【ショート】 積読美術館
螺旋階段をゆっくり登る。
文字を目で追いながら。
『三日間で嘘みたいに若返る美肌の秘密』
『定時で上がれるノート術』
『今日から始める株式投資』
『毎日ハッピー占星術』
気になるタイトルにキョロキョロしながら、上へ登っていく。
ふと、二段下に文字が見え、ぴたりと足を止める。
『落日―君のいた時間―』
読みたかった小説だ。
二段下がって屈み、三段目から『落日』を引き抜く。
すると、目の前の階段がぐしゃっと崩れてしまった。
「……あ」
これでは、もう上に上がれない。
仕方なく、崩れた本を積み直し、最後に『落日』を元の場所へ戻した。
雑誌が重なる壁に手をつき、帰りにまた手に取ろうと思い、階段を登った。
そして、ふと、気づく。
そうか、ここで本は読めないのね。
……帰ろう。
私はまた、本でできた階段を降りる。
『落日』を見つけると、三段目からもう一度引き抜いた。
ぐしゃっと階段が崩れる。
私はニッと笑うと、
今度は本を積み直さずに美術館のテーブル席で本を広げた。
(410文字)
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お題『積読美術館』
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