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【ショート】 月を運ぶ舟

―― short story ――

「みなさん~。作業を始めましょう」

夜空の星々が一斉にきらめく。
波立つように動き出し、もう、完成間近の舟に乗り込んだ。
一から作り始めて、もう多くの年月が経ち、ようやく完成が見えてきた。
舟に、綻びがないか確認するものたちと仕上げをするものたちに分かれ、
星々は作業を進める。

カン、コン。

響く音。
騒がしい話し声。
ペンキを走らせる音。

作業中の夜空は賑やかだった。

月は長く眠っている。
夜、太陽の光を受けて輝いている時も。
最近の月は、目覚めることなく眠り続けている。
心配になった星々は月をお医者さんに診てもらうことにした。

お医者の金星のおじちゃんは言った。
診断結果は「恋煩い」だった。
星々は驚いた。
眠り続け、幸せな夢を見ているのかもしれない。
体に害がないならいいか。
星々は悩んだ。

会議を開いた。

テーマは「月の恋の相手」

「やっぱり、いつも見ているから地球かな?」
「ん~、いや。太陽じゃない?光をくれるから」
「……じゃあ、連れて行ってあげようよ」
「目覚めるかもしれないね」

それから、大きな舟を作り始めた。

完成した。
星々は抱き合って、喜んだ。
昼間の空へ、月を乗せた舟が浮かび上がった。

「さぁ、出発だ!」

まずは、地球へ向かう。
空を大きな舟が進む。
地上の人たちへ、いつもより強い風が少しだけ届く。
地球の内側へ入り込むと挨拶をする。

「こんにちは、地球」

マグマが吹き出し空中で巨大な人型に変化する。

「……何のようだ」

地球は疲れて見えた。

「お忙しいところ、ごめんなさい。月が元気がなくて……」

「当てが外れたな。……ここではない。」

マグマが落ち、人型が崩れていく。
星々はがっかりする。
月は目覚めない。
下から地響きがすると、声が聞こえた。

「太陽を見せてやれ」

地球の声だった。
星々は舟を操り、地上へ戻り、太陽へと進む。
近づくに連れて思った。
そうだ、月は太陽と会えていないのだと。
月が顔を出す時に太陽は沈んでいる。

「太陽、こんにちは。月が元気がないんだ」

太陽は『おや』という顔をする。

「心配だね。でも、僕じゃないよ」

去り際に太陽が言った。

「金星が正しいとは限らないよ」

意気消沈して星々は夜空へ還る。
すると、月が目覚めた!

私たちは手を取り合って喜んだ。
月は嬉しそうに微笑むだけだった。

あの日から、舟は夜空に浮かんだまま。




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