〈キッチンアートの光と影〉
或る日、知らないところに影が出来た。
それはキッチンの背面で、
家のつくりからは光が指す場所でもなく
ただの真っ白い空白の空間でしかなかった。
それなのに、
突然その時は来た。
今日はとてもいい日、朝から張り切って洗濯機は2回回した。丁度お日様がお天道様に
限りなく近寄った頃、
広くひらいた白いカーテンを思い切って
開けた。
ここ数ヶ月、窓は開けることはあっても
白いカーテンを開けることはしなかった。
どうしてなのか、その日は突然として、
カーテンを開いた。
眩しくさす光、ベランダからの見慣れた景色も
特に以前と然程変わりはなかった。
風が吹いた。
すると端に寄せたカーテンが大きく膨らんだ。
こころが一瞬、
陽だまりのように包まれた感覚があった。
'なんだか、温かくて気持ちいい'と
空気は澱むことを知っていた。
それなのに今日は私だけを
特別扱いしてくれたように
お天道様が眩しく私を照らしてくれた。
'もう充分かもしれない'
そう思いやはりカーテンだけは
閉めておくべきだった。
と一握りの後悔に胸を掴まれた際に
キッチンの背面に光を感じた。
その場所はいつどんな時も
家の中の蛍光灯でしか照らされないはずの
場所だったはずなのに
どうしてか、影が出来ていた。
薄く曇った白い壁にキッチン前に置いた観葉植物の葉が影を作る。
どうしてか、今まで気づかなかった。キッチンの壁は、そっと光と影でできた葉の模様を
揺らしながら、
ゆらゆらと佇む。'キッチンアート'
そう名を付けて、
暫く何も考えずにキッチンアートを眺めた。
'チッチッチ'壁掛け時計の秒針を
気になりはじめたとき
私はハッとした。
そして窓からまた大きく風が吹いた。
人生の奇跡、
今日という一日は誰かの奇跡で成り立った日。顔も知らない、だけれどそっと温かい風と光に包まれた感触は忘れない。
喜びを上手く表現できない私は、
そっと代わりに喜びを含んだ涙しか流せない。
うまく笑えなくてごめんなさい。
だけど大好き。
君が大好き。
お天道様にお日様が重なった頃、
キッチンの影は、少しだけ長く
大きくなっていた。
あっ、もうすぐ芽が咲きそう。
そんな小さな事にすら気付かなかった私を
呪った。
芽は息吹いて、風は吹くのに、
ひたすらに白いカーテンを開けようとしなかったのは私だったと。
でもごめんなさい。
毎日開けることは難しいです。
そう一言添えて、
よく出来たキッチンアートを眺めながら
昼食の準備に取り掛かった。
おわり.
**白いカーテン**小さな奇跡*-**偶然のきっかけ**光と風の祝福:**自然**癒し*小さな幸せ*キッチンの影*キッチンアート**_*日常の隙間**_*日常の美の発見:**お家時間*-*愛おしみ**
影が生まれたキッチンで奇跡が…!風と光が織りなす、心温まる物語。#note
