48 A Sunday in the Stairwell
恋愛は歳をとるんだよなって、つくづく思う
もっと小さい頃は一緒に遊んでるだけやった
好きとか嫌いとか、そんな言葉もよう分からんまま気がついたら隣におる
でもな、ちょっかいかけて泣かせて、なんでそんなことしたんかも分からんまま
次の日には何事もなかった顔して「遊ぼ」って言ってた
昨日のことなんかもうどうでもええ
くっついて離れて、またくっつく、それだけやった
10代で初めて“付き合う”ってなったのは中3の体育祭の前日やった
…いや、正確にはまだ何も始まってへん
昼休み、教室の階段のとこで呼び止められた
「銀狐くん…あんなぁ」
女友達に声かけられて、その横に『里奈(仮)』がおった
同じ学校やけどクラスは別、名前も顔も知ってる、そのくらいの距離
下向いてモジモジしてる
なんか言いに来たんやろなって空気だけはあった
でもその日は結局何も言わんかった
その代わりに
『なぁ、ハチマキ欲しいねん』
って言われた
「まぁええよ。こんなんでよけりゃ」
それだけの約束
次の日は体育祭
当時、学級委員長やった
…まぁ誰も手挙げへんから、しゃあなしでなっただけやけどな
運動は嫌いやから体育祭はほぼサボり
勝手にみんな頑張れよ、くらいの温度
それでも最後の表彰だけはちゃっかり前に出て、賞状だけ受け取ってる

なんにもやってへんのにな
言わば、やらんくしてヒーロー気取り
今考えるとまぁまぁ恐ろしい
全部終わって帰り際
「あ、そういや」
って思い出して、ハチマキ外してその子のとこ行った
「おーい、里奈、これ言うてたやつやで」
白と紫をねじったやつをそのまま手渡した
『ありがとう』
少し間があって
『ほんでなぁ…
多分わかってると思うけど…
前から…好きやってん』
やっぱり来たかと思いながら、こっちは変にスカしてる
「…そうなんや」
一拍置いて
「まぁ、わかってたけどな」
今思えば、あの一言はまぁまぁ感じ悪い
そのあと少し間があって
『…じゃあ、付き合う?』
って流れになった
正直その時のこっちは、そこまで強い想いはなかった
嫌いじゃないけど、めちゃくちゃ好きかって言われるとそうでもない
ただその場の流れで「まぁええか」くらいの温度で付き合うことになった
でな、これ後から考えるとなかなかやってる
その時、同じ学校にもっと前に自分から告白してフラれた子がおった
普通に顔合わせる距離で生活してる中で、別の子とそのまま付き合ってる
うん、今思えばなかなかのもんやな
そんな話は大体すぐにバレる
「銀狐、里奈と付き合ってるんやって」
どこから漏れたんか知らんけど広がるのは早い
「だから何や」
そんな顔してとにかくスカしてる
別に余裕があったわけでもなく、どう反応してええか分からんだけや
学級委員長やからな。俺。
…まぁ名ばかりでなんも機能してへん
それでも肩書きだけはあるから「ちゃんとしてる側」みたいな顔してまう
中身は全然ちゃうのに
学校も3時間目くらいから行くのが普通やったし、教師と揉めてビンタ5発もらったこともある
そんな状態で恋愛だけまともに出来るか言われたら、まぁ無理やろな
とりあえず付き合うことにはなった
けど、どう接してええかまったく分からん
何話したらええのか、どの距離でおったらええのか全部分からん
男兄弟やし余計に分からん
それでも日曜になると「会おか」ってなる
彼女の家は通学路の途中にあって、学校までは10分くらい
自転車でニケツしてどっか行く、それが定番やった
ある日
「日曜の学校ってどうなんやろな」
なんとなくそれだけで行ってみることになった
日曜の昼下がり、誰もおらん学校
裏から忍び込んで
非常階段に座る、4階の外の階段
ちょっとだけ現実から外れた場所
「しかし、なんで俺のハチマキやったん?」
『うーん…でもなんやろ…ある日突然かな』
『いいなぁと思って』
「そうなんやぁ…」
季節は秋、夕方が近づくにつれて少しずつ冷えてくる
「どうしようか?もう今日は帰るか?」
『…んー。もうちょい
いたい…かな?』
その言葉に、なんか愛しさを感じた
横に座って、初めて肩を抱いた
「ちょっと寒いな…でもこうやってくっついたらマシか?」
『うん…』
夕方の光が長い影を伸ばしてた
胸が少しだけ高鳴ってるのが分かる
なんだろうか…距離を近くなったのを良いことにこんな事言ってしまった
「キスってしたことある?」
いや、恥ずい
『…無いに決まってるやん…』
「そっかぁ…」
「ファーストキスってレモン味らしいで」
「BOYS BEって漫画で言ってたけど」
「試してみる?」
『…んー。試してみたいかも…』
軽く触れた
ほんの一瞬
そのまま抱き寄せた
彼女の手が俺の腕をゆっくりつかんだ
その1日から距離は少し近づいて、堂々と学校でも話せるようになった
…まぁ、ここまでにしとこうか
恋愛は歳をとるんだよなって、つくづく思う
で
40代の恋愛?
わかんだろっ!それぐらい!
察しろや。
で。
最近、曲作りにもハマっててさ。
「こんな俺もいる」ってことで、一曲だけ置いとくわ。
まぁ、騙されたと思って――
▶ 再生ボタン、押してみ?
笑っても責任は取らん。
『誤認 — WRONG TARGET』
どっせいっ!!!
