チャレがや 『怨念』
友達のタイキの家を訪ねた。
丘の上の一軒家。
奥さんと二人暮らし。
玄関のドアの横に、段ボール箱が置いてあった。
見覚えのある配送業者のロゴが印字されている。
「これ、このままでいいの?」
置き配で届いたものだろう。
外に放置されたままになっている。
だが、タイキは、
「いや、それはそのままでいいんだ。呪われてるからな」
と、聞き捨てならないことを言った。
「……呪われてる?」
「ああ。きっと強い怨念が込められてるんだよ、この箱の中に。開けたら危険だよ」
何を言ってるんだ。どこまで本気なんだろう。
「あ、疑ってるだろ?嘘だと思うなら、開けてみろよ」
「……え?いいの?」
「いいけど、知らんぞ、どうなっても。強い怨念だからな」
「怨念って……誰のだよ」
「さあ?宅配されてきたんだから、誰のかは知らん。差出人も書いてないしな」
タイキの顔は、どこまでも真剣だ。
からかわれてる感じはしない。
……いやいや、そんなわけない。
なんで怨念が配達されてくんだよ。
しかも、差出人も分からないって……なんで分かんない相手に怨念持たれてんだよ。
理不尽すぎるだろ。
「そもそも、なんでこの箱の中身が怨念だって分かったんだ?開けてないんだろ?」
「開けたら、怨念食らっておしまいだからな。中身が何なのかはさ、伝票に書いてあるだろ」
「え……伝票に書いてあんの?」
「宅配便だからな」
「なんて書いてあるんだ?」
「えっ?そりゃあ、怨念って」
伝票を見る。
確かに、「怨念」と書いてある。
いやいやいや、怨念を送ろうって奴が、品名に「怨念」って書くか?フツー。
バラしてどうする、って話だ。
もはや、イタズラとしか思えない。
「よし、開けてみよう」
俺は意を決して、段ボール箱のフタに手をかけた。
ガムテープを剥がして、一気に箱を開ける。
……と。
カサカサって音がして、何かが箱から飛び出した……気がしたが、何もいない。
そして、箱の中は空っぽ。
「なんか……いたか?」
「いや……何かに撫でられた気がするけど、何もいない。気のせいだろう」
「ほら見ろ。ただのイタズラだよ。こんなもん、早いとこ片付けた方がいいぞ」
「そうだな、そうするよ。ただの空き箱だもんな」
それから……何だろう?
心に、暗い場所が生まれたような……そしてそれが、自分を侵食してゆくような感覚。
次第に溢れて、俺はその漏れ出る思いを段ボール箱に詰めてゆく。
箱いっぱいになったところで、伝票を貼り、品名に「怨念」と書き込んだ。
差出人は書かずに、宛先に嫌いな上司の名前を記入する。
次から次へと。
謂れのない怨念が溢れ出す。
きっとそれは、タイキも同じだろう。
もしかしたら、伝播した奥さんも。
今頃、あの丘の上の家から、たくさんの段ボール箱を発送していることだろう。
こちらの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。
