まだ『ぱどタウン』語りたいよ
少し大袈裟だけど、今でいうメタバースのような空間を
自分は2000年代の初めにはもう触れていたのかもしれない。
それが「ぱどタウン」というネットゲームだった。
知る人ぞ知る、インターネット黎明期の最強のゲーム(だと思ってるぞ俺は)
★ぱどタウンとは
ぱどタウンとは、地域情報誌「ぱど」から派生したネットゲームで、2001年にサービスが始まった。
ネット上の仮想街(○○タウン)にて、他のプレイヤーとのコミュニケーションを目的としたゲーム。
無料でアカウント登録ができ、すぐ始めることができた。
登録会員は、2003年時点で約11万人居たようで、当時多くの人達がぱどタウンで過ごしていたことが分かる。
★川崎リバーサイドタウンに住んでた
ぱどタウンには「○○タウン」という地域ごとの街が用意されていた。
街の名前にも、それぞれの地域らしさが込められていた。
自分の地元に対応した街を選んでもいいし、全然関係のない地域の街に住むこともできた。
自分は当時神奈川に住んでいたが、地元が横浜寄りなのか湘南寄りなのか、川崎に近いのかわかっていなかったので、ニュアンスで「川崎リバーサイドタウン」を選んだ。
のちに、井上陽水のリバーサイドホテルが好きになったので、結果的に後から更に愛着が湧くタウン名になった。
もちろん、全然関係ないタウンに住んでいる友達もいた。
現実では、自分が住む街を自由に選ぶことなんてできない。
でも、ネットの中なら好きな街を選ぶことができた。
* 滋賀遊びわ♪タウン
* 浜松祭り風タウン
* 静岡お茶めタウン
* 湘南1173タウン
* 横須賀三浦ちゃぷちゃぷタウン
* 横浜マリンブルータウン
* 川崎リバーサイドタウン
* 町田相撲原ジャングルタウン
* 多摩まなびやタウン
* 東京ゆう(^○^)ゆうタウン
* 東京ちゃきちゃきタウン
* 東京あおぞらタウン
* 埼玉西とことこタウン
* 埼玉★彩祭タウン
* 千葉なのはなタウン
* 仙台杜の都タウン
etc
★自分だけの家
プレイヤーは、その街に自分の家を持つことができた。
最初はマンションの一室から始まるのだが、自分で引っ越したい住所の土地を買い(区画は早い者勝ち)、一軒家を持つことができる。
(買い物は、ぱどタウン内の通貨(=パドル)を使う。パドルは何か行動した際に貰えたり、ミニゲームを遊ぶことで増やすことができた)
工務店で家の外装、造園店で庭を購入することもでき、
内装を凝りたければ家具や雑貨、家電なんかもそれぞれのショップで買うことができて、自由に部屋のレイアウトを変更できた。
さながら2D版のどうぶつの森状態だった。
また、キャラクターも変更することができた。レベルが上がるにつれて選べるキャラクターが増えていくので、遊び続けることそのものが、自分を表現する選択肢を増やすことにもつながっていた。(自分はLv20くらいから選べる紙袋を被った空手家のキャラをずっと使っていた)
SNSが普及した今では、自分のページをカスタマイズしたり、アバターを着せ替えたりするサービスは珍しくないが、当時のインターネット黎明期にここまでの自由度は堪らなかった。
★カキコミという文化
「カキコミ」とは、その人の部屋に行って文章を書き残すこと。
文章だけでなく、カキコミした側の部屋のリンクも付与される為、カキコミを残された側は書いた人の部屋に訪問することができる。
当時のネットでは、誰かのページを訪れたら一言残していくことが、「遊びに来たよ」と伝える挨拶だった。
今でいう「いいね」などのリアクションに近いが、こちらは自分の言葉を一行残さなければならない。つまり、カキコミは当時のネットにおける“足跡”であり、小さな社交だった。
相手の部屋まで行って置き手紙を残し、その返事を自分の部屋で待つ。今では考えられない手間のかかるコミュニケーションだが、これがとにかく楽しかったのである。待った上で、相手から届く返事の嬉しさは一入であった。
友達がいない夜は新たな友達を求めて、
「初カキコです。ぱど友募集中。」を書きまわる。
これを何度書いたことか。
★ぱどタウンで会う友達
そして、街には当然、自分以外の人も住んでいる。
ここが、ぱどタウンの一番面白かったところだと思う。
自分の場合、リアルでも会える友達と、あえてネットで話すことが多かった。
学校では普段しないような話を、顔が見えないネットではできたりする。
一方で、クラスが違って普段あまり話さないヤツとも、ネットなら交流できた。
そして、現実では絶対に会えないような、全く知らない同世代の人たちとも話すことができた。
「会えるけど、ネットで会う友達」と「会えないから、ネットで会う友達」
ぱどタウンには、その両方がいた。
今となっては当たり前のように感じるが、当時は「インターネット上で誰かとコミュニケーションを取る」ということ自体が、とにかく刺激的で楽しかった。
ぱどタウンには、いろんなヤツがいた。
アニメキャラクターになりきっているヤツだったり、厨二病を拗らせている連中もいた。
当時は、ネットリテラシーなんてものも無かった。
リアルの友達とぱどタウンで話していて、うっかりネット上の名前ではなく本名で呼んでしまうこともしょっちゅうだった。
今考えると、なかなか危なっかしい。
でも、そんな古き良き時代だった。
★ただ、懐かしい
そうやって僕たちは、ネットの中でもう一つの生活を送っていた。
今振り返ると、ぱどタウンは「ゲーム」という枠とも少し違っていた気がする。
そこには街があって、家があって、店があって、季節があって、友達がいて、そこで過ごす時間も生活の一部だった。
そして何より、そこには自分自身を表現する場所があった。
インターネットがまだ今ほど身近ではなかった頃。
外で泥んこになって遊ぶ日もあれば、ネット上で遊ぶ日もあった僕ら。
健康的だけどどこか不健康な2004年くらいの、あの頃。
僕の中の大切な青春の思い出として、今もなんとなく思い出すのだった。
