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【ショート】 小さな灯り

―― short story ――

その少女は、人の心に明かりを灯すことができた。

元気がない時は、肩をそっと叩く。

不機嫌で怒っていた叔父さんは、頭を掻いて笑う。

近所の八百屋の叔母さんの手を握ると、顰めてあった眉が上がる。

元気のない疲れたお母さんをぎゅっと抱きしめると、ふわっと笑う。

抱きしめ返されると、少女の心にも灯った。

この街は、とても温かい場所だ。


ある日、少女に新しい父親ができた。

とても、優しい人だった。

少女は、少しずつ眠れるようになった。

数年後、母が病気で帰らぬ人となってしまった。

義父は、最後まで親身に看病していた。

最後まで手を離すことはなかった。

落ち込む義父の肩をそっと叩く。

義父は優しく微笑む。

でも、その笑顔はどこか歪んで見えた。


少女は母がしていた服飾の仕事をするようになった。

足りないところを義父が手伝ってくれる。

仕事の中で、隣町から仕入れに来ていた青年と出会った。

青年はすぐに少女に恋をした。

青年のまっすぐな明かりは、少女を照らす。

見たことのない明かりに、少女の小さな灯りは揺れ動いた。

初めての感情に、戸惑う。

義父がやってくると、自然と背に隠れた。

青年は、困ったように笑った。


それから、週に一度、青年がやってきた。

いつも手土産を持ってきて、面白いものを見せてくれた。

義父も必ずやってきた。

いつもは、店にまで出てこないのに。

少し、不思議に思った。


その日は、母の命日だった。

義父と手を繋いで、花を添えに行く。

二人で手を合わせ、しばらく、動かなかった。

帰り道、珍しく義父が少女に言った。

――大きくなったね。

少女は義父を仰ぎ見る。

ふと、灯りが揺らぐ。

足を一歩引く。

繋がれた手を反対の手でそっと叩く。


灯らない。


なのに、幸せそうに微笑んだ。



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