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短編小説|氷の下で、芽は待っている/詩のような物語

凍土の下で、
時間はゆっくりと丸くなる。

踏みしめれば、きしむ音。
白く閉ざされた地面は、
何もかもを拒んでいるように見える。

――けれど、ほんとうは、
深く、深く抱えている。

氷の薄衣の裏側で、
小さな種が、まだ名前のない未来を抱きしめている。

凍えるほどの静寂のなか、
だれにも聞こえない鼓動が、
ひそやかに、
それでも確かに、刻まれている。

「まだだよ」と冬がささやくたび、
芽は急がない。
押し返される冷たさを、
力に変える術を知っているから。

光は、地上にしかないわけじゃない。
暗い土の奥にも、
やわらかな兆しはある。

やがて氷がゆるむ朝、
地面はそっと綻ぶだろう。

それは奇跡じゃない。
ただ、待ちつづけた鼓動の
静かな答え。

凍土の下で、
今日も芽は、
春を呼吸している。



【詩のような物語】という、小さな物語たちを紡いでいます。
もし、今日の物語が、あなたの心にふれていたら
──それだけで、うれしいです。ありがとうございます。
これからも、日々の光や影を、そっと言葉にしていきます。
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