【学生は今】1年間を終えて:きこえない私が、初めてきこえる世界に踏み出して
こんにちは。
地球市民学部(地域共生領域)1年のL.M.です。
私は生まれつき耳がきこえません。3歳から18歳までの15年間、ろう学校に通っていました。私にとって、大学できこえる世界に入ることは、不安と期待が入り混じる大きな挑戦でした。
高校1年のとき、それまで過ごしてきた「ろうの世界」から一歩踏み出したいと思うようになりました。大学選びでは、国際関係や平和学、海外フィールドワークを学べる環境であること、さらにJICA海外協力隊短期派遣の可能性があることに魅力を感じ、身を置きたいと考え志望しました。そして清泉女子大学は母の母校でもあります。
「伝える」ことから始まった大学生活
入学前から、授業の情報保障(文字起こしの修正、手話通訳、パソコンテイク、リスニング免除、代替課題など)について何度も相談を重ねました。ウエルネスセンターはとても相談しやすく、毎回すぐに私が授業を受けやすい環境づくりを考え、対応してくださいました。サポート学生の存在もあり、安心して講義を受けることができています。
4月の新入生合宿では、30分間のミニ日本手話講義を担当させていただきました。みんなが盛り上がってくれて、講義後も手話を覚えようとしてくれたり、話しかけてくれたりしたことがとても嬉しかったです。同じ部屋になった友達とは、ポテトチップスを食べながらカードゲームをしたり、手話や筆談、文字起こしアプリを使って話したりして仲を深めることができました。大切な思い出です。
夢だったマラウイフィールドワーク
高校生の頃から関心を持っていたマラウイフィールドワーク。マラウイに到着したとき、飛行機の中で涙が出ました。夢が一つ叶った瞬間でした。
しかし、現地活動では想像以上の壁にもぶつかりました。eVISAが日本国内で取得できず、マラウイ大使館に代表として3回通いました。手に入れた入国書類で本当に全員入国できるのか、不安と極度の緊張の中で空港に立ちました。
無事入国できた後も、音声会話のスピードについていけず、頼りにしていた音声認識アプリもうまく使えない状況が続きました。「自分だけが取り残されている」と痛感する瞬間が何度もありました。
「あと15日もあるのに、やっていけるのかな」
苦しく、悔しく、不安で、複雑な気持ちになり、涙があふれたことも何度もありました。
それでも、3泊4日のホームステイは大きな支えになりました。ホストマザーは小学校の先生で、高校生の姪と一緒に生活しました。風船バレーや白玉作り、散歩を楽しみ、アメリカ手話や英語筆談を通して、ろう学校やロールモデルの大切さについて語り合いました。マラウイ湖で3人で泳いだ時間は、言葉を超えてつながれた瞬間でした。
辛い経験もありましたが、見守ってくれる先生や仲間、ホストファミリー、マラウイの人々の存在に何度も救われました。マラウイは、私を強くしてくれた大切な場所の一つです。耳がきこえない私を受け入れてくれた温かいマラウイに、いつか私からもお返しのサポートをしたいと思っています。

国際交流
国際交流センターのイベントで書道を教える経験もさせていただきました。小学2年生から続けている書道は今年で11年目になります。「教える」こと、しかも英語で伝えることは初めてで、どうすれば伝わるのか考えさせられました。文化を共有することの楽しさと難しさを実感した時間でした。

白玉作りのイベントでは、マラウイでのホームステイを思い出しました。国が違っても、一緒に作る時間の温かさは同じだと感じました。
大阪万博
2025年の大阪・関西万博にも足を運びました。世界各国のパビリオンを回り、それぞれの文化や価値観、未来へのビジョンに触れました。
特にマラウイの展示を見ることができたことは、とても懐かしく、振り返ることのできる体験でした。現地で出会った人々や景色を思い出しながら展示を見て、「世界は遠い場所ではなく、つながっている」と改めて実感しました。

2025東京デフリンピックとろうコミュニティへの想い
100周年目の初日本開催の「2025東京デフリンピック」のボランティアにも参加しました。学内では大会期間中に啓発ポスターを制作・掲示し、図書館ではデフリンピックや手話、ろう関連の本の展示企画を提案し、コーナーを設けていただきました。

そのほか、母校のろう学校での放課後居場所支援、ろう乳幼児のお世話、日本手話での絵本読み聞かせスタッフ、デフスポーツイベントのボランティアなど、手話を使った活動にも継続して取り組んでいます。

手話やアイデンティティは、私にとって大切な軸であると改めて感じました。
清泉だからこそできた挑戦
清泉女子大学は大規模な大学ではありません。しかしその分、先生や助手さん、友達との距離が近く、挑戦しやすい環境があります。
大学のPRとして、オープンキャンパスグッズに「くし」を提案し、実際に商品化していただきました。自分のアイデアが形になる経験は初めてで、本当に嬉しかったです。

※このように、好きなようにシールやキーホルダーをつけたり自分らしいくしが出来上がります♪
挑戦したいと言えば応援してくれる。困ったときは一緒に考えてくれる。そんな温かい環境がある大学です。

今も続く挑戦
2026年度のガーデンパーティーに向けて、「地民珈琲館」というプロジェクトを進めています。さまざまな国のコーヒーを扱いながら、フェアトレードを体験してもらえる場をつくることが目標です。
分からないことも多いですが、先輩や先生と協力しながら準備を進めています。当日はぜひ、コーヒーを飲みに、そして購入しに来ていただけたら嬉しいです。
また、2025マラウイフィールドワークのInstagramもあります。現地での様子を発信していますので、ぜひご覧ください。

この1年は、壁にぶつかりながらも、きこえる世界の中で学んだ1年でした。
きこえない私が、きこえる世界に入り、マラウイに行き、国際交流をし、ろうコミュニティともつながり続けた。
そして何より、改めて自分自身と向き合えた1年だったと思います。
ろうとしての自分も、世界に挑戦する自分も、
どちらも大切にしながら歩んだ時間でした。
そのすべてが、私にとっての「地球市民」としての一歩です。
これからも、自分のペースで世界に関わり続けていきたいと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
(地球市民学部 地域共生領域1年 L.M.)
