【エッセイ】 『波の音』 #シロクマ文芸部
小牧さん、企画に参加させていただきます☺️。
●お題…「波の音」
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波の音が、もう怖かった。
アルバムを見ていると、まだ独り歩きもままならない小さな私が、海で大号泣している写真がある。
怖くて泣いて拒絶する私を、父は笑いながら抱きかかえ、波打ち際に連れて行ったのだ。
眼下に透明な何かが蠢いていて。
私の恐怖はより増した。
のに。
容赦なくそこに降ろされる。
……もう大絶叫だ。
ただの拷問。
頼むからもう一度抱きかかえてくれと懇願するように手を伸ばして……
父のことを大嫌いに。
そして父には逆ってはいけないと思った。
それが私の、父と初めての海の記憶。
あの写真のせいで、おぼろげな記憶はずっと私を揺らし続けた。
でも。
なぜ、初めて見た海をあんなにも怖いと思ったのか……それは不思議だ。
海遊びも、海釣りも、潮干狩りも行った。
日本海は平気。
内海や湾も、大丈夫。
なのに……太平洋だけは今も何だか怖くて仕方がない。
見るのは良いのに。
ドドド……と響く波の音が、胸を打つ。
前世で何かあったのかな。
知る術はないけれど。
……そういうことにしておこう。
