008 | 森のティーブレンド、値段では測れない灯り【夜ふかしアトリエ】
森のアトリエカフェで、静かに淹れられるモリーノキのブレンドティー。季節や心の機微に合わせてそっと差し出されるその一杯には、たくさんの想いが詰まっています。
ある日、常連客に「この紅茶、売ってほしいな」と声をかけられたことから、モリーノキは初めて『価値に値段をつける』という問いに向き合うことになります。
これは、モリーノキが『値段では測れない灯り』に名前をつけるまでの、静かな一夜の物語。
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「いらっしゃい、ゆっくりしていってくださいね。」
アトリエのカフェで、いつものように訪問者を迎えていたモリーノキ。
でも、今日は少しそわそわしていた。
実は今夜、森の夜市に「ひそかに作っていたオリジナルブレンドティー」を出す予定だから。
けれど――
「いやぁ、これはただの趣味ですから」
「そんなに価値があるものじゃ……」
「とてもお代をいただくようなものでは……」
誰に頼まれたわけでもないのに、何度も言い訳のセリフをつぶやいていた。
結局モリーノキは、紅茶3袋をセットにして、
とてもとても控えめな価格で出品した。
「気軽に手に取ってもらえたら……」という想いも、
「高いと思われたら恥ずかしい」という気持ちも、混ざっていた。
夜市が始まると、モリーノキのブレンドティーはすぐに売れた。
「お買い得だ!」「この値段でいいの?」と、嬉しそうな声が並ぶ。
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「モリーノキ、今回の市、うまくいった?」
「ええ……ありがたいことに、完売でした。」
「でもその顔、“でも、なんか違う”って言ってるよ?」
モリーノキは、はっとした。
「……実は、ちょっとだけ、そう思っていました。
みなさんに喜ばれたのはとても嬉しいのですが……
どこかで、自分のことを“ごまかしてしまった”気がして。」
サカサビトは、木の枝をくるくる回しながら言った。
「モリーノキって、いつも人には“あなたの価値を信じなさい”って言ってるよね?
じゃあ、自分の価値も、ちょっとくらい信じてあげてもいいんじゃない?」
ミラも、どこからともなく現れて鏡を見せる。
「それは、“自己主張”じゃなくて、“自己信頼”だよ。
それに、本当の価格って、“出す勇気”と“引き受ける覚悟”でできてるの。」
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次の日。
アトリエのカフェのカウンターには、
小さな木の札が増えていた。
「このお茶は、森の灯りが生まれる時間に摘んだもの。
私が心をこめてブレンドしました。
その価値を信じて、今夜はこの値段でお届けします。」
モリーノキの表情は、昨日より少しだけ、凛としていた。
それは、
「謙虚という仮面の裏にいた、自信のなさ」を
静かに脱ぎ捨てた一夜の物語だった。
©Chocodori / ©Yofukashi Atelier
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