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【ショート】 モバイル北海道


焦っていた。

携帯のアプリを開く。

『呼び寄せ先-現在地』
『移動対象-北海道』
『金額-六十万』

迷わずタップした。

遠くに残雪を抱く山が現れた。
季節を無視して白樺の花が垂れ、その先にはラベンダー畑が広がっていた。

地図アプリを開くと、北海道の一部に空洞ができ、
東京の面積が増えている。

成功したと分かると、駆け出す。

お土産屋さんの牛の形をしたオブジェを通り過ぎる。

階段を上がる頃には、息が切れ、胸を押さえた。
石垣に手をつき、息を整える。
そのままゆっくり歩いて、病院の中に入った。

受付で面会を申し出ると、すぐに中へ案内された。

『集中治療室』

椅子に腰掛けることもできず、扉の前で待った。
数時間後、扉が開いた。

「……頑張りましたね」

先生の目が穏やかで、私は硬い床に膝をついた。

翌朝、弟は目を開けた。

「……ねぇちゃん」

「大丈夫?」

「うん。来るの大変だったんじゃ……」

「モバイル使った」

私はふっと笑う。

外に目を向けると、季節外れの雪が降った。


(410字)







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