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美容師の頭皮ケアは簡単だった。

深夜のお風呂で、頭皮マッサージをした話。


営業が終わると、 だいたい夜の九時を過ぎている。

片付けをして、 鍵を閉めて、 今日が終わる。

美容師を十五年以上やっている。

慣れた、というより、 体がそういうリズムを覚えた。


帰り道、 コンビニに寄る。

缶ビールを一本買う。

これが今日の終わりの合図だ。


シャワーを浴びる前に、 少しだけ鏡を見る。

疲れた顔がある。

思ったよりは大丈夫、 と思うことにしている。

毎晩。


お風呂場は、静かだ。

一日中、 誰かと喋っていた。

音楽がかかっていた。

ドライヤーが鳴っていた。

シャンプー台の水の音がしていた。

それが全部消えて、 シャワーの音だけになる。

この時間が、 わりと好きだ。


頭を洗う時、 ukaのケンザンを使っている。

シリコン製のスカルプブラシで、 頭皮をほぐすやつ。

結構、長く使用している。

美容師なのに、 昔は若かったのもあり、
自分の頭皮ケアは後回しにしていた。

人の頭皮は毎日触るのに。


使い始めて、気づいたことがある。

頭皮が、硬い。

自分の頭皮が、 思ったより硬くなっていた。

指で押すと、 動かない部分がある。

固まっている、という感じ。

押した硬さもだが、前後左右にも動きが悪い。


お客様の頭皮を触る時、 硬いなと思うことがある。

デスクワークの人、 スマホを長時間見ている人、 ストレスが多い人。

そんな人は、生え際のあたりがとくに硬い。

体のメンテナンスをする時間がない人ばかり。

そう思いながら、 自分も同じだった。


ケンザンを頭皮に当てる。

ゆっくり動かす。

少し痛い部分がある。

そこを、少し丁寧に押し、
シャンプーの要領で前後左右を押し当て洗っていく。


頭皮と頭蓋骨の間に、 薄い筋膜がある。

そこが固まると、 血流が悪くなる。

顔のむくみにも、 疲労感にも、 関係してくる。

美容師として知っていたけれど、 自分のこととして考えたのは、
ケンザンを使いだしてからだった。


シャワーのお湯が、 頭皮に当たる。

ケンザンで少しほぐした後は、 それだけで気持ちいい。

血が通っている感じがする。

大げさじゃなく、 少しだけ、 頭が軽くなる。


地方から出てきて、 もう十五年以上が経った。

東京にずっといるつもりは、 なかった。

今もまだ、 ずっといるかどうかは分からない。

でも、 深夜のお風呂場の静けさとか、 シャワーの音だけが聞こえる時間とか、 そういう東京の夜の断片が、 嫌いじゃない。


ケンザンは、
花を生ける時の、剣山にかけているのだろう。

初めて聞いた時、物騒な名前でなんか笑った。

でも使うと、 かなりいい。

頭皮全体に、 均一に圧がかかる。

指だけでやるより、 ずっと楽だった。

硬さも選べるから、使いやすいと思う。


シャンプーをしながら、 今日のことを少し振り返る。

何人来たか。

うまくいったこと。

少し気になったこと。

美容師は、 技術だけじゃなく、 感情をかなり使う。

だから頭だけじゃなく、 どこか別のところも疲れている。

お風呂場で、 その疲れが少しずつ出てくる。

出てきていい時間だと思っている。


頭皮をほぐしながら、 少し深呼吸した。

お湯の温度が、 ちょうどよかった。


上がったら、 缶ビールの残りを飲んだ。

ぬるくなっていた。

それでも飲んだ。


明日も、朝から予約が入っている。

分かっている。

でも今夜は、 頭皮を少しほぐせた。

それだけで、 十分だった。


自分を後回しにするのが、 得意な人が多い。

美容師も、 その一人だったりする。

人の髪は丁寧に扱うのに、 自分の頭皮は固まったままだった。


ケンザン、一個あると変わる。

高くない。

お風呂場に置いておくだけでいい。

使う時間は、 五分もあれば十分だ。

毎日じゃなくていい。

疲れた夜に、 思い出した時だけでいい。


今夜くらい、 自分の頭皮を押してあげてもいいと思う。

誰かに言われなくても、 自分で気づいてあげる時間が、 たまには必要だ。


おやすみなさい。

今夜も、お疲れ様でした。


深夜のお風呂場って、
たまに「今日の疲れ」が全部集まってくる気がする。

美容師って、
立ち仕事だし、
気も遣うし、
思ってる以上に頭が疲れている。

でも、
体のメンテナンスをする時間がない人ばかり。

だから最近は、
シャンプーの時間だけでも、
少しちゃんと回復するようにしている。

ukaのケンザンを使うと、
「あ、自分かなり頭皮硬くなってたな」
って分かる。

最初ちょっと痛い。

でも、
だんだん気持ちよくなる。

不思議と、
頭の中まで少し静かになる。

サロンワーク終わりの夜に、
なんとなく続けてしまう理由は、
たぶんそこ。

ドライヤーが終わる頃には、
少しだけスッキリしている。

まあ今日くらい、
自分をメンテナンスしてもいい。

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