季節を瓶に閉じ込める。
ジャムを作るようになったきっかけは、いただきもののいちごだった。
わが家は、ありがたいことに果物をいただく機会がよくある。
贈答用の果物は、見た目も味も格別だ。
箱を開けるたび、つい心が弾む。
けれど、二人暮らしでは食べ切るのが難しいこともある。
ある日、気づけばいちごが少しだけ傷み始めていた。
「このまま捨てるのはもったいない。」
そう思い、初めてジャムを作った。
鍋の中で少しずつ形を変えていくいちご。
部屋いっぱいに広がる甘い香り。
瓶に詰めると、それまで「救済」だったものが、なんだか特別な保存食に見えてくる。
それ以来、果物をいただくたびに、自然と鍋を火にかけるようになった。
傷みかけた果物を無駄にしないために始めた小さな手仕事は、いつしか季節を楽しむ時間へと変わっていた。
梅ジャム
梅ジャムも、そのひとつ。
梅シロップを仕込んだあとに残る、しわしわの梅。
役目を終えたように見えるけれど、そのまま捨ててしまうのは、やっぱり惜しかった。
種を取り、コトコトと煮詰めてジャムにすると、甘酸っぱくて香り豊かな一瓶ができあがる。
ある日、その梅ジャムをシャトレーゼの白ワインアイスに添えてみた。
ひんやりとしたアイスに、梅の爽やかな酸味とやさしい甘さがよく合う。
思いつきで試した組み合わせだったけれど、「これは当たりだ」と思わずうれしくなった。
ひとつの季節を最後まで楽しみ尽くせたような気がした。
マンゴージャム
マンゴージャムは、台湾に住む親戚から届いたマンゴーで作った。
マンゴーは、私にとって少し特別な果物だ。
自分で買うには少し贅沢で、だからこそ箱を開ける瞬間は、毎回わくわくする。
複数個いただけたので、そのまま味わうもの、冷凍するもの、そしてジャムにするものと、今年は贅沢に三通りの食べ方を試してみた。
とろりとした果肉をゆっくり煮詰めていくと、部屋いっぱいに南国の甘い香りが広がる。
朝のトーストにのせても、ヨーグルトに添えてもおいしい。
冷凍マンゴーとジャムを使って、自家製マンゴーラッシーを作った日もあった。
少しずつ味わうたびに、遠くから届いた贈りものを、もう一度受け取っているような気がした。
桃ジャム
マンゴーの次は、桃。
実家から届いた桃で、ジャムを作った。
私は桃の名産地で生まれ育った。
だからなのか、桃には少しだけこだわりがある。
そのまま食べるなら、少し硬さの残った桃が好きだ。
届いたらすぐに一つずつラップで包み、野菜室へ。
ひんやりと冷やした桃を、しゃくっと頬張る瞬間は、毎年の楽しみでもある。
一方で、ジャムにする桃は別。
数日置いて、やわらかく甘い香りが立ってきた頃がちょうどいい。
追熟した桃をゆっくり煮詰めると、部屋いっぱいにやさしい香りが広がる。

瓶に詰めた桃ジャムは、きっと今年の夏を思い出させてくれる。
まとめ
果物をいただくたび、その季節の空気や、贈ってくれた人の顔を思い浮かべる。
ジャムは、果物を長く楽しむための知恵でもあるけれど、私にとっては季節の記憶を残すための小さな手仕事でもある。
瓶のふたを開けるたび、あの日の甘い香りや、キッチンに立っていた時間がふっとよみがえる。
今年の夏も、季節を瓶に閉じ込めることができた。
