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オペラ:ワインベルク作《パサジェルカ》、バイエル州立オペラ、16.07.24, Bayerische Staatsoper

7月16日、バイエルン州立オペラのワインベルク作曲《パサジェルカ》を観ました。

プレミエとそれに続く上演は日本にいて観ることができず、7月の再演まで待たなければなりませんでした。

バイエルン州立オペラの23/24シーズンの、私にとっての最大の注目公演は《こうもり》と《パサジェルカ》でした。
作品と同様、演出家と指揮者の組み合わせが大きな理由です。

《パサジェルカ》、アウシュヴィッツを題材にしたオペラをどのようにステージにかけるか・・・。

《パサジェルカ》はポーランドの作家ゾフィア・ポシュミツ(1923〜2022)の同名小説を元にしています。
ポシュミツはユダヤ人。アウシュヴィッツに連行されましたが、生き延びることができました。

《パサジェルカ》というのは『女性の乗客』という一般名詞の女性単数形です。ですので、邦題としては『女乗客』、『乗客の女』と訳すことができると思うのですが、この作品を元にした映画を撮ったアンジェイ・ムンク監督の同名の作品(未完)が《パサジェルカ》として知られていることもあり、ここでは《パサジェルカ》とします。
なお、ムンクはアウシュヴィッツで《パサジェルカ》を撮影している時に自動車事故で亡くなりました。

作曲家ミェチスワフ・ワインベルク(1919年ワルシャワ生、96年モスクワ没)について知らない人のために、ここに簡単に紹介しておきます。

ワインベルクは音楽家を父に持つ、ポーランド出身のユダヤ人です。
1939年ナチスのポーランド侵攻の後、ソ連に逃れました。
ポーランドに留まった両親と妹は強制収容所で殺されました。
曽祖父、祖父も1903年のポグロムで殺されています。

しかし、ワインベルクはソ連でもユダヤ人迫害にあいます。
1948年、妻の父、ソロモン・ミホエレスが交通事故死します。
ミホエレスはユダヤ人、有名な俳優・演出家でした。
だからこそ、スターリン政権にとっては邪魔になったのでしょう。ミホエレスの事故死についてはソ連の秘密警察が動いたとされています。

ワインベルクは1953年、「ユダヤ共和国建設を謳い、扇動した」として逮捕されます。この際、ショスタコーヴィチがスターリンに助命嘆願書を送っています(なんと勇敢な!)。
その直後、スターリンが急死し、ワインベルクは九死に一生を得ます。

《パサジェルカ》はワインベルクの代表的なオペラ作品で、作曲は1968年。
しかし世界初演は2006年モスクワのコンチェルタンテでした。
オペラとしては2010年のブレゲンツ音楽祭(演出:パウントニー、指揮:クルレンツィス)で初演されました。ワインベルク死後14年が経っていました。

作品の主人公リーザはアウシュヴィッツの元女看守です。
客船でアウシュヴィッツの囚人マルタと似た女性を見かけたことから作品は始まります。

プログラム。

今シーズン最後の公演だからでしょうか、ユロフスキに呼ばれて演出家のクラッツァーが出てきました。
通常、カーテンコールに演出チームが出てくるのはプレミエの時だけです。

作品そのもの、指揮と演出、歌手とオーケストラも素晴らしく、長く記憶に残る公演でした。

バイエルン州立オペラはこれまで何回も日本公演を行なっています。
他のオペラ・アンサンブルもそうですが、日本公演となると、主催者がチケットの売れ行きを考えなければいけないので、どうしても知られた作品になってしまいます。客も有名作品しか買わないので・・・仕方がないか、とは思います。

でも、以前は日本の主催者も客も、もっと勇気と好奇心があったように思います。

その日本公演も難しくなってしまいました。特に円安が拍車をかけています。

日本からわざわざ観にくる方は、だからこそ、ぜひ、こんな作品を観てほしい。
それに、このレベルでの上演は滅多にないと思います。

FOTO:(c)Kishi


以下は劇場提供のステージ写真です。 © Wilfried Hösl

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