見出し画像

City Voices #1(街の声 1)

Story

「やっぱり地上がいいですね」

そう言ったのは、三十ある飛行船発着塔の第二港管制主任だった。

彼も以前は操縦士として長く地上を離れていた。

今は飛行船の離着陸を管理し、人と貨物の流れを監視する日々だ。

「少なくとも落ちる心配はない」

そう言って、彼は口元を歪めた。

「巨人の造った飛行船が落ちるものですか?」

私がそう返すと、彼は窓の下に広がる街へ目を向けた。

眼下には運河が走り、その上を無数の船が行き交う。

「でも、落ちたら死にますよね」

そう言って肩をすくめる。

「技術的には信頼してますがね。怖いものは怖いんです」

それには反論できなかった。

「なぜ飛行船乗りに?」

「…まあ、選べた時代じゃなかったからな」

私はそれが愚問だったと気付く。

当時の我々には、仕事を選べるほどの余裕など残されていなかった。

今、空は巨人たちの領域だ。

この街からも、巨人の神殿へ向かう定期便が運航されている。


Lore(設定)

飛行船発着塔。

都市間輸送の要所。

貨物輸送が主用途であるが、旅客便も定期的に運航されている。

近年は運賃の低下と航路の増加により、一般市民の利用率も上昇傾向にある。


都市の現状

街には建物が溢れているが、内部が崩壊していたり、倒壊の危険性があるものも多い。

そのため実際に利用されている建物は全体の三割程度とされる。

Notes from a Reporter (記者雑記)


タイタンジャーナルの記者として、巨人と人間をつなぐ役割を担って十年になる。

今も各地の街を訪れ、働く人々に話を聞き、その変化を記録している。もちろん、巨人たちへ提出する報告書のためだ。

当初は反発もあった。
だが、人々は働き、子供たちは学び、運河には再び船が行き交っている。
少しずつでも復興していく街を記録し続けるうちに、その反発も徐々に薄れていった。

最近のお気に入りは、この発着塔のラウンジだ。
今も、この街を見渡しながら、一杯の紅茶を時間をかけて飲んでいる。
        — Magnus Rein, Special Correspondent, The Titan Journal


English Summary

A former airship pilot explains why he still prefers life on the ground.

Meanwhile, a journalist reflects on how years of documenting recovery have gradually changed his own views.


文明維持管理委員会 公式Instagram

https://www.instagram.com/equilibrium.committee/

イラストとともに観測記録を公開しています。


いいなと思ったら応援しよう!