見出し画像

境の人・水彩版/Vol.10『IZM・Report/file.04』

 境の人(BADARAGI~The Border Report~)水彩版

 Vol.10『IZM・Report/file.04』
 ――2025年11月08日14時30分/東京都三鷹市・崖(はけ)――

 届いた朝刊に目を通していると、岩手県の山奥の地名に引き寄せられました。
〝タイマグラ〟
 八幡平から百五十キロメートルも離れたこの行き止まりの地になぜ、消えた死体が現れたのか。タイマグラという地名について、いくつかの文献や資料をひもとくと、この地名は、アイヌ語の〝タイ・マ・グラ〟に由来するという説が有力です。
 タイは森、マは焼く、グラは場所、あるいは〝タイ・マ・クル〟で〝森の奥の行き止まりの場所〟という意味があるといいます。ですが、アイヌが東北のこの地方にいたという証拠は、ありません。しかし、もしもアイヌ語であるなら、タイマグラは、文明から隔絶された〝境〟であったのではないかと、推論できるのです。
 ですが、ぼくの直感は、もう一つの可能性を指し示します。
(大麻の蔵ではなかったのか?)
 タイマグラという音韻は、大麻を強く連想させます。
 この〝大麻〟は奈良の〝当麻寺〟などに見られるように、古くは〝当麻〟とも表記されていました。大麻は、現在でこそ規制されていますが、かつては日本全国で衣料や生活用品として使われ、至る所に繁茂していたはずです。
 そして、その葉や種は、神道における巫女の祈祷や、古代の呪術に用いられた歴史があります。つまり、タイマグラとは、かつて大麻を栽培し、儀式のために大麻を貯蔵していた蔵、あるいはその場所が語源だったのではないかとも考えられるのです。
 どちらの説にせよ、タイマグラは「俗世間から切り離された、特別な場所」という意味合いを持っているとおもわれるのです。
 ただ、なぜ、このタイマグラに、死体が運ばれたのか。
 八幡平とタイマグラは百五十キロメートルも離れています。人為的な移動は不可能です。しかし、タイマグラが八幡平と並ぶ、時空のねじれが生じる〝境〟であると解釈すれば、可能となります。
 掲示板の〝奇妙な名無し〟が綴っていた〝道は揺れる〟という言葉。あるいは、KAIさんの動画で体験された、時空のズレ。八幡平とタイマグラは、現実の地図上では遠く離れていますが、異界の通路、つまりワームホールのようなもので繋がっているのかもしれません。
 八幡平で異界の隧道に入った死体は、タイマグラの扉から出たと考えるのは無理があるでしょうか?もしかしたら〝境の人〟は、このワームホールを自在に行き来できる存在なのではないでしょうか?
 もはや、現地に入るしかありません。
 現地へ、境の地へ、旅立つ時なのです。

     ◇◇◇

 油彩版は、こちらにあります。
 境の人・BADARAGI/油彩版(薫)|点心会

いいなと思ったら応援しよう!