに失望して以降、あたりはかなり強い。
しかし、一般社会において割と福田雄一作品は受容されている。そもそも、多くの人にとって映画は「頭を空っぽにして観るもの」といった感覚があり、映画の話でゴダールはもってのほかだがミニシアター系映画の話をしただけでも「わたしにはちょっとわからない」と壁を置かれてしまう世界。故にうっかり「福田雄一ってアレだよね」と嘲笑しようものなら、その空間は絶対零度にまで凍てつくことであろう。あくまで職場は仕事をする場に過ぎないのでXでのノリは持ち込むべきではないし、特にネガティブなノリを持ち込んで良いことはありません。
2.8.身バレしないためのフレーズを作っておこう
わたしはサラリーマンをしながらプライベートで映画批評をしたりVTuberとして活動しているのですが、それは一切会社に公言していません。昔いた会社で、SNSを明かしていたのですが、仕事に追い込まれた際に心の逃げ場がなくなったので、その反省から会社とプライベートでは完全に分けるようにしています。エピソードトークを無数に持っているため、身バレしないように話を持っていくのですが、時折「ブンブンさんって配信やらないんですか?向いていると思いますよ」と言われて焦ることがあります。そうした身バレしそうになった時に切り抜けるフレーズを持っておくとよいでしょう。
もし、このように言われた際には
「配信者ってすごいですよね、ゲームやりながらコメント拾うんでしょ?シングルタスクマンな私にはできませんよ。あなたはやっているんですか?」
と自分には才能ないアピールしながら相手に逆質問しましょう。ここで注意すべきは、決して相手のアカウントを特定するような感じにしないことです。わたしは鉄則として、メンバーのSNSアカウントを特定しようとしないを挙げています。それは自分が会社にSNSアカウントを開示したくないからです。やるとしてもLINEだけに留めており、LINEは本名で登録しています。それを徹底することで、相手に安心感を与えることができます。
2.9.雑談の練習場としてBARを活用しよう
たまに、人から「どうすればブンブンさんのように雑談上手くなれるんですか?」と相談を受けることがある。その際にオススメしているのが「BARの活用」です。それも行ったことがないBARへ行くことを推奨しています。
BARはお酒を呑む場所以上に会話の勉強になる場所。バーテンダーが他のお客さんとどんな会話をしているのか?カップルやサラリーマン同士のノッている会話を聴くことで自分の手札が増えます。また、20分ぐらいひとりでいるとバーテンダーが語り掛けてきます。この時が練習のチャンスです。他愛もない天気や訪れたきっかけから始まり、好きな酒の話へ繋げ、互いの趣味トークへと繋げられるかまずは試してみましょう。バーテンダーと聞けばトークのプロといったイメージがありますが、意外とバーテンダーもお客さんと話すときは緊張していますし、己のトークデッキの弱さに悩んでいたりします。要は同じ人間なのです。互いにバイブスが上がる落としどころを見つけていく作業を通じて雑談力を高めていきましょう。
ただし、バーテンダーを独り占めしたり自分の専門についてベラベラと語るのはNGです。他にもお客さんがいるし、バーテンダーからしても拷問の時間となってしまうからです。先日、とあるバーへ訪れたらオペラ好きなおじさんが延々と女性のバーテンダーにパガニーニを聴いた方が良いといったマンスプレイニングをしていて不快な気持ちになりました。しかも、話を横で聞く限り固有名詞を連呼しているだけで、どう面白いのかといったロジックが全くなく退屈極まりないトークだなと思いました(無論、ロジック全開で話すのも良くないが)。
3.業務改善としての雑談の活用法
第3章では、実際に雑談をどのように業務改善に活用していくのか、さらに踏み込んだ雑談をする際の注意点について書いていく。これを実践することによってあなたも雑談マスターだ。
3.1.雑談を使うタイミング
まず、雑談をするタイミングです。わたしの場合、夜勤帯で1対1になるタイミングでおこなっています。タバコを吸う人なら喫煙タイムで誰かと一緒になったタイミングが良いでしょう。関係性を向上するだけならエレベーターの中の刹那な時間も狙い目でしょう。目的は雑談を通して仕事の悩みや社内の政治関係を把握することです。できるだけ1対1になる瞬間を狙いましょう。複数人になるとどうしてもそこにいない人の悪口で盛り上がってしまい、確かに社内政治はわかるけれども建設的な話だったり、本質的問題が掴みにくくなります。
1対1になったら、その人が好きな領域に対して表層的な質問から入ります。この時、「最近どうですか?」と漠然とした質問をするのは悪手です。誰に対しても使えるフレーズではなく、その人にだけ使えるフレーズを用いることで「この人、自分のこと気にしてくれるんだ」と思わせることができます。
たとえば、「最近はAPEXやっているんですか、なんかバージョンアップしてゲーム性変わったとか?」みたいな感じで、相手が話しやすい道を作ってあげます。一通り相手がその領域について話し終わったところで、
「ところで、最近仕事で困っていることない?マネージャとして働きやすい環境作りたいからさ。」
と仕事の話に持っていくと自然に悩みを引き出せます。
3.2.センシティブな話題の取り扱い
親密な関係になってくると、センシティブな話題を話してくれることがあります。具体的には「転職」である。これに関しては、慎重に取り扱う必要があります。当然、責任者にとか他のメンバーには伝えてはいけません。しかし、MG層やリーダー格など、その人が抜けることで業務に支障が来たす場合はリスクとして他の管理者に情報共有する必要があります。また放置した場合、メンバー間の人間関係に悪影響を与える事象は責任者に伝える必要があります。
例えば、作業者Aが「Bさん、ここ数か月土日休みのシフトが多い気がする。希望休出し過ぎなのでは?」と苦言を呈されていた。実際にシフトを組むときには気が付かなかったのだが、Bさんは夜勤希望や明け休みの希望を巧妙に織り交ぜ、土日が休みになるように調整していたことが発覚した。これは来月以降もやる可能性があり、管理者クラスのメンバーや責任者が気づかずにGOサインを出すリスクとなっていたため、責任者へ情報共有し次月以降のシフト作成における注意事項とした。
メンバーからもらう情報の中でもこのようなセンシティブな話題は誰がどこまで知っているかを把握し、適切に捌くことで信頼に繋がってきます。
3.3.スマホ操作しているメンバーの背後に立つな
先述の通り、わたしは会社で身バレしないようにしている。同じように身バレしないように勤務されているメンバーがいると想定して気を付けていることがあります。それは、「スマホ操作をしているメンバーの背後に立たない」ことです。休憩中、メンバーはスマホ操作をしています。XやInstagramをしていたりするのですが、その背後に立ちうっかりアカウント名を知ってしまうことがないようにします。
意外と人のスマホ画面は細かく見えるものです。以前、映画祭の会場で上映までワクワクしながら待っていたところ、明らかに斜め前の人がわたしのFilmarksレビューを読んでいるのが見えてしまっていたことがありました。企業勢VTuberは電車の中でSNSを開かぬよう教育されていると聞いたことがあるのですが、割と身バレしています。電車内やスタバでPC広げて作業することがコンプライアンス的に情報漏洩リスクがあるため、最近では禁止されているが、スマホ操作も十分危ないのです。だからメンバーへの配慮としてスマホ操作している人の背後に立たないし、自分自身も背後に人がいないことを確認してスマホを使います。
3.4.相手のロジックを踏まえた上でレクチャー/フィードバックをせよ
ここまで、雑談をしながらメンバーとの関係性を構築していくと自ずとメンバーの思考回路が見えてきます。それをレクチャーやフィードバックに応用しましょう。この手法はミスが多いメンバーに対して絶大な威力を発揮します。会話のキャッチボールに瞬発力がないメンバーは、イレギュラー発生時に焦ってミスすることが多かったりします。なぜならば、事前に様々なトークパターンをシミュレーションしておらずその場で考えているのでラグが発生してしまうからです。それは仕事に置き換えると、イレギュラーをあまり想定していない方と推察できます。
なので、イレギュラーが発生した時はそばにつきます。ただ、これはマイクロマネジメントの側面が強く、委縮してミスを連発する可能性があるので、「安心しろ、うちが来た。最終的に私が責任を取るのでゆっくり確実にやろう。別に他のタスクは巻き取るんで。」みたいな形でフォローに入りましょう。
固有名詞が出てこない人は、メモを取っているけれども構造的に理解するのが苦手でありマニュアルを読んでも実際の動きがイメージできなかったりします。そういう時は定期的に実技レベルの訓練を行います。その時、相手の自尊心を削らないよう配慮します。
「俺もマニュアル読めない人だし、俺も勉強になるから一緒にゲーム感覚でシミュレーションしないか?」
といった形でレクチャーをしていきます。
3.5.作業者にはマネージャの仕事を魅せよう
さて、最後に意外と重要なことを話します。それは「マネージャの仕事」を雑談の中で入れておくことです。マネージャは想像以上に多くの仕事があります。ステークホルダーとの調整や細かい文書作成、ミーティングの参加に集計業務など。これらの多くは作業者に依頼することができなかったりします。そして作業者からはマネージャが何をしているのかが見えなかったりします。人によっては「面倒くさい仕事を押し付けて来る嫌な存在」と認識しているかもしれません。そうなってくると、いざという時に協力してくれません。わたしは積極的に自分の仕事を開示しています。
「いやー最近、マニュアル修正の業務多くてさぁ、ヤバいのよね。とっとと終わらせて、ボスから依頼受けた激重な調査資料を作らねばならんのよ。」
と雑談の流れで自分がいまどんなタスクを抱えているのかを語ります。場合によっては、「ちょっとマニュアル修正したんだけど、文章伝わるか見てくれませんか。私、文章に自信なくてあなたに見てほしいんですよね」と仕事に巻き込むようにしています。
そして、積極的にイレギュラーや責任を取ってやるべき仕事を嫌な顔ひとつせず、むしろ「面白くなってきたじゃねぇか」といった感じでのめり込むようにやるようにします。
すると、単におしゃべり好きな人から信頼できるマネージャになります。信頼できるマネージャになると、メンバーは勝手に気を使って動いてくれるようになります。
最近だと、特定のPCに一定時間ごと転送されてくるデータの種類を500件分析するタスクを受け持ちました。夜勤帯にやろうとしたところ、かなり時間がかかるかつ単純作業であることがわかりました。そこでExcelシートを作り、調査のひな型を作った上で、夜勤帯の作業者に代理の調査とWチェックを依頼しました。すると、作業者は私が何も言わなくても、毎回の勤務帯でExcelシートを確認し、自分がやるべき範囲を把握したうえでリレーのように調査を行ってくれるようになりました。わたしは毎回の勤務帯でシートを確認し進捗把握に努めるのですが、作業者からも何も言わずとも「ブンブンさん、ここまで終わってます。あと数日で完了できるかもです。」と報告してくれるようになりました。マネージャを楽させるために頑張ろうというモチベーションが生まれてくるのです。ここまで来れば良いまずまずの組織といえよう。メンバーには感謝しかありません。
最後に
久しぶりに管理職になって、20人近いメンバーの管理を行う過程で培った雑談力。殴り書きのように書いていったのですが、気が付けば1万8千字を超える超大作となっていました。正直、これがプロジェクトマネージャとして正解なのかといったら微妙なのですが、組織として上手く運用できているのである程度の汎用性や再現性はあるように思えます。メンバーとのコミュニケーションに悩まれている方の参考になればと思います。
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