見出し画像

新人教育がうまくいかないとき、教える側が見直したい10のこと

ある仕事を、新人へ一通り説明したとします。

手順を見せて、注意点も伝えて、最後に「分からないところはありますか」と確認する。相手は少し考えてから、「大丈夫です。分かりました」と答えます。

ところが、翌日になると手が止まっている。昨日説明したはずのところで迷い、こちらが声をかけるまで質問も出てきません。

教える側には、どうしても引っかかるものが残ります。

「あれだけ説明したのに、なぜできないのだろう」

「分からないなら、早く聞いてくれればいいのに」

「もしかすると、本人に覚える気がないのだろうか」

忙しい中で時間をつくり、同じことを何度か説明していれば、そう思いたくなるのも無理はありません。教える側だけが悪いわけでも、新人だけが悪いわけでもない。それでも、教育がうまく進まない状態が続くと、いつの間にか両方が疲れていきます。

新人は「また聞いたら迷惑かもしれない」と黙り、教える側は「何も聞いてこないから理解したのだろう」と考える。その小さなすれ違いが積み重なると、教育の問題だったはずのものが、意欲や相性の問題に見えてくることがあります。

けれど、ここで一度立ち止まってみると、「教えたのにできない」という言葉の中には、いくつもの違う状態が混ざっています。

知識が足りないのか。作業の順番が分からないのか。どこまで自分で決めてよいか判断できないのか。失敗したときの影響が怖いのか。それとも、質問するタイミングが見つからないのか。

表面に見えるのは、どれも「手が止まっている」という同じ姿です。

だからこそ、教育がうまくいかないときほど、教える量を増やす前に、何が止めているのかを分けて見たほうがよいのだと思います。

いつも記事を読んでくれてありがとうございます。
Haloです。

制作したツールやデジタルコンテンツを紹介・販売するために、オンラインショップも開設しました。

仕事や暮らしの中にある小さな手間を、少しだけ軽くする。
そんな道具を、ひとつずつ形にして並べていけたらと思っています。

今後は、noteで考え方や制作過程を発信しながら、ショップでは実際に使えるツールやテンプレートなども少しずつ公開していく予定です。

もしご興味がありましたら、ご覧いただけるとうれしいです。

また、私のことをもう少し知っていただくための記事も公開しています。

どんな思いでnoteを書いているのか、どんなことを大切にしているのかを少しだけまとめていますので、興味を持っていただけましたら、そちらもあわせてご覧ください。

このnoteでは、個人開発や仕事のことだけでなく、日々の体験談や気づき、役に立ちそうな情報なども発信していきます。

気軽に読んでいただけたらうれしいです。

今回考えたいのは、新人教育の技術そのものよりも、教える側から見えている景色と、教わる側から見えている景色の違いです。

説明の仕方を上手にすることは、もちろん役に立ちます。ただ、言葉を分かりやすくしただけでは解けないつまずきもあります。そこには、仕事の全体像、判断の境界、質問できる関係、任せる順番、確認するタイミングといった、説明の外側にある条件が関わっているからです。

教育のつまずきは、説明不足だけでは起きない

教える側は、すでに仕事の地図を持っています。

どこから始めるか。何を先に確認するか。普段と違う状態になったら、どこで止めるか。多少の例外が起きても、過去の経験から「この程度なら進めてよい」「ここから先は確認したほうがよい」と判断できます。

その状態で手順を説明すると、自分の中ではつながっているものを、相手にも順番どおり渡したつもりになります。

一方、新人が受け取るのは、まだ地図になっていない情報です。

画面の開き方は分かった。入力する場所も分かった。けれど、なぜこの項目を先に見るのかは分からない。説明と少し違う表示が出たとき、それがよくある差なのか、作業を止めるべき異常なのかも判断できない。

教える側には「小さな違い」に見えるものが、新人には「説明にない状態」です。

この差があるまま「昨日教えたから、今日は一人でできるはず」と考えると、教育は噛み合いにくくなります。手順を覚えることと、状況に合わせて使えることの間には、想像より少し広い距離があるからです。

しかも、この距離は、教える側からは見えにくいものです。

説明している最中、新人はうなずき、メモを取り、こちらの操作を追っています。質問にも答えられる。教える側から見れば、理解は順調に進んでいるように見えます。

ところが、その場には、見えない補助がたくさんあります。

先輩が開く資料を選んでいる。普段と違う表示を自然に読み飛ばしている。話す順番そのものが、次に見る場所を示している。新人が少し迷うと、先輩の視線や指先が正しい場所へ向いている。

本人は説明を聞いているだけではなく、そうした補助にも支えられています。

一人になったときに困るのは、説明が消えるからだけではありません。選ぶ人、違いを見分ける人、次を示す人も同時にいなくなるからです。

教える側が丁寧な人ほど、この補助を多く出していることがあります。

相手が困らないよう先回りし、分かりにくいところはすぐ言い換え、つまずく前に正しい画面へ導く。その場の理解は進みますが、どこまでが本人の判断で、どこまでが先輩の補助だったかは分かりにくくなります。

だから、教育がうまくいかないとき、丁寧さが足りなかったとは限りません。

丁寧に支えていたものを、いつ、どの幅で本人へ渡すかが見えないままだった可能性もあります。

もう一つ、教える側と新人では、失敗の見え方も違います。

教える側は、間違えても修正できる範囲を経験から知っています。「まずやってみて、違ったら直せばよい」と考えられます。

新人には、その間違いがどこまで影響するか分かりません。

入力を一つ間違えたら誰かへ通知されるのか。保存した瞬間に確定するのか。あとから直せるのか。先輩の仕事を増やすのか。分からないから、安全のために動かないという選択をすることがあります。

この慎重さは、消極性に見えます。

けれど、影響の範囲を知らない人にとっては、むしろ仕事を壊さないための行動です。

「ここまでは間違えても戻せる」「このボタンを押す前だけ呼んで」と伝えると、初めて試せる範囲ができます。

教育のつまずきを見るときには、本人が何を知らないかだけでなく、何を怖がる必要がないかが渡っているかも確かめたいところです。


教育がうまくいっているかを、教えた項目の数だけで測ると、教える側は「ここまで説明した」と考え、新人は「ここまで覚えなければならない」と受け取ります。

しかし、現場で本当に必要なのは、説明した量と覚えた量を一致させることだけではありません。

新人が、今の状況を見て次の一歩を選べること。分からないときに、どこが分からないかを言葉にできること。自分だけで決めてはいけない場面を見分け、必要な相手へ相談できること。

この状態へ少しずつ近づいているなら、まだ作業が遅くても、教育は進んでいます。

反対に、手順を暗記して作業が速く見えても、少し条件が変わっただけで黙って止まるなら、教える側と教わる側の間に、まだ渡せていないものがあります。

新人教育を見直すときの中心に置きたいのは、教え方の上手さを採点することではありません。

「相手が次の行動を判断するために、何が足りていないのか」を一緒に探すことです。

この見方に変えると、うまくいかない理由を新人の能力や意欲だけに集めずに済みます。同時に、教える側が自分を責めすぎる必要もなくなります。教育は、一人の説明力だけで完成するものではなく、仕事の渡し方、任せる範囲、周囲の協力、確認できる時間など、いくつもの条件の上に成り立っているからです。

そして、この条件は一度整えれば終わるものでもありません。

同じ新人でも、初めての仕事と三回目の仕事では必要な支えが違います。通常の一件は進められても、例外が混ざればまた止まります。昨日は余裕を持って質問できても、今日は教える人が会議続きで、声をかける場所が見つからないかもしれません。

教育を「教えた・教えていない」の二つで見ると、この揺れは本人の不安定さに見えます。

けれど、仕事の条件と支えの組み合わせとして見れば、次に変えられるものが見えてきます。

十の視点は、そのための採点表ではありません。

教える側の欠点を十個探すのでも、新人の弱点を十個見つけるのでもない。今のつまずきが、どの条件と関係しているかを眺めるための窓です。

ここから先では、教育が止まったときに教える側が見直したいことを、十の視点に分けて考えます。

扱うのは、「もっと優しく教える」「相手に合わせる」といった言葉だけではありません。なぜ「分かりました」のあとで手が止まるのか、質問しない新人には何が見えているのか、任せることと放っておくことはどこで分かれるのか。教える側、新人、周囲の職場、それぞれの事情を重ねながら整理します。

後半には、十の視点を毎回すべて点検するのではなく、今起きている一つのつまずきを短時間で見直すための四段階の方法と、別添のExcel実践テンプレートも用意しています。

この先の内容は、新人が必ず短期間で育つことや、教える人の負担がすぐになくなることを保証するものではありません。人員不足が深刻な職場、教育時間がまったく確保されていない職場、強い叱責や不適切な扱いがある環境では、教え方の工夫より先に、管理者や組織が扱うべき問題があります。

一方で、きちんと教えているつもりなのに噛み合わない、同じところで何度も止まる、何を直せばよいか分からないと感じている人には、自分たちの状況を見るための手がかりになるはずです。



ここから先は

24,179字 / 6画像 / 1ファイル

¥ 600

いつも読んでくださってありがとうございます。 いただいたチップは、これからの活動や新しいツールづくりに大切に使わせていただきます😊