せりふ三題噺 『置き配があったけどコンビニに行ったら、雪うさぎが溢れ出した』
玄関前の置き配は、身に覚えがない。
つまり、何かを注文して荷物が届く予定はなく、誰かに何かを送ってもらう話もなかった。
ということは、私の依頼ではなく、誰かが勝手に何かを私に送り付けたということ?
箱には、伝票すら貼っていない。
ということは、宅配業者が置いていったのではなくて、誰かが直接やって来て、ここに置いていったということか。
謎は深まるばかり。
とりあえず、コンビニだ。
お弁当を買いに行こうとして家を出たのだった。
朝から何も食べてない。
箱は気になるが、まずは腹ごしらえ。
ガタッ。
箱が揺れた。
ちょっと横にズレたような気さえする。
えっ、生き物?
もしかして、捨て猫とか?
家の前に?
なんで?
コンビニに行く。
これは、現実逃避とも言う。
小さな面倒に巻き込まれたくなかった。
いや、小さいかどうかも分からないが。
お弁当を買って帰ったら、箱が消えて無くなっていたりしないだろうか。
そんな期待を込めて。
果たして、箱はあった。
しかも、3つに増えていた。
さらに、3つすべてがガタガタと揺れていた。
こんなんを開ける度胸はない。
警察に通報する。
「置き配の箱が暴れてる?それは、そーゆー玩具でも入ってるってことじゃないんですか?」
アホか。箱まで揺らす玩具ってどんなんだよ。
「公共の場所ならともかく、個人宅の玄関に置き配されたものはね……中を確認して、怪しいものでも入っていれば話は別ですが」
……仕方ない。開けるしかなさそうだ。
恐る恐る、箱の蓋に手をかける。
箱は揺れている、とゆーか、暴れている。
こんなん本当に開けていいのか?
どー考えても危険極まりないじゃないか。
玄関のドアに立てかけてあった傘を取り、それを使って箱の蓋をゆっくり押し上げる。
と、箱の縁から、ピョコンとウサギが顔を出した。
ウサギ?猫じゃなくて?
……捨てウサギ?
すると、ウサギは箱から飛び出し、床に着地して、外へと走り出す。
箱の中から、次々にウサギが飛び出してくる。
2つめの箱からも、3つめの箱からも、たくさんのウサギ達が飛び出して、家の前の道路を渡り、その向こうの空き地に集まってゆく。
昨日の夜からの雪で真っ白に染まった空き地に、たくさんのウサギ達。
雪うさぎの群れだ。
皆でこっちを振り返る。
「今日はここまでにしよう」
「そうだな。これ以上の深入りは危険かもしれない」
口々にそんなことを言っている。
……なんだ?何が起きている?
目の前を大型のトラックが通り過ぎて、その瞬間にウサギ達は消えていた。
はい、以上です。
これ以上話すことはありません。
いやだって、ウサギ達は消えちゃったし、残されたのは何の変哲もない3つの箱だけ。
それも、仕方ないので畳んで捨てた。
あとは……家のリビングでお弁当を食べて、警察に、おかしなことを言う奴としてブラックリスト登録されたりしないかな、なんて心配したり、ウサギってあんなに耳が長かったっけ、なんであれが雪うさぎだって分かったんだろ?と不思議に思ったり。
そもそも、雪うさぎって北海道にしかいないんじゃ?
やめておこう。
これ以上考えても答えなんて出ない。
オチなんて期待されても困る。
私は一人、リビングでお弁当を食べながらつぶやいた。
「今日はここまでにしよう。これ以上の深入りは危険かもしれない」
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
