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【ショート】 夢の回収人

―― short story ――

何度目か分からない、ため息をつく。

……今日も終わらないそう。

無造作に山積みになっている『それ』は、
今の自分の気持ちを代弁しているかのようだった。
まずは、一つ取り上げ掃除機のスイッチを押す。

吸い取る。

音が消えると、
『それ』は静かに空気になって持ち主のところへ帰っていく。

次。

次。

次。

時々、静かな音ではなく、激しい音がするものもある。

でも、大体、綺麗に空気に戻る。

残りの業務時間。
僕は、順繰りと作業を繰り返し続けた。

……転職場所。間違えたかなぁ。


「お疲れさま」

同僚のリジーだ。

「お疲れ」

「本当に疲れた顔してるね。」

リジーが笑う。

「……疲れたよ。リジーは元気だね。」

「楽しいもの。」

「……どこが?」

「一年もやってるのに、まだ、分からないのね」

リジーは笑いながら、行ってしまった。


次の日は、意外なほど、仕事が溜まっていなかった。
なんでも、リジーが半分、請け負ってくれたそうだ。

……なんて良いやつなんだ。でも、大丈夫かな。

早く終わったら、手伝いに行こうと心に誓う。
僕は、掃除機にスイッチを入れる。

そして、最初の『それ』を吸い込んだ。
今日は、余裕があった。
そっと、掃除機の面カバーを開く。

虹が広がる。

雨は降っておらず、晴れ渡る空に架け橋のような七色が輝いている。
男の子と女の子が手を繋ぎ、虹の上を駆け走っている。
頂上まで行くと、スッと消えて空気になった。

……綺麗だったな。

また、次の『それ』を吸い取る。
今度は、随分、くぐもった音がする。

……怖いやつか?

そっと、カバーを外し中を見る。

中には、おぞましい爬虫類のような生物が、赤い二つの目をギラギラとさせている。

……うぇ。

カバーで隠そうとした時、ガタガタっと掃除機が揺れて、

フィルターが破れた。

「げ」

黒い『それ』は飛び出し、空気中から元の宿主に戻ろうとする。

――不味い!

僕は、雲を飛び出して追いかける。
光のようなスピードで地上へ降り立つ。

まだ、夜明け前だけど、本人が起きていたら……

冷や汗が滲む。

黒い『それ』が家の中へ入る。

僕も慌てて壁を通り抜ける。
女の子がカーテンを開けようとしていた。

結界を張り、防音の空間を作る。

違和感を感じた女の子が振り返る。

「……きゃあ―――――――」

女の子が頭を抱えてしゃがみ込む。

「くそっ」

女の子に気を取られた黒い『それ』を、掃除機の力を最大にして吸い込む。

——しぶといっ

力を込めると、急に引きが弱まる。
すぽっと吸引された。

……はぁ。焦った。

冷や汗を拭う。
僕はすぐに震える女の子の頭を、ポンと撫でた。

そっと、こちらを見上げる。

「……ごめんね」

困った顔で、伝える。

「……ゆめ?」

「そう、ゆめだよ」

そう言って、僕たちは消えた。


騒動のせいで、結局、いつもと同じ時間に終わった。
リジーに会いに行く。

「リジー、ごめん。」

「厄介なのいて、楽しかったでしょ」

「……おい」

「冗談だよ。でも、大切なこと、思い出したでしょ」

「……まぁ、ね。ここの所、量が異常に増えて麻痺してたかも。」

「最近の人たちは、ストレス増えて浅い眠りが増えたから、夢の量が莫大になっちゃったしね。回収も以前より大変だもん。」

僕は息を吐く。

「よく寝てもらうためにも、頑張らないとな」

僕の言葉に、リジーが笑った。


明日も、忙しくなりそうだ。



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