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【ショート】 翼のない渡り鳥

―― short story ――

「おじちゃんは、どうして行かないの?」

呼びかけると、赤銅色の羽毛がぶるりと波打ち、
鋭い黒目がこちらを見据えた。

開きかけたくちばしを、そのまま固く閉じて、顔を背けた。

「おじちゃん?」

僕は首を傾げて、まっすぐにおじちゃんを見つめる。

でも、その黒い目は、それきり僕を見なかった。


後ろの方から、鳥たちが羽ばたく音が聞こえる。

……僕も行かないといけない。

僕は、おじちゃんの赤銅色の羽毛に頬を擦り付けた。

ぬくもりに触れていると、

おじちゃんの体が、ぶるりと震えた。

……いやだったかな?

そっと見上げると、おじちゃんは少し笑っていた。

「……ほら、行け。」

押しやられると、もう、ほとんどの鳥が羽ばたいていた。

置いていかれると、迷子になってしまう。

「おじちゃん、また、会える?」

もう一度、体を押される。

「……生きてれば、ここにいるさ。」

ここは、とても、寒くなる。

「ゆっくりでいいから、僕と行こうよ」

小さなため息が耳に落ちた。

「……変なのに、懐かれたな。」

小さな声だった。

「もう、最後尾だ。行け。」

強い力だった。

僕は思わず、羽ばたく。

「いいか、電線には絶対に止まるなよ。……約束だ」

僕は、大きく頷いた。

「おじちゃん、また来るからね。」

小さな羽を大きく広げ、遠ざかる群れを追った。

すぐ近くに母さんを見つけ、隣へ並ぼうと羽ばたきを速める。


一度だけ振り返った。


おじちゃんは、ひょこ、ひょこと、木の方へ歩いていた。


羽は広げなかった。



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