012 | だいじょうぶの夜、空には月がいてくれた 【夜ふかしアトリエ】
森にはこんな噂がある。
「ときどき、夜の空から妖精が降りてくるらしいよ」
それは、動けない夜を見つめる誰かのために──
行動じゃなく、“そのまま”を受け止めてくれる光。
焦り、ため息、心のフリーズ。
そんな夜に、森の空に浮かんでいたのは……静かで優しい“月のメッセージ”だった。
今夜の森は、世界が眠る様にとても静かだった。
風はなく、葉の揺れる音さえない。
だけど、森の空にはやわらかく満ちた月が浮かんでいた。
どこかの誰かがひとり、眠れずにいた。
やるべきことはわかっている。
気持ちはある。でも、行動がついてこない。
心は焦っているのに、足は動かない。
そんな夜は、とても、とても孤独だ。
でも……その部屋の窓にも、月の光は優しく届く。
それは何も言わず、何も求めず、ただそこにあった。
月の光が森に差し込むと、空気がふわりと揺れる。
そして、淡い光の粒たちが集まり、妖精が姿を現す。
夜空から、感情を受け取り、光に変える存在。
その夜、月の妖精は一人で踊っていた。
静かな空に、ふわり、ふわりと。
大きな動きはなく、ただ漂うようなリズムで。
まるで「それでだいじょうぶ」とでも言うように。
妖精のダンスを見上げた“その誰か”は、少しだけふぅ…と息を吐いた。
誰の声も、言葉も必要なかった。
ただ、月がある。
そこに月がいてくれる。
それだけで、なぜか少し泣けてきた。
月が白く淡く夜が明けていく…
夜が終わるということは、
新しい自分をまた迎えにいける、ということ。
何かが劇的に変わったわけではない。
だけど、ほんのすこし――
“自分を置いていかない”という選択を、心が受け入れはじめていた。
その日、“わかってるのに動けない自分”は、
ただひとつの月明かりに、
「だいじょうぶ」を教わった。
自然と心にスペースができた気がした。
©Chocodori / ©Yofukashi Atelier
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