せりふ三題噺 『その車は凶器、もしくは狂気』
■セリフ
「調べないほうがいいよ」
■三題
・合皮
・シーグラス
・将棋
友達が車を買った。
中古車らしい。
一緒に海に行こうぜ!と言うので、付き合ってやることにした。
「へぇー、カッコいいじゃん。中古の割には綺麗だな。シートも本革じゃなくて合皮だと思うけど、全然安っぽくないし」
「だろ?俺もイイ買い物したと思ってるよ。これから初ドライブでさ、海行ってシーグラス探そうぜ。車内のインテリアにもしたいしさ」
「そりゃ安上がりだな。でもまあ確かに綺麗だし、ドライブと言えばやっぱ海かな」
「んじゃ、安全運転で行くぞ。ナビ、頼むぜ」
一命を取り留めた。
その車は突然ハンドルがきかなくなって、高速のカーブで側壁に衝突した。
友達曰く、ハンドルが固定されたように動かなくなって、まるで将棋の駒である香車のように、真っ直ぐに突き進むしか出来なくなったとのこと。
慌ててブレーキを踏んだが間に合わなかったらしい。
車は大破し、俺も友達も救急で運ばれたが、骨折や切り傷のみで命に別状はなかった。
「災難だったな。でもお互いに、命が助かって良かったよ。ヤバイ事故だったもんな」
治療を終え回復し、友達の病室を訪ねて事故を振り返ってみる。
ベッドに横たわったままの彼は、神妙な顔つきで口を開いた。
「修理屋から連絡があってさ、あの車、ハンドルに何の問題も無かったって。他にも不具合は見つかってないってよ」
「そーなんだ。そりゃ不可解だな」
「中古車だからさ、過去に何かあったのかもしれないよな。退院したら、調べてみようかと思ってる」
「……いや、調べないほうがいいよ。きっとさ、何か、触れない方がいいことが隠されてるんだと思う」
「なんで……そう思うんだ?」
「いや、だって……」
俺は言うべきかどうか迷っていた。
あの時、後部座席から手を伸ばして、友達に覆いかぶさるようにハンドル操作を邪魔する女の姿を見た。
顔だけはこっちを向いていて、その姿に気付いた俺に、
「助手席に座るのはあんたじゃない!」
そう叫んだんだ。
つまり、友達は引きずり込まれそうになって、俺は巻き込まれただけ。
俺は今後、蚊帳の外になるかもしれないが、友達はきっとまだ解放されてはいない。
その証拠に、ベッドに横になる彼の隣には、ずっと見知らぬ女が添い寝している。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
