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優勝賞金 $500,000 に目がくらみ、世界最大の AI 映画コンテストに身の程知らずのおっさんが挑んだ話。#higgsfieldglobalfilmfestival

こんにちは、クロクマです。

今回、Higgsfield Global Film Festival に応募しました。

AI 動画サービスの Higgsfield が主催する、賞金総額 100 万ドルの映画祭です。1 位は 50 万ドル。世界中から応募が来る、たぶん今いちばんデカい AI 映画のコンテストです。

いきなり結論から言うと、

9 万円と、休みの日ぜんぶと、徹夜 1 回で、5 分の映画が 1 本できました。

賞はまだ分かりません。というか、途中から賞はどうでもよくなりました。

作ったのはこれです。父親が見られなかった、母と息子の週末の話。日本語ナレーション、英語字幕、5 分 21 秒。


最初にやったのは審査員の調査


映画を作る前に、Claude にやってもらったことがあります。審査員の調査です。

審査員は 4 人。『トイ・ストーリー』の製作総指揮でピクサーの共同創業者、『フォード vs フェラーリ』の撮影監督、『バイオハザード』の監督、『アイ,ロボット』の監督。この人たちが過去にどんな作品を評価してきたか、何を嫌うか。それと、過去の AI 映画コンテストで何が勝ってきたか。これを最初の日に全部調べてもらいました。

実は、最初は他の人と同じように「賞が取れそうなオリジナルの話」を考えるつもりでした。今回の話は候補のひとつとして、「まあ安易ですけど」と付け足す程度に出しただけです。

土日は仕事で、息子のサッカーの試合に行けない。妻が下の子を連れて電車で送っていく。ただそれだけの話。これは実際に私の家で起きてること。

調査の結果は意外でした。

過去の受賞作は「母・家族・喪失」のテーマが異常な頻度で勝っている。前回の優勝作のあと、運営はピクサーの人を審査員に据えた。つまり「次は物語で勝負する作品が欲しい」と言っている。そして、世界中の専業クリエイターが技術で殴ってくる中で、

あなたの家で今起きていることは、あなたにしか撮れない。

こんなことを言ってくれました。ホントかどうかは知りません 笑

出てきた候補は 3 つ。うちの話を「その場にいられなかった父親の視点」で作り直したものと、靴だけで家族 60 年を語る話と、W 杯の PK の 0.4 秒に母親の記憶が流れる話。

1 本目を読んで、泣けてきました。当事者なので。

それで決めました。安易だと思っていた話が、いちばん勝ち筋だった。その日の夜には脚本の 1 稿目ができていたという。


算段は、だいたい全部外れた


映画を作るのは初めてです。MV は何本か作ったことがありますけど、その程度。

最初の日、AI に向かって「野球素人集団がドジャースに挑むようなもの」と自分で言っていました。分かってはいたんです。分かってはいたんですが、50 万ドルが目の前でちらついていたので。ワンチャン、みたいな 笑

で、いろいろ考えてみたわけです。あんまりお金ないからなぁって。

まぁHiggsfield のクレジットは 2,000 もあれば足りるっしょ。Seedance(高い方のモデル)を使わなきゃいけるっしょ。ってな感じ。

相棒は Claude。普段から Fable 5.1 を使うことが多かったので、自然と全部 Fable でいくっしょ、と。上手い人は作業の内容ごとにモデルを使い分けるらしいんですけど、よく分からないので全部fableで。

締切は 9 月頭。

まぁことごとく私の読みは外れるわけですけどね。

ちなみに締切は、3 週目くらいに AI が公式ブログを読み直して「9 月 15 日の朝です」と言い出しました。11 日増えた。このときは素直に喜びました。でもこれで気持ちがダラけたのもあるかも。


現実:気づいたら 9 万円


やってみたら、割とすぐに気づきました。

これ、Seedance 使わないと勝てなくね?

この映画祭、制作途中の作品を公開できる仕組みがありまして。世界中のクリエイターが作りかけを晒している。私も 3 週目に 17 秒の作りかけを公開しました。公開した時点で、運営にも観客にも見られている。つまり審査はもう始まっているわけです(一応ここは審査には入ってないって言ってますけど)。

で、他の人の作品を片っ端から見て、fableに分析させました。尺、カット数、1 カットの平均秒数、音楽が入る位置。すると、質の高いものほど高い方のモデルを使っている。

当たり前なんですけどね。安い方で試行錯誤してクレジットを溶かすくらいなら、最初から高い方で一発で決めたほうが結果的に安い。そう自分に言い聞かせて、買うわ買うわで合計 約 6,000 クレジット。プランをウルトラに上げて、1,000 クレジットを 3 回買い足して、4 万円強。

そう、運営の思う壺なわけですよ。

¥40,000て・・

Claude の方も止まりませんでした。Max×5($110)で契約していたのに、週間制限に引っかかりまくる。締切は迫っている。仕方なく Max×20($220)に変更しました。この時点で震えてます 笑

平均年収の 4 人家族のおっさんが、最高プランって・・

合計すると、Higgsfield が 4 万強、Claude が $110+$220。

ざっくり 9 万円です。5 分の映画に。

何に溶けたのかというと、ほとんどが「作り直し」です。

たとえば 1 本 10 クレジットで作れるはずの 5 秒のカットに、気づいたら 160 使っていた。手の動きがちょっと違う、で 9 回作り直したからです。ちょっと手を抜いて参照を付けずに作ったら、主役の顔が別人になってやり直し。家の中の家具の位置を 1 か所直したら、その前後のカットも合わなくなって連鎖で作り直し。

こういうのが積み重なって、6,000 クレです。

なぜここまで強気でいけたのか。引っ込みがつかなくなっていたのと、50 万ドルが目の前でちらついていたのと、元々が生粋のギャンブラーなもので。


いくしかないっしょ。


55 カットの一枚絵ボード


時間:36日間、休みなし


私は平日休みの美容師です。土日は仕事。

締切まで 36 日ありました。後から AI との会話ログを数えてみたら、作業しなかった日はゼロでした。時間にして、ざっくり 160 時間。

休みの日は朝から 8〜11 時間ぶっ通しです。

仕事の日はこんな感じでした。朝、寝ている間に AI が作っておいた候補をスマホで見て、採用と却下だけ返す。営業中の隙間時間にも、スマホで指示だけ出しておく。「今は職場で操作できないので、そっちで動画化しておいて」みたいな感じです。帰ってから PC で結果を見て、ダメ出しをして、また作らせて寝る。

いつものルーティンがぶっ壊れました。おっさんになるとこれがなかなかにしんどい。

副業勢あるあるだと思うんですけど、本業の後の 1 時間と、休みの日の朝の 1 時間は、同じ 1 時間じゃないんですよね。夜は判断が鈍る。鈍った頭で出した指示で作らせて、翌朝見直すと直しが出る。それでまた作り直し。クレジットが溶けた理由の何割かは、たぶんこれです。

いちばんヤバかったのは、締切前の最後の休日。

朝の時点で、決まっている動画が 20 本。残り 22 本。1 か月かけて 20 本しか決まっていないのに、残りを 1 日でやると。結果、翌日の夜までに 20 本決まりました。できるんかい、って自分でも思いましたけど、たぶん最初の 1 か月は、やり方を探すのに使っていたんだと思います。

締切の日は 0 時から朝 7時まで。

最後のやり取りが「寝ても大丈夫かな?」でした。


Claudeと共闘した話

このプロジェクトは、Claude と二人三脚でした。

脚本の相談から、プロンプト、規約の読み込み、進捗の記録、編集ソフトに読み込むファイルの生成まで、全部こいつです。指示を出して、出てきたものを見て、ダメ出しをする。それだけ。

良かったことは、はっきりしています。

寝ている間に候補を作っておいてくれる。「実は本人の声も規約で使えない」(自分が話してAIで変換)みたいな落とし穴を、私より先に見つけてくれる。1 か月分の判断を全部覚えていてくれる。

一人だったら絶対に完成していません。これは断言できます。

AI との会話は長くなると記憶が溢れるので、数日おきに「ここまでの経緯と、次にやることを全部書き出して」と言って引き継ぎ書を作らせ、それを新しい会話に読ませて続きをやる。この引き継ぎ書が最終的に 16 本になりました。途中で「みんなこうやって運用してるのかな?」と AI に聞いたくらいです。答えは知りません 笑

ただ、日によって「お前アホなん?」が起こる。Fable でも。

昨日までできていたことが、今日できない。言ってないことを勝手に足す。決めたはずの家具の位置を、勝手に左右逆にする。ナレーションを 18 行ぜんぶ作り終えてから、「動画が 5 秒しかなくてナレが乗りません」と言い出す。

記録に残っている私の発言を並べると、「クレジット泥棒」が 2 回、「小学生かよ」、「マジで時間泥棒」、「ほんとにお前は Fable なの?」。

これで溶けたクレジットは、10 とか 20 じゃないです。何百単位でやらかした日が何回かあります。

ヤバいよね?って感じです。

同じことを言っている人はけっこういるみたいで、何なんでしょうね、あれ。まぁしょうがない。私の使い方や判断がまだまだだった所もあるんでしょう。でも、めっちゃキレましたけどね 笑


作ってみて初めて分かったこと


AI 映画でいちばんクレジットが溶けるのは、「絵が下手」じゃなくて「前のカットと合わない」でした。

人間が見張っていないと、AI は毎回新しい家を建てます。台所の壁が、カットごとに動く。ソファの向きが変わる。息子のリュックが赤から黒になる。1 本ずつ見れば全部きれいなのに、並べると別の家なんですよ。

私はここにいちばんこだわりました。AI 動画って、今までは雰囲気で見逃されていた部分だと思うんです。でも、映画として見せるなら、そこは流せない。

途中から、先に 55 カットぜんぶの一枚絵を並べて、全部確認してから動かすやり方に変えました。作り直しが半分以下になった。

最初からやれ、という話。

初めてだからこんなことも知らないんですよ。これが最善かどうかも知らない。

たぶん専業の人は、Blender みたいなツールで先に空間を設計してから作るんだと思います。映像作りに慣れている人は、すでにスキル化してあるものを使う。私は初めてなので、そのスキルを持っていない 笑

こういう判断が要るということ自体、作ってみないと分かりませんでした。

あと、声で 3 日溶かしました。日本語ナレーションの読み上げが、どのモデルでも「日本語の上手い外人」になる。イントネーションが全部おかしい。試しに自分の声を録って AI で変換したら最高だったんですが、規約で本人の声は禁止。最終的に、AI に台詞を「演じさせて」、その音だけ抜いて、架空の声に変換するという経路にたどり着きました。ここまで 3 日と 500 クレジットです。

声ってけっこう難しいのね。ってこれも初めて気づきました。


色の話も少しだけ。

最初の週に、参考にする映画を AI と一緒に洗い出しました。家族の話で、狭い家で、何も起こらないのに泣ける。そうなると出てくるのは、やっぱり是枝監督なんですよね。最初から、是枝監督の映画の色味に寄せる前提で作っていました。

ただ、色は 1 カットずつ触らず、最後に全部まとめて掛けると決めていました。動画のモデルによって色味が微妙に違うので、途中で合わせても意味がないからです。

で、提出前日の深夜。同じフレームに 4 種類の色を当てて並べてもらって、見比べて、是枝監督の映画の色味に寄せたものにしました。見比べ始めてから決めるまで 10 分ちょっと。1 か月前に決めていたことを、最後に確認しただけでした。

カラグレの前後比較


締切が 3 回伸びた

徹夜して朝 7時過ぎに提出したら、その直後に「締切を 24 時間延長します」。

おかげで、最後のタイトルカードだけ英題が違っていたのと、3.7 秒の無音を直せました。なので私は運が良かった側です。

でも、翌日また延長。

みんな締切に間に合わせるように動いてきたのに。

まぁ、クレジットを買う人が多くて売り上げがとんでもないんでしょうね

運営の権限なんでしょうがない。


賞なんて、どうでもよくなった

50 万ドルに目が眩んで参加しました。結果は 10 月末に出ます。

でも正直に言うと、賞なんてどうでもいい。副業でやっているクラスのおっさんが何かもらえるとはまったく思っていません。

それでも、どうしても完成させたかった。

途中でけっこう迷ったことがあります。審査員も観客も、ほとんどが英語圏の人です。だったら英語のナレーションで作ったほうが伝わるんじゃないか。日本語で作り終えて満足するのは私だけで、審査は私の満足度に比例しない。そう思って AI に相談したら、「でもグラント※付与されてるの日本語ナレもあるよ。別にいんじゃね?」みたいに言われたので、ああそうですかと。あんまり深くは気にしないことにしましたけど。

※グラント:運営が「これは」と思った制作途中の公開作に配る、制作用クレジットの補助のこと。申請は要らなくて、公開していれば勝手に候補になる。1 作品あたり最大 10 万クレジット。もちろん私はもらっていません 笑

この映画は、実際に私の家で起こっていることを描いています(職業は違いますが)。土日は仕事で、息子の試合にも遠征にも行けない。何もしてやれない自分の葛藤と、妻に任せっきりにしている贖罪。それが大きい。

でも、こういうお母さんはたくさんいると思うんです。

誰も見ていないところで、めっちゃ頑張っている。誰にも評価されなくても、子供のために毎日やっている。

無償の愛。

何か特別なことではない、日々のこういう誰にも見られていない瞬間こそがそう呼ばれるものなんだと思います。

そういう人がいるんだよ。忘れんじゃねーぞ。

それを見せたかった。映画の最後に、こう書きました。

誰にも見えないところで戦っている、すべてのお母さんへ 称賛を。

賞は取れないと思いますけど、9 万円の元は、たぶんこれで取れています。


ちなみに、最終的に応募された 6,000 以上の作品をけっこう見てみましたが、正直、足元にも及ばなそうです 笑

まぁ、分かってはいましたけど。

でも、本業がありながら毎日少しずつでもコツコツとやってきたものは全部出せたので、悔いはないかなぁという感じです。

最後の3〜4日は何度も心が折れそうになりましたけど(間に合わないと思って)、完成させられてよかったです。

その一方で、将来 AI で食っていこうと思っているなら、まだまだですね。も
っと勉強しようと思いました。


ここまで書いててふと思いましたが、6000越えの作品を人の目で判断するのは現実的ではない。どこかで足切りさせるとしたら冒頭数十秒とかかな?

こういうコンテストにおいてもやっぱり出だしの引きって重要なんでしょうね。

そこはちょっと反省点だなぁ〜
fable、そこ突っ込んでくれよ〜



ここまで読んでいただきありがとうございました。

今回のnoteはこれで以上になります。


ではまた、次回のnoteで。

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過去のnoteもよければご覧ください。


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