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「砂糖のタルト」から見えるベルギーの暮らし。タルト・オ・シュクル風トースト |レシピ

砂糖のタルト"tarte au sucre"

タルト・オ・シュクル"tarte au sucre"は、フランス語で砂糖のタルト。ベルギーと北フランスの一部で親しまれている伝統的なお菓子です。
その名の通り、メインの材料は砂糖。平たく伸ばした生地に、砂糖とバターを散らし、地域によっては卵や牛乳、生クリームを注いで焼き上げたとてもシンプルなタルトです。

シンプルながらも、たっぷりの砂糖とベルギーの美味しいバターは最高の組み合わせ。カロリーを考えると少し恐ろしくなりますが、間違いのない美味しさです。

このタルト・オ・シュクルは、地域ごと、さらには家庭ごとに作り方やスタイルが少しずつ異なります。
生地はイーストで膨らませるブリオッシュのような発酵生地が主流ですが、パート・ブリゼのようなサクサクとしたタルト生地を使うレシピも存在します。他にも、使う砂糖の種類や、ガルニチュールに卵を使うか使わないか、生クリームか牛乳か…などなど、その違いは様々。
人によってイメージする形に多少の差はあるけれど、ベルギーの人にとって"tarte au sucre"は子供の頃から慣れ親しんだ懐かしい味なんだそうです。

タルト・オ・シュクルいろいろ

この一見ありふれた材料のシンプルなタルトが、何故ベルギーの味なのか?その答えは簡単で、ベルギーと北フランスは、ヨーロッパ有数の砂糖の産地だからです。そして、そのきっかけを作ったのは、ナポレオン1世です。

💡記事の後半でタルト・オ・シュクルを簡単にトーストでアレンジしたレシピを紹介しています。すぐにレシピを見たい方は、目次の「食パンで作るタルト・オ・シュクル風トースト」からどうぞ。


砂糖の産地ベルギーとナポレオン

19世紀初め、大陸封鎖令を出してイギリスとの交易を禁止したナポレオンは、戦争と海上封鎖によって不安定になっていたサトウキビ砂糖に代わるものとして、サトウダイコン(ビート、甜菜)の栽培と精製を積極的に勧めました。その地として選ばれたのが、当時フランスに支配されていたベルギーでした。
※追記(2026.2.10)
初稿では「イギリスからの輸入に頼っていたサトウキビの代わりに」と表現しましたが、実際にはフランスは当時、自国植民地で生産されたサトウキビ砂糖に大きく依存していました。
しかし、サン=ドマング革命やナポレオン戦争による海上輸送の混乱によって、その植民地砂糖すら安定して届かなくなります。大陸封鎖令は、そうした状況をさらに深刻化させ、甜菜糖を国家的に推進する大きな後押しとなりました。

ヴェルサイユ宮殿のナポレオン1世の肖像。

これによって、ベルギーや北フランスの人々にとって、砂糖は「外国からやってくる高価なもの」から、「その辺で採れるありふれた作物」に変わりました。特に未精製の砂糖は、精製された白砂糖に比べて価値が低く、産地であるベルギーの人々は安価で大量に手に入れる事ができるようになったのです。この未精製の砂糖はヴェルジョワーズ(vergeoise)という名前で、香ばしい風味とコクがあり、現在でもベルギーのお菓子に欠かせない存在です。

ナポレオン1世によって、ベルギーの人々にとって砂糖が身近なありふれた存在に。そして、その砂糖をたっぷり使ったタルト・オ・シュクルが人々に広く親しまれるようになり、現在まで受け継がれています。

ワーテルローとタルト・オ・シュクル

ブリュッセルの南にあるワーテルロー(Waterloo)の街。ナポレオン1世がイギリス・オランダ連合軍に敗戦した「ワーテルローの戦い」があった場所として有名です。この戦いによって、フランスによるベルギーの支配は終わりました。街から少し離れた古戦場には、記念のモニュメントであるライオン像とミュージアムがあり、人気の観光地となっています。

丘の上のライオン像はフランスの方向を見つめています。

実はワーテルロー周辺は甜菜糖の産地です。
ナポレオンが敗れ去った場所として世界的に有名なワーテルローですが、ナポレオンのおかげで砂糖がもたらされた場所でもあったのです。
ワーテルローはかつて石畳を作る職人の街だったそうで、重労働の職人達のエネルギー補給のために、街の女性達は地元で採れる未精製の甜菜糖をたっぷり使ったタルトを作り、それがとても評判だったそうです。今でもタルト・オ・シュクルはワーテルローの街の名物の一つです。

ブリュッセルで食べたタルト・オ・シュクル

タルト・オ・シュクルは、delhaizeやcarrefourなどのスーパーマーケットのパン・ケーキコーナーや、街のパン屋さんで見つけることができます。私がブリュッセル在住時に、街のパン屋さんで購入したものがこちらのタルト・オ・シュクル。

我が家の近所にあった、とても美味しいブーランジュリー"La petite grange"のものです。確か、タルト・オ・シュクルは作る曜日が決まっていて、わざわざ確認して買いに行ったような。
平たいブリオッシュ生地に染み込む、とろりとしたお砂糖とバターとクリーム。表面はしっかり焼かれてキャラメリゼされています。お店で受け取った時はまだ温かくて、バターと焦げたお砂糖の香りにワクワクしながら帰宅しました。
名前からしてどれだけ甘いのかと覚悟して食べましたが、意外と甘すぎず…想像通り幸せの味でした。ホールのサイズしかありませんが、何回かに分けてペロっと食べてしまったはずです。

生地はふわふわのブリオッシュ。発酵生地のタルトは、ケーキというより菓子パンに近い印象です。

<La petite grange>
Rue au Bois 243, 1150 Woluwe-Saint-Pierre
タルト・オ・シュクルだけでなくハードパンもクロワッサン系も美味しいおススメのパン屋さんです。

食パンで作るタルト・オ・シュクル風トースト

このベルギーの味を、今回は簡単に食パンでアレンジしてみました。
ブリオッシュ生地のタルトとは風味が異なりますが、砂糖とバターがとろりと溶けて食パン生地にじゅわっと染み込んだ、とても美味しいトーストです。
元気を出したい時や、休日の朝ごはんにもおすすめです。

タルトオシュクル風トーストのレシピ

〈材料(4枚分)〉
食パン6枚切り  4枚
※砂糖      60g(1枚分15g)
バター      40g(1枚分10g)
卵        1個
牛乳       60ml
※砂糖はヴェルジョワーズやカソナードを使うとコクが出る&よりベルギーらしくなりますが、甜菜糖や白砂糖などお好みのものでOK

作り方

①食パンを耐熱皿またはアルミホイルの上に置く。食パンの耳から1cm幅くらいを残して、真ん中を押しつぶす。スプーンの背や指を使うと良い。食パンを破らないように注意。

焼く時に中身が漏れる可能性があるので、必ず耐熱皿かアルミホイルに乗せて焼いてください。

②食パンを凹ませた部分に、砂糖を満遍なく敷き詰める。バターを小さく千切って散らす。

③卵と牛乳を混ぜ合わせる。砂糖とバターを散らした上から、卵液を満遍なく注ぐ。

卵液が多いとフレンチトーストのようになってしまうので、1枚につき卵1/4個分+牛乳が丁度良い量です。卵液で砂糖を溶かすイメージ。

④トースターで5分程焼く。バターがジュワジュワして、表面が良い色になったら出来上がり。

できあがり 

普通のシュガーバタートーストとの違いは、このとろとろ具合です。生地に染み込むバターとお砂糖がたまりません。コーヒーを淹れて、一口で幸せな気分になれます。

おわりに

一見ありふれた材料でできるけれど、ナポレオンから繋がる、ベルギーの人々の暮らしが見えてくるタルト・オ・シュクル。
トーストを食べる時は、ベルギーの大地と歴史に思いを馳せてみてください。
そして、ベルギーに訪れたら、ぜひ本物を食べてみて欲しいお菓子です。

💡生地から作る本物のタルト・オ・シュクルも別の機会に挑戦する予定です


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