僕と妻、海松色のあわい│#せりふ三題噺
僕はいま、星の向こうにある宇宙ステーションにいる。
多くの人間は地球崩壊後、こちらに越してきた。
僕もその多数派の一人であった。
「奥様カラ伝言ヲ受信シマシタ」
メイドの髪飾りに触れる。
『あなたへ。いつもの受付で待ってますね』
懐かしい妻の声だった。
僕はカレンダーをちらっと見た。
気移りな妻が、幻の昆布を探しに行くといった日。
それからちょうど1年経っていた。
お求めの昆布は見つかったのだろうか。
はやる胸をおさえながら、受付に向かう。
久しく、妻に会っていないな。
寂しさと嬉しさが交互にサンバを踊る。
まてよ。
僕ははた、と立ち止まる。
ーーもしかしたら、妻は昆布に懸想してしまったのではないか。
とりとめのない疑念。
出汁のようにじわじわと染み出していく。
妻の姿が、視界に入る。
大きな昆布が、ゆらゆら、揺れていた。
ひさびさの妻は、相変わらず美しかった。
少し気恥ずかしそうに、笑う。
「…紹介するね。私のだいじな、昆布さん」
僕と妻、そして昆布の奇妙な関係が、始まろうとしていた。
はらとけいさんの#三題せりふ噺に参加させていただきました!
■セリフ
「受付で待ってますね」
■三題
・宇宙
・カレンダー
・昆布
