中国は石破政権の続投を望んでいる? ゲスト柯隆さん
NIKKEIで深読み 中国経済の真相
ポッドキャストで毎週木曜日あさ6時、ラジオNIKKEI第1で毎週木曜日22時30分から放送中の音声コンテンツ「NIKKEIで深読み 中国経済の真相」長年中国の変化を報じてきた高橋哲史 元・中国総局長が、中国経済の真相に迫ります。
今回は、東京財団 主席研究員の柯隆さんにお話を伺いました。
https://podcasts.apple.com/us/podcast/id1752041501
この記事は株式会社PKUTECHのAI音声認識ソリューション「Egeria-Voice」の音声文字起こし・要約機能を活用しています。
Topics from China
①米財務長官、米中の一部関税停止期限の延長示唆 28日から閣僚協議
高橋氏:
日米の関税協議が合意に至ったことについて、日本が求めていた自動車関税の引き下げなど、一定の成果があったと感じています。ただ、トランプ大統領が日本の投資や利益について強い発言をしていることもあり、本当に日本にとって良かったのかは今後検証が必要だと思います。米中の関税協議については、中国がレアアースという強力なカードを持っているため、日本と違って有利に交渉を進めている印象を持っています。
柯隆氏:
今回の日米関税合意は、参院選後に日本がどこまで譲歩するか事前に用意していたカードを切った結果で、私から見ると想定内の展開です。米(コメ)の関税問題は選挙前には動かしづらかったですが、選挙で大敗したことで一気に譲歩し、トランプ大統領に関税を下げてもらうという筋書き通りの結果だと考えます。ただ、これで日米の貿易不均衡がすぐに是正されるわけではなく、非関税障壁の問題も残っています。アメリカ車が日本で売れなければ、またトランプ大統領が不満を示す可能性もあるので、日本は次の政権で早急に戦略を立て直す必要があると思います。米中協議については、フェンタニル問題やレアアースの輸出管理が焦点で、中国はレアアースの許可制を強化しており、アメリカはこれを撤廃してほしいと考えていますが、習近平政権は譲らないでしょう。期限までに最終合意は難しく、部分的な合意や期限延長は十分あり得ると見ています。アメリカは中国以外でレアアースの調達先を探していますが、環境規制が厳しく新工場建設は難しいのが現状です。
②中国のスマホ出荷、ファーウェイ4年ぶり首位 4〜6月全体は4%減
高橋氏:
アメリカの制裁で一時はスマホ生産が困難になったファーウェイですが、独自技術の開発で高性能半導体を自前で作れるようになり、中国国内で出荷台数1位に返り咲きました。ただし中国全体のスマホ市場は先細りしており、特にAppleのiPhoneはかつての人気から大きく順位を落とし、今や5位です。4〜6月の出荷台数は4%減で、買い替え補助金の効果も薄れてきたと感じています。
柯隆氏:
ファーウェイのCEOがSNS投稿にiPhoneを使っていることや、シャオミの創業者もiPhoneを使っている事実は面白い現象だと思います。ファーウェイは7ナノの半導体チップを何とか作れるようになりましたが、良品率が低いのが課題です。また独自OSも開発しましたが、あまり人気がありません。補助金で売上は増えていますが、iPhoneが5位に落ちた理由の一つは、役所への持ち込み禁止や、SNSアカウント作成時の実名口座制導入でiPhone利用が分かりやすくなったことです。景気減速で高価なiPhoneは中間層以下には手が届かず、今後も中国のスマホ市場はさらに縮小する可能性が高いと見ています。
③中国、アステラス社員に自白促す「司法取引」 スパイ罪の量刑軽減
高橋氏:
アステラス社員の懲役3年6ヶ月という判決は、もし本当にスパイ罪を犯していたなら他の事例と比べて軽いと感じます。中国側が何を根拠にしたのか明らかにしていないため判断は難しいですが、司法取引があったのであれば、その分刑が軽くなったという推論は十分成り立つと思います。中国は二審制ですが、男性は上訴しない方針です。
柯隆氏:
中国語で言うと総合的に判断して3年6ヶ月の判決を出したと思います。スパイ罪は通常7〜10年が標準なので、今回の判決はかなり軽いです。おそらく今回の行為は真っ黒でも真っ白でもなくグレーゾーンで、裁判所が量刑を柔軟に決められる状況だったのでしょう。また、米中関係が悪化する中で中国にとって対日関係は重要で、これ以上日中関係を悪化させたくないという配慮もあったと思います。判決のタイミングも参院選直前で、石破政権への配慮もあったと見ています。ただ、日本側は中身が分からないため、3年6ヶ月が短いと言われても納得できず、国民感情の悪化は止められない。結局、日中関係は良くならないのが最大のポイントだと思います。

本編
④海外メディア、日本の「右傾化」警戒 対日外交の不安定さも指摘
高橋氏:
中国は石破政権を付き合いやすい相手と見ていたと思います。石破さんが田中角栄元首相の直系だと中国が宣伝していたのもその表れです。今回の参院選で石破さんが大敗し、退陣の可能性が高まっているのは中国にとって思惑外れでしょう。アメリカとの関係が悪化すると中国は日本に接近する傾向がありますが、今は米中関税協議で中国が有利に交渉しており、トランプ大統領の訪中も現実味を帯びてきています。そうなると日本の重要度が下がり、日中関係が悪化する可能性もあるのではないかと感じています。次の首相は石破さんより中国に厳しいスタンスになる可能性が高く、中国はそれを警戒しているでしょう。いずれにしても、石破さんの次の政権が誰になるかで、しばらく混迷が続く可能性があり、中国にとっても望ましい状況ではないと思います。
柯隆氏:
私は今、日中関係が歴史的な分水嶺に差し掛かっていると考えています。今回の選挙で日本の有権者は石破政権にノーを突きつけ、対中戦略の見直しが必要になったと思います。中国共産党は自分に都合の悪いことをはっきり言う外国の政治家を嫌い、石破さんのように配慮してくれる古いタイプの政治家を大事にしたいのが本音です。今後は若い世代が台頭し、対中配慮しない風潮が強まるでしょう。中国は日本の選挙へのSNS介入を控えたようで、これは良かったと思います。米中関係と日中関係は連動しており、米中関係がどうなるかが日中関係を左右します。トランプ大統領の訪中があっても、米中関係が一気に改善することはなく、アメリカ人の対中感情も悪化しています。日本は焦る必要はなく、国益を最大化するためにどう中国と付き合うかを次の政権がしっかり考えるべきです。今後は政治の振り子が右に振れ、保守的な方向に動くでしょうが、それが必ずしも混迷を意味するわけではなく、むしろ曖昧だったスタンスが明確になるチャンスだと思います。外交では相手のメンツを潰さず、日本の国益を最大化するのが鉄則です。石破さんのような古いタイプの政治家は時代に合わなくなってきており、今後は明確な戦略を打ち出す必要があると考えます。
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次回は2025年7月31日の配信です。お楽しみに!
