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夜中に起きる人は“不眠”なのか

真夜中にトイレへ起きたあと、
職員の様子をそっと確認してから
フロアへ来る利用者さまがいる。

声をかけると
長い会話が始まることもあるが、

知らん顔をしていると、
自分の席に座ってうたた寝をし、
30分ほどで部屋へ戻る。

かと思えば、
フロアに来ない夜もある。

この行動を見て
「不眠」と判断するのは簡単だ。

でも、よく観察すると
少し違う景色が見えてくる。

夜中に目覚めた直後の脳は、
まだ完全に立ち上がっていない。

判断力は弱く、
不安は出やすく、
習慣に頼りやすい状態だ。

だから人は無意識に
「ここは安全か?」を確認する。

トイレのあと
職員の様子を見るのは、
その安全確認に近い。

私が反応しないと、
脳は刺激を受けず、
覚醒のスイッチが入らない。

副交感神経のままだから、
眠気が戻る。

椅子でうたた寝をして、
自然に部屋へ帰る。

これは“眠らせた”のではなく、
“邪魔しなかった”結果だ。

一方、会話が始まると
脳は一気に活動モードへ入る。

声のやり取りは刺激であり、
社交であり、報酬でもある。

夜中の会話は、脳にとっては
朝のスタート合図と同じだ。

だから戻れなくなる。

この利用者さまは、
人によって行動を変えている。

つまり学習している。

「この人は話す」
「この人は静かにしてくれる」と、
関係性の地図を
脳の中に持っている。

言葉が曖昧でも、
人の違いは覚えている。

もし本当に不眠なら、
毎晩必ず起きてくるはずだ。

でもそうではない。

これは睡眠障害ではなく、
“安心確認”の行動だと思う。

夜間ケアで大事なのは、
何かをすることより、
何をしないかを
選ぶことかもしれない。

起こさない。
刺激しない。
安心だけを確認させる。

夜は夜の脳の時間が流れている。

そこに昼の会話を持ち込まない。

それだけで、穏やかな朝につながる。

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