014 | 森のポケットと、迷子のメモ葉たち【夜ふかしアトリエ】
夜ふかしアトリエの森には、風に乗ってやってくる「迷子のメモ葉」がある。
それは、誰かが書いたはずの言葉。
アイディア、ひらめき、気持ちの断片――
紙に書かれたもの、スマホに打たれた文章、
言いかけて忘れられたセリフたち。
でも、どこに置いたかわからなくなって、
風にさらわれ、ふわふわと森のあちこちを漂っている。
ずきんちゃんは、
その“メモ葉”を拾うのが好きだった。
「これ……誰のだろう?」
拾った葉っぱには、時々こんなことが書かれている。
「なんでもない風の匂いが、なぜか涙を誘った」
「完璧じゃなくても出せばよかったのに、
って後悔してる」
「はじめの一歩が、いつもいちばん遠い」
……まるで、自分の心の中を見られたみたいだった。
少し笑って、つぶやく。
「まあ、だいたいは
ちょこどりっのなんだけどね、こういうの。」
そんなある日、モリーノキがずきんちゃんに
小さな巾着袋を差し出した。
「これは“森のポケット”です。
見つけたメモ葉を、整えず、名付けず、
そのまま入れておいていい場所です。」
「ぐちゃぐちゃのままで?」
「ええ。この中では、メモたちがお互いに語り合って、
時が来たとき、ひとつの物語になって戻ってくるんですよ。」
ずきんちゃんは、その袋に
いくつかのメモを入れてみた。
何日か経ってから、袋の中を覗くと、
1枚の紙が見つかった。
そこにはこう書かれていた。
「バラバラだった私が、
それでも大事にしたかったこと。
それを集めたら、今の私になっていた。」
それは、“ぐちゃぐちゃの紙”のままでも、
いつか再会できるという、森の優しい魔法だった。
©Chocodori / ©Yofukashi Atelier
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