創作SS:カケルと案山子
表紙画像はCopilotにて画像生成。
画像のプロンプトは「水彩画 夕焼けの案山子」
カケルと案山子
カケルは今日も、案山子のもとへやってきた。
彼はこの案山子を、特別な存在だと思っている。
この案山子はただの案山子じゃない。
風が吹くと、服の袖がゆらゆらと揺れ
まるで手を振っているようだ。
日が落ちてあたりが茜色に染まると
その顔はどこか寂しげに見える。
カケルが学校であったことを話すと
案山子は静かに耳を傾けてくれる。
授業で褒められたこと
友達とケンカしたこと
飼っている犬が元気なこと。
どんな話にも、案山子はただそこにいてくれる。
「ねぇ、案山子。君は寂しくないの?」
カケルがそう尋ねると、風がふわりと吹いて
麦わら帽子が少しだけ傾いた。
その仕草が、まるで「平気だよ」と答えているように感じた。
しかし、案山子が本当に何を考えているのか
カケルにはわからない。
話しかけても返事はないし、動くことだってない。
それでも、カケルは毎日この場所にやってきた。
ある日のこと
カケルは学校で友達と口論になり
ひどく落ち込んでいた。
足取りも重く
いつもより遅い時間に畑へと向かった。
案山子を見上げると
いつもと変わらない姿がそこにあった。
「ねぇ、案山子。僕、もうどうしていいかわからないんだ」
そう言って、カケルは案山子の足元に座り込んだ。
そのとき、ふと、カケルは案山子の足元にある土が
少しだけ湿っていることに気づいた。
そして、その土には、小さな足跡がいくつか残っていた。
それは、カケルの靴の跡とは違う
小さな小さな足跡だった。
「もしかして、君が…?」
カケルが顔を上げると、案山子のそばに
一羽の雀がちょこんと止まっていた。
雀は、カケルをじっと見つめている。
そして、チュン、と一鳴きすると
ひらひらと飛び去っていった。
その瞬間、カケルは理解した。
案山子が一人きりで寂しくなかったのは
いつも雀たちがそばにいてくれたからだ。
案山子がまるで手を振っているように見えたのは
雀が袖に止まっていたからかもしれない。
案山子は、彼らのためにそこに立っていたのだ。
カケルは、何も言わずに静かに立ち上がり
帰り道を歩き始めた。
足取りは、来た時よりもずっと軽かった。
きっと、案山子はこれからも
畑で雀たちを待っているだろう。
そして、カケルもまた、案山子に会いに行くだろう。
おしまい
山根あきらさんのお題でした。
最後まで記事を読んで頂き、ありがとうございました🙇♂️
