第2話「心の火傷(やけど)」〜「許せない!」と握りしめているのは誰?〜
こんにちは。
みつきかんなです。
「ほとけさまが先生」の2回目のお話ですよ。
第1話では「心をきれいに洗うと、幸せがついてくるよ」というお話をしました。
でも、そうは言っても、どうしても許せないこと、思い出すだけで腹が立って、心がチクチクすることって、ありますよね。
「なんで私だけ…」心の傷が治らない
「あの子に、ひどい悪口を言われた…」
「仲間はずれにされて、すごく悲しかった…」
「私だけ、ズルい!と責められた…」
学校や友達との間で起きた、悔しくて悲しい出来事。
夜、お布団に入った時や、一人でいる時にふと、その時の言葉や場面がよみがえってきて、また胸が苦しくなる…。
「あの時、こう言い返せばよかった!」
「あいつのせいで、全部めちゃくちゃだ!」
そんな風に、誰かを責める気持ちがぐるぐると頭の中を回り続けて、心が休まらない。
それは、大人でもよくある、とても苦しい状態です。
私自身、いろいろな立場で多くの方のお話を聞いてきましたが、この「過去の怒り」に心を縛られてしまっている人は、本当に少なくありません。
どうして、その怒りや恨みは、いつまでも消えてくれないのでしょうか? ほとけさま先生は、その「からくり」を、こう教えてくれています。
【ほとけさま先生のお言葉】
「彼(かれ)、我(われ)を罵(ののし)れり、 我を投げ打てり、 我を敗(やぶ)れり、 我より奪(うば)えり」と、 かかる執念(しゅうねん)を懐(いだ)く人には、 その忿怨(ふんえん)やむことなし。 (法句経 第3偈)
ほとけさま先生のやさしい解説
ちょっと難しい言葉が出てきましたね。
「忿怨(ふんえん)」というのは、怒りや、うらみのことです。
ほとけさまは、
「あいつは私をののしった!」
「あいつは私を叩いた!」
「あいつは私を打ち負かした!」
「あいつは私のものを奪った!」
…と、嫌だった出来事をずーっと心の中で抱きしめている(=執念を懐く)と、その怒りやうらみは、いつまでたっても消えないよ、と教えてくれているのです。
これは、なんだか当たり前のことのように聞こえますか?
でも、とても大切なポイントです。

「心の火傷(やけど)」
想像してみてください。 君が、誰かに熱い炭を投げつけられたとします。
すごく熱くて、痛かった。
でも、その出来事が「終わった後」も、君が「あいつが許せない!」と思うたびに、その熱い炭をもう一度自分で握りしめているとしたら…どうでしょう?
悪いのは、最初に炭を投げてきた相手かもしれません。
でも、今この瞬間に、その熱い炭を握りしめて、自分の心を火傷させているのは、他の誰でもない「自分自身」なのかもしれないのです。
ほとけさまは、「その熱い炭、まだ握りしめているの?
だからいつまでも苦しいんだよ」と、そっと教えてくれているんですね。
住職としての、もう一言
このほとけさまの教えは、現代の心理学で言う「反芻思考(はんすうしこう)」と深くつながっています。
「反芻」とは、牛やヤギが一度食べた草を何度も口に戻して噛み直すこと。
それと同じように、嫌な出来事を何度も何度も心の中で繰り返し思い出してしまう心の癖を「反芻思考」。
一般的には「ぐるぐる思考」と呼びます。
このぐるぐる思考こそが、怒りや不安、うつ状態を長引かせる大きな原因であることが、研究でわかっています。
起きてしまった過去の出来事(炭を投げられたこと)は変えられません。
しかし、その出来事を「思い出し続ける(炭を握りしめ続ける)」かどうかは、今の自分が選ぶことができます。
ほとけさまは、「苦しみの本当の原因は、相手のせいではなく、自分がそれに執着し続ける心にある」と、苦しみから抜け出すためのカギを、私たちに示してくれているのです。

今日の心のワーク:「熱い炭」をそっと置く練習
「わかったけど、それができないから苦しいんだ!」
そうですよね。
そう簡単には忘れられません。
だから、これは「忘れよう!」と頑張る練習ではなく、「あ、また握ってる」と“気づく”練習です。
【やってみよう!ミッション】
「あ、炭だ!」と気づく: また嫌なことを思い出して、「許せない!」と心が熱くなってきたら、心の中で「あ、私また熱い炭を握ってる」「心の火傷が始まってる」と、ただ気づいてみてください。
息を「ふーっ」と吐いてみる: 気づいたら、その熱い炭(怒り)を、そっと横に置くイメージで、口から「ふーーーーっ」と長く息を吐いてみましょう。
怒りを体の外に出すイメージです。「今」にジャンプする: 息を吐いたら、全然違うことをします。
冷たい水で顔を洗う、窓を開けて空を見る、好きな音楽を1曲だけ聴く、など。「過去」から「今」にジャンプして戻ってくるのです。
これを繰り返すうちに、「炭を握る時間」が少しずつ短くなっていきますよ。
【保護者の皆様へ】
お子様が「あの子が許せない!」と強い怒りを訴えてきた時、その苦しみは本物です。
まずは、
「そうか、そんなひどいこと言われたんだね」
「それは悔しいね、本当に悲しかったね」
と、その感情を100%受け止め、共感してあげてください。
怒りや悲しみを、安全な場所で思い切り吐き出させることが第一歩です(ガス抜き)。
心が少し落ち着いたのを見計らってから、「でもね…」と、この「熱い炭」の話をしてみてはいかがでしょうか。
「あの子を許すため」ではなく、「あなたが、あなた自身の心を、これ以上火傷させないため」に、その熱い炭を手放す練習をしてみない?と。
お子様が自分の心を守る術(すべ)を身につけられるよう、このほとけさま先生の教えがヒントになれば幸いです。
