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チャレがや 『おとしもの』

「おとしものですよ」
言われて振り返ったが、誰もいない。
足もとを見ると、白い封筒がひとつ、落ちている。
俺のじゃない、そう思いながらも、中身が気になって仕方がない。
俺は封筒を拾い、糊付けされた封を剥がして、中身を取り出してみた。

「あなたは、見られています」
白い便箋に一行、そう書かれていた。
……誰に?……何故?
意味も理由も分からない内容に、鳥肌が立つ。
あの角を曲がれば、浮気相手との待ち合わせ場所。
夢のような時間が待っている。
だが、待て。さっきの声。
「おとしものですよ」
……妻の声に似ていなかったか?

そんなはずはない。
妻は今、出産準備で入院中だ。
気のせいに決まってる。
まさかこんな場所に……だが、不安は拭えない。
スマホを取り出し、妻にLINE。

「調子はどう?予定日はまだ先だったよね?」
しばらくして、妻からの返答を受信。
「体調は良くないけどね。でもそんなこと言ってらんない。赤ちゃんに、お腹の中から見られてるから」
その言葉に少し違和感を覚える。
赤ちゃんには……外の世界はまだ見えないだろ。
「予定日はまだ先だよ。でもね、それは赤ちゃん次第。いつ、おとしものしてもおかしくないからね」
「……おとしもの?」
妻の言葉にオウム返す。
「言い方が悪いね。ゴメン、おくりものされても……かな?授かるものだもんね、赤ちゃんって」
……何か……気付いてる?
そんな……まさかね。
「あなたも、大切なものを見落とさないように気を付けてね。もう二度と手に入らないかもしれないから」
立て続けに妻からのメッセージ。
「予定日も忘れてるなんて……今どこにいるの?」

既読スルーのまま、踵を返した。
一赤ちゃんに、お腹の中から見られてるから一
そんなこと……あるのか?
でもそういえば、あの声。
妻の声に似ていたが、どこかこう、もっと幼い……。
そして、便箋の一行。
かろうじて読めるほどの、拙い文字だった。

帰ろう。
妻が入院している病院への乗り換えルートを調べながら、俺は最寄りの駅に急いだ。

こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。

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