ある俳優の喪失
朝
スマホのニュース一覧を見て
一瞬意味がわからなくなった
中村ゆりさん
大腸がんによる腸閉塞でこの世を去る
本当に意味がわからなかった
読んでいるのに、読めているのに
頭が理解しない
そんな感覚
夢?
私はまだ起きてなくて夢の中のこと?
けれどこれは現実だった
ここ数ヶ月のなかで彼女の出演する作品を立て続けに観ていたからこそ、これほどまでにこの訃報が衝撃的だったのかもしれない
なんのドラマか映画かわからないけれど
時々脇役で出てくる、けれど存在感がある
だから名前はちゃんと知っている
そんな俳優さんとして私の頭の中にあった
『119エマージェンシーコール』という消防の通信指令センターを舞台に命をつなぐ指令管制員たちを描いたドラマがまず初めに浮かぶ
中村さんの役は管制員たちをまとめるリーダーだった
日々緊迫した状況の中で常に冷静であり、個性的な管制員たちの一人一人を観察し、的確なアドバイスやフォローを行い、仕事が終われば中華街に行ってざっくばらんに部下とお酒を飲みながら楽しい時間を過ごすキャラクター
こんな上司がいたらなぁ…看護師の世界にこんな人がいたら離職率増加を食い止められるのになぁと羨ましい気持ちで観ていた
そしてこんな女性になりたいとさえ思うほど、仕事とプライベートのメリハリが上手くて、可愛らしくて、頼りになる人柄を爽やかに演じていた
すごくすごく心に残っている
『終幕のロンド』も印象深い
遺品整理人を中心に描く、人生を深く考えさせられるドラマだった
大企業の次期社長を夫に持つ絵本作家役で余命宣告された母親との向き合い方に初めは戸惑いながらも主人公と出会い、心を通わせていく中でシングルマザーとして生き、穏やかな死を望む母の生き方を尊重し、さらに自分のこれからの人生を考え直していく、静かで優しい女性でありながらも芯の強さを育む凛とした人間像をうまく表現していたと思う
夫がいながらほかの男性に思いを寄せる心の葛藤、一般的にはそれが浮気だとか不倫という言葉で片付けられてしまうけれど、そういった下世話な言葉で説明できない、深い人間同士の心の通い合いみたいな、心の尊さに触れた温かい愛を感じたような気がした
ドラマ全体が様々考えさせられるテーマ性があって、静かに心を揺さぶるストーリーが私は好きだった
いつも比較的元気で明るい印象の彼女がこんな役もできちゃうんだなぁと素敵な女性だなと思っていた
そして最近観ていたのが
『さよならのつづき』と『匿名の恋人たち』
どちらもNetflix作品
匿名の…は以前noteで感想を書いてるんだけれど
中村さんはアイリーンという精神科医なのかな?カウンセリングを通して主人公のハナと出会い、実はハナの片思いの人と深い関わりのある人で…というドラマならではの不思議な人間模様があり、
カウンセラーをしていながらも自分自身は恋愛において不完全で偏りのある複雑な思いを抱える人、という役柄で
友達の壮亮の前では強気な女性なのに、好きな人には素直になれない、お茶目な感じが可愛かった
さよならの…では多分一番可哀想な人
ただ愛する夫を健気に支え続けて生きてきたのに、もらい事故のような、全面的に被害を被っているような、本当に可哀想な役柄
心臓の病気を抱える夫とともに生き、心臓移植をして喜んだのもつかの間、その心臓に宿る元の人間の記憶によって夫が少しずつ変わっていくことに気づきながらも静かに見守り、時には相手の女性に自ら会いに行って思いをぶつけたり、死を覚悟した夫の状況を相手に伝えたり、見える人には嫌な女性に見えたかもしれないけれど、私はそれが正しくて、正直で、一番好きな人キャラクターでもあった
夫がなくなったあとには相手の女性を呼び出して、会いたいから毎年リンゴの収穫の手伝いに来なさいと笑って話す姿が誇らしく見えた
ドラマの中の役柄として作られたものだとしても、この役は中村さんが演じたからこそ際立つキャラクターになったと私は思っている
だからこそ悲しいし悔しい
今までも若くしてこの世を去る俳優さんがいて、その度に、もうこの人が演じる姿が見られないのかと思って悲しくなった
こういう時
いつもやはり思う
人生は有限で、いつ自分の人生の終わりが来るかわからない
若いから大丈夫じゃない
だからこそ日々、大切に生きたいと思う
小さなことでくよくよ考えたり悩んだり迷ったり
それはそれでいい
自分のことを後回しにしたり、ないがしろにするよりマシだ
自分に与えられた時間の中で自分は何を大切に生き、そして終わらせることができるか
後悔したくない
生きる意味なんて考えている暇なんてない
意味よりどう生きるか
たくさんの作品で心に刺さる表現力を持って素敵な人柄を演じて見せてくれた中村ゆりさんに感謝の気持ちを伝えたい
ありがとうございました
