シロクマ文芸部 『熱帯夜』
眠れない。
眠たいや、ならぬ、熱帯夜。
明日も仕事だってのに、寝付けないまま時間だけが過ぎる。
「あっちーな。これ、エアコン動いてる?」
暗闇の中で、エアコンの動作音だけが聞こえている。
仕事をサボってはいないようだ。
「てことは、エアコンですら仲裁できない強敵な熱帯夜ってことか。そりゃ寝れないや」
少し諦めを感じつつ、上半身を起こす。
どこか遠くで、犬の遠吠え。
暗闇に灯る、スマホの明かり。
眠りから遠ざかること、まっしぐらだ。
だけど、仕方ない。
こんな時間でも、SNSへの投稿は続いている。
結構皆、起きてるんだな。
明日の学校や仕事、大丈夫なんだろうか……と、自分を棚に上げて、いらぬ心配をしてしまう。
いついかなる時でも、人は人へ伝えたいことがあって、それは自己表現であったり、承認欲求であったり、思いやりであったり、単なる情報開示だったり。
時間を問わず、暑さや寒さにも関係なく、途切れることなく言葉が発信される。
たとえ深夜であっても、目の前に誰もいない部屋の中でも、想いを伝えることが出来る事実に、少し安堵して。
こうなったら、何かエッセイでも書いてみようかな。
眠れない夜のひとときに、エモさに任せて綴った想いってやつ。
誰かの心に届いて、そこからもしかしたら、温かい交流なんかが始まるかもしれない。
こんな、寝苦しい熱帯夜をさらにホットにしてくれる出会いがあったりして。
そんな妄想を抱きながら、スマホに文字を打ち込み始める。
少ないボキャブラリーで、考える、感じる、悩み抜く。
次第に脳の疲れを感じ、指の動きが緩慢になって、ポトリとスマホを枕もとに落とした。
次の朝、スマホに綴られた、支離滅裂な文章を見て目が点になる。
ま、まあ、いいか。
熱帯夜について何か書けったって、そうそうエモい作品なんか出来るわけがない。
これが俺の等身大ってやつだ。
つまりは限界。
また今夜も熱帯夜は続くんだろうけど、この続きを書き始めれば、すぐにぐっすりと眠りにつけるのかもしれないな。
……本意ではないけど。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
